2025-07-14 コメント投稿する ▼
【適正運賃を受け取れた運送業者は45%】国交省調査で現場の苦境浮き彫りに “標準運賃”と現実の乖離が加速
「適正運賃」受け取れたのはわずか45% 運送現場の疲弊、国交省調査で浮き彫りに
値上げ交渉しても“価格転嫁”は道半ば トラック運転手の賃上げは遠いまま
「標準的な運賃」改定の裏で広がる現実とのギャップ
荷主優位の構造が変わらなければ“物流2024年問題”は解決しない
国土交通省が7月14日までに公表した調査によると、全国のトラック運送事業者のうち、国が定めた「おおむね適正」とされる水準の運賃を荷主から受け取っている事業者は、わずか45%にとどまった。これは前年度比で5ポイント減少しており、運賃目安の引き上げがむしろ“現実との乖離”を拡大させた格好だ。
現場では深刻な人手不足と燃料費の高騰が続いており、労働時間の制限が始まる「2024年問題」も本格化している中、今回の調査結果は「適正運賃が机上の空論にすぎない」との現実を突きつけている。
「適正運賃」をもらえていない55%の運送会社
今回の調査では、トラック運送会社約1100社からの回答をもとに分析された。国が「おおむね適正」とみなすのは、標準的な運賃の8割以上を荷主から受け取っているケースであり、実際にこれを達成していると答えたのは45%。残りの55%は、いまだ適正額に届いていない現状にある。
「法律で時間制限するなら、運賃にも強制力を持たせろ」
「ドライバーの過労を防ぐって言いながら値上げできない構造のまま」
「運賃目安を上げただけで“適正化した気分”になってないか?」
「運送業が“安く使われる前提”から何も変わっていない」
「荷主が強すぎる。対等な交渉なんて夢のまた夢」
このように、現場からは「運賃目安」や「適正化の仕組み」が実態に合っていないとの声が続出している。
「値上げ交渉した」が実らない “交渉済み”と“交渉成立”は違う
調査では、荷主と運賃交渉をした事業者の割合は74%と一定数に達している。だが、交渉したからといって適正額での契約が結ばれているわけではない。むしろ、「標準的な運賃」との差が広がったことが、達成率の低下という結果につながった。
運送会社側が値上げを要求しても、荷主側が応じない、あるいは一部しか認めないといったケースが多く、「実効性ある交渉環境」が整っていないことが明らかとなった。
国の目安「標準的な運賃」は現場を無視したまま先行
国交省は2023年度末に「標準的な運賃」を平均8%引き上げた。これにより、制度上は「運送業の価値を正当に評価した」格好になっているが、今回の調査では逆に適正運賃を得られていない企業が増えるという皮肉な結果となった。
つまり、「理想の数字」を設定しても、交渉力のない中小運送業者や個人事業主がそれを実現できなければ、制度の空回りにすぎない。
構造的問題を放置すれば、物流インフラが崩壊する
背景には、運送業界全体に根深く残る「荷主優位」の構造がある。いまだに「運送費は削れるコスト」として扱われる場面は多く、国が提示する目安が“参考”に過ぎないという現実もある。
にもかかわらず、労働時間の規制強化や賃上げプレッシャーばかりが運送側にのしかかり、「やるべきことはやった」という空気が政府・行政に蔓延しているのであれば、これは制度疲労ではなく制度放棄といえる。
本当に必要なのは、運賃交渉を義務化する法的整備や、荷主への罰則強化など「価格転嫁の実効性を担保する仕組み」だ。