千葉市若葉区にある千葉市動物公園内の「動物科学館」が、開館から40年を経て大規模な改装を終え、2025年3月29日にリニューアルオープンしました。今回の改装では、生物多様性の宝庫として知られる「熱帯雨林」をテーマに、五感で楽しみながら熱帯雨林の生態系や環境問題を学ぶことができる展示が盛り込まれています。これにより、来館者は自然の魅力を改めて感じるとともに、環境保護の重要性についても深く考えさせられることになるでしょう。
テーマは「熱帯雨林」— 五感で楽しむ展示
リニューアルされた動物科学館の新しいテーマは「熱帯雨林」。ボルネオ島をはじめとする熱帯林の自然環境を取材し、展示内容に反映させたとのことです。エントランスホールには、熱帯雨林を代表する高木「フタバガキ」がシンボルツリーとして登場し、来館者を迎え入れます。その高さは11.7メートルに達し、樹皮の質感や詳細な造形も精巧に再現されています。
館内では、熱帯雨林に生息する動植物を観察しながら、音や匂いも楽しむことができます。特に、現地で録音された鳥のさえずりや虫の声が流れることで、まるでその場にいるかのような没入感を味わえます。また、熱帯雨林特有のスコール(大雨)が毎日1回降るという演出もあり、来館者はその迫力を体感することができます。
新設されたエリアで学べる熱帯雨林の魅力
新たに設けられた「林床の世界」では、熱帯雨林の土壌がどのように分解されていくのかを、迫力ある天井投影を通じて学べます。まるで自分が土の中にいるような感覚に包まれ、自然の神秘を感じることができるこのエリアは、訪れる人々に強い印象を与えることでしょう。
また、幅9.4メートルに及ぶ壁面映像では、植物が動物を利用してどのように分布を広げていくのかを解説。さらに、「ラフレシア」という花の腐ったような匂いも体験できるようになっており、視覚だけでなく、嗅覚にも訴えかける展示が展開されています。
自然破壊の現実とその影響
展示内容の中には、熱帯雨林の生態系の美しさだけでなく、その背後にある環境問題への言及も含まれています。熱帯雨林は多くの生物が生息する貴重な場所である一方で、開発や違法伐採などにより自然破壊が進んでおり、その結果として多くの動物たちが住む場所を失っているという現実があるのです。このことについても、動物科学館では詳しく解説し、来館者が自然環境についての理解を深め、行動の変化を促すことを目指しています。
家族連れにも優しい新しい施設
リニューアルに合わせて、家族連れにも優しい設備が充実しました。2階には育児ルームや授乳室、キッズスペースが新設されており、小さな子どもを連れた家族でも快適に過ごせるよう配慮されています。また、カフェもリニューアルされ、環境に配慮したメニューを提供する「Utan Café(ウータンカフェ)」がオープン。ここでは、フェアトレードや地産地消の商品を楽しむことができます。
園長のメッセージ
千葉市動物公園の鏑木一誠園長は、「自然環境に対する気づきや学びを発信することが、動物園の使命である」と語り、環境破壊が進む中で、生物多様性の劣化を食い止めるために何ができるかを来館者に考えてもらいたいと話しています。また、この改装によって、多くの人々が自然とのつながりを再確認し、持続可能な未来に向けて行動を起こすきっかけになることを期待しています。