東京都議会の自民党議員らによる「裏金」問題が、またひとつ大きな展開を迎えた。神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)は10日、収支報告書に虚偽の記載をしたとして、現職都議ら10人を政治資金規正法違反の疑いで東京地検に告発した。
問題となっているのは、政治資金パーティーをめぐる“中抜き”による裏金づくり。2022年にパーティー券を販売した売上のうち、支部に報告せずに都議本人が管理していた資金、いわゆる裏金を、帳簿に記載していなかったという疑いだ。
訂正、そして再訂正…「使い切った」はずが「繰り越し」へ
特に注目されているのが、練馬区選出の柴崎幹男都議が代表を務める「自民党東京都練馬区第十一支部」の収支報告書の訂正内容だ。
1月末、同支部は裏金110万円を「収入」として報告書に追記し、同額を人件費や事務所費として「支出」したことにしていた。つまり「裏金は使い切った」と説明していた。
ところが、2月に入って「しんぶん赤旗」日曜版の取材を受けたあと、再び訂正。今度は一転して、裏金110万円(2022年分)と、2019年分の131万円、計241万円を「繰越金」として報告書に記載した。つまり「裏金は使っておらず、今も手元に残っている」と話が変わったのだ。
「不自然すぎる訂正」…組織的隠蔽の疑いも
上脇教授は告発状の中で、「訂正の経緯があまりにも不自然」と指摘。「裏金が本来は政治家個人に渡されたものであるにもかかわらず、それを隠すために帳簿の数字を改ざんしたのではないか」として、悪質性を強調している。
また、寄付のように見せかける形で、収支報告書に虚偽の記載がなされた点について、「組織的な関与があった可能性が高い」とし、厳正な捜査と処分を求めた。
政治資金規正法の抜け穴が浮き彫りに
そもそも、こうした「中抜き」が可能だった背景には、政治資金規正法の構造的な問題がある。現行法では、パーティー券の購入者の名前や金額の報告は20万円以上に限られており、裏金化を容易にしてしまっているのが実情だ。
これまでも上脇教授は、こうした“抜け穴”を繰り返し問題提起しており、今回はその象徴的なケースとなった。今後、法改正を含む政治資金制度の見直し議論にも影響を与える可能性がある。
捜査の行方に注目
東京地検特捜部はすでに都議会自民党関係者から任意での事情聴取を進めており、今後の展開次第では、刑事責任の追及に踏み切ることも予想される。
政治とカネの問題は繰り返されてきたが、今回の告発が、その体質を本気で改めるきっかけとなるのか――。都民、国民の厳しい視線が注がれている。