2025-09-18 コメント投稿する ▼
三菱商事の洋上風力撤退で揺れる再エネ政策 千葉県知事が求めた制度見直しの本質
再生可能エネルギーの推進を国策と位置づける日本にとって、象徴的な計画の後退は大きな衝撃を与えた。 銚子市沖は長年「洋上風力の実証の舞台」とされてきただけに、地元の失望は大きい。 こうした声に押され、国は事業者が安心して参入できる環境づくりを迫られている。 日本政府は2030年に向けて温室効果ガス排出削減を進める中で、洋上風力を重要な再生可能エネルギー源と位置づけてきた。
三菱商事の撤退が突きつけた現実
三菱商事を中心とする企業連合が2025年8月下旬、秋田県沖と千葉県銚子市沖の3海域で進めていた洋上風力発電事業から撤退すると発表した。建設費は当初の想定から2倍以上に膨らみ、採算が取れなくなったことが理由とされている。再生可能エネルギーの推進を国策と位置づける日本にとって、象徴的な計画の後退は大きな衝撃を与えた。
千葉県の熊谷俊人知事は9月18日、経済産業省を訪問し、武藤容治経済産業大臣に要望書を提出。「二度と同じことが起きないように制度を見直してほしい」と訴えた。武藤大臣は「地元に寄り添い、年内に対応策をまとめる」と応じた。
要望書の中身と制度の課題
熊谷知事が示した要望には四つの柱がある。第一に、事業者が収益を確保しやすい制度を整えること。第二に、インフレや金利上昇といった外部環境に柔軟に対応できる仕組みを組み込むこと。第三に、撤退があった海域での再公募の早期実施。第四に、地域振興策を継続することだ。
撤退の背景には、制度設計そのものに無理があったとの指摘がある。4年前の入札で事業者は低価格で落札を競い合ったが、その後の資材高騰や円安、金利上昇で事業コストが急騰し、採算割れとなった。結果として「ダンピング入札」との批判も浮上している。
地元の声とSNSでの反応
銚子市沖は長年「洋上風力の実証の舞台」とされてきただけに、地元の失望は大きい。雇用や地域経済への効果が見込まれていただけに、撤退の影響は深刻だ。
「また大企業が途中で手を引いた。地元だけが置き去りだ」
「低価格入札を許した制度に問題がある」
「洋上風力そのものは必要だが、事業者が続けられないなら意味がない」
「結局、国策といっても現場の現実が伴っていない」
「今度こそ制度を見直し、地元に利益を残してほしい」
こうした声に押され、国は事業者が安心して参入できる環境づくりを迫られている。
洋上風力政策の転換点
日本政府は2030年に向けて温室効果ガス排出削減を進める中で、洋上風力を重要な再生可能エネルギー源と位置づけてきた。しかし今回の撤退で、政策と現実の乖離が浮き彫りとなった。今後は単に「再エネ導入を増やす」というスローガンではなく、入札制度の透明性や価格設定の現実性、リスクを吸収する補償制度の整備が求められる。
事業者にとって予見可能性がなければ、新規参入は難しい。国の制度見直しは、単なる補修ではなく、日本の再エネ政策全体の信頼を立て直す試金石となる。千葉県の要望は、地方から国に突きつけられた再生可能エネルギー政策の転換要求ともいえる。