2025-04-08 コメント投稿する ▼
サイバー防衛強化法案、6会派が修正案提出 藤岡議員『丁寧な運用を前提に賛成』
採決に先立ち、立憲民主党・無所属の藤岡たかお議員が登壇。政府案に足りない部分を補い、通信の秘密や国会の監視機能を確保するために修正を加えたと説明したうえで、「政府による丁寧な運用を前提として、賛成する」と表明した。
課題は山積、それでも前に進めるべき理由
藤岡議員はまず、サイバー攻撃が年々高度化し、国の重要インフラが標的になるリスクが増している現状を踏まえ、「対策を急ぐのは当然のこと」と指摘した。
ただし、政府原案にはいくつか懸念点もあるという。
- 通信の秘密に対する配慮が十分ではない
- 海外にある攻撃サーバーへの「無害化措置」が、武力行使にあたる可能性がある
- 国会の監視機能が弱く、民主的統制に欠ける
こうした点を踏まえ、立憲民主党は日本維新の会と連携し、複数の会派に呼びかけて修正案をまとめた。
通信の秘密を守るために
特に重視したのが、個人のプライバシー保護だ。たとえば、政府がサイバー情報を収集する際、個人が特定されないようにする「非識別化」や、自動的に不要な情報を排除する仕組みが必要だとした。
過去の通信傍受法や特定秘密保護法では、通信の秘密を尊重する条文が設けられていたが、今回の法案にはそうした規定が見当たらなかったため、修正案で「通信の秘密を尊重する」旨の条文を新たに加えた。
「武力行使ではない」という政府答弁も
国外にある攻撃サーバーへの対応についても議論が交わされた。攻撃を無害化する措置が、先制攻撃や武力行使と見なされるのでは、という懸念に対して、政府は「深刻な被害を伴うような武力の行使には当たらない」と説明。国連憲章に違反するような行為ではないとの見解を示した。
しかし藤岡議員は、実際に行われた措置が「必要最小限だったかどうか」をチェックする仕組みが欠けていると指摘。政府が「手の内を明かせない」として具体的な内容の報告を避ける姿勢に、慎重な運用を求めた。
第三者による監視体制の整備
法案の修正では、政府の対応が適切だったかをチェックする第三者機関「サイバー通信情報監理委員会」の役割が明記された。
さらに、サイバー攻撃への無害化措置を行う場合、原則として事前に委員会の承認を得ることが必要であり、例外的に事後報告となった件数も国会に報告するよう定めた。これにより、政府による恣意的な運用を防ぐ狙いがある。
丁寧な運用と将来的な見直しを前提に
今回の修正案には、施行後3年を目処に法の内容を見直す規定も盛り込まれた。法案の性質上、技術の進展や国際情勢の変化に柔軟に対応することが求められるためだ。
藤岡議員は「政府原案には足りない部分もあるが、重要インフラを守るためには今、動き出さなければならない」と訴え、政府に対しても「最大限の説明責任を果たし、誠実に国会対応を行うこと」を求めた。
会派を超えた協力体制
この修正案は、立憲民主党と維新の会の共同提案により、国民民主党、公明党、自民党、有志の会も賛同し、6会派がまとまって提出した。藤岡議員は「このような超党派の協力に感謝したい」と述べ、国会全体でサイバー安全保障を担う重要性を訴えた。
今後は参議院での審議を経て、正式な法改正が行われる。法の整備だけでなく、実際の運用が国民の権利を損なわず、サイバー攻撃から国を守るための実効性を持ったものとなるかが問われる。政府と国会、そして社会全体がこの課題にどう向き合うかが、今後のカギを握る。