2025-09-26 コメント投稿する ▼
神奈川県観光客数が過去最高2億806万人 県民所得停滞で観光政策見直し論
神奈川県は2024年(令和6年)の観光客数が2億806万人に達し、過去最高を更新したと発表した。 横浜市や藤沢市、小田原市なども過去最高を更新し、全体として観光需要は力強く回復している。 観光客の増加は目を引くが、県民所得や県民総生産は伸び悩んでいる。 県全体の税収増や産業振興に直結していない現実を踏まえると、観光客数の「過去最高」が県民の暮らしや経済の実態に結びついていないことが浮かび上がる。
神奈川県の観光客数が過去最高 2億806万人に
神奈川県は2024年(令和6年)の観光客数が2億806万人に達し、過去最高を更新したと発表した。前年から1694万人増加し、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ需要を大きく上回った。これまでの最高だった2019年(令和元年)の2億467万人を339万人上回り、観光地としての人気が改めて浮き彫りになった。
観光客の内訳は日帰り客が1億8783万人、宿泊客が2023万人である。地域別では「横浜・川崎」が最多の7887万人を記録し、鎌倉市を含む「湘南」が5036万人、温泉地で知られる「箱根」が3377万人に達した。横浜市や藤沢市、小田原市なども過去最高を更新し、全体として観光需要は力強く回復している。
観光客数増でも経済効果は限定的
観光客の増加は目を引くが、県民所得や県民総生産は伸び悩んでいる。観光による消費が一部の宿泊業や飲食業に集中する一方で、地元産業全体への波及効果は弱い。宿泊客数が2000万人余りにとどまる中、日帰り客の比率が圧倒的に高いため、滞在型の消費につながりにくい構造も背景にある。
また交通渋滞やごみ処理コスト、違法駐車や白タク問題など、観光公害による負担は住民生活を圧迫している。県全体の税収増や産業振興に直結していない現実を踏まえると、観光客数の「過去最高」が県民の暮らしや経済の実態に結びついていないことが浮かび上がる。
観光公害対策に追われる現場
鎌倉市では人気アニメ「スラムダンク」の舞台として注目を集めた江ノ電鎌倉高校前駅周辺で、違法駐車や道路上での撮影、白タク行為が頻発している。市は近隣公園に撮影スポットを設置する実証実験を行い、4日間で9490人を誘導した。さらに10月からは誘導員を追加配置し、混雑緩和を図る方針だ。
一方で、こうした対策は人員や財政負担を伴い、結果的に住民にしわ寄せが及ぶ。観光客を呼び込む政策が続く限り、地域は観光収益よりも生活コストや環境負荷に悩まされるとの批判が強い。
SNSでも厳しい声が目立つ。
「観光客が増えても給料は増えていない」
「オーバーツーリズムで生活が苦しいだけ」
「地元産業に恩恵がなく渋滞やごみばかり」
「イベントも住民の犠牲で成り立っている」
「もう観光政策は見直すべき時だ」
見直し迫られる観光政策
観光振興は地域経済の柱とされてきたが、現実には県民所得や県民総生産の改善につながっていない。むしろ観光公害が生活環境を悪化させ、地域産業にとっても負担となっている。観光客数を競う従来型の政策は、地元住民を犠牲にした「数字上の成功」にすぎない。
今後必要なのは観光客数の拡大ではなく、質を重視した持続可能な観光戦略である。滞在型観光を促進し、地域産業全体に利益を循環させる仕組みがなければ、観光立県の看板は実体を伴わない。神奈川県が直面する課題は、観光のメリットとデメリットを冷静に見極め、政策の抜本的な見直しを行うことにある。