2025-06-20 コメント投稿する ▼
外国人バス運転手にN4水準でも乗務容認へ 日本語サポーター同乗で人手不足補う政府方針に波紋
N4水準でも運転可に 「サポーター同乗」で現場補完
政府が推進する「特定技能」制度の対象に、バスやタクシー運転手が加わってから約1年。深刻な人手不足が続く中、国土交通省はついに外国人ドライバーに求める日本語能力の緩和に踏み切る。これまで中級の「N3」レベルが要件とされていたが、今後は「N4」でも可とし、代わりに「日本語サポーター」を同乗させるという案が有識者会議に提示された。
このサポーターには、バス運転手OBや会社の事務員、バスガイドといった日本人が想定されており、運転技能に加え、乗客対応やトラブル時の意思疎通を補助する役割が期待されている。
特定技能によるバス・タクシー運転手の受け入れは昨年3月に正式決定され、4月末時点で「評価試験」合格者は計253人。だが、実際に特定技能の在留資格を得て乗務しているのは、タクシー3人、バスはまだゼロと、制度の浸透には時間を要している。
「日本語サポーターって“通訳付き運転手”ってこと?安全性に不安が残る」
「外国人に頼るしかないのが現実。でも乗客としてはちょっと怖い」
離島・半島部では「単独乗務も可」 安全は確保できるのか
国交省は、日本語サポーターの同乗を前提にN4でも乗務可能とする一方、事故率が低く交通量も少ない「離島や半島部」では、N4水準でも単独乗務を認める方向で検討している。
しかし、地方に住む住民にとっては「生活の足」であるバスに、不十分な言語能力の運転手が単独で乗ることに対する不安も根強い。バス会社側も「人手不足で運行維持が困難なのは事実だが、言語能力と緊急時対応は直結する」と慎重な声もある。
日本語能力試験でN4とは、「日常的な会話のほぼ理解」が目安。たとえば乗客が体調不良を訴えたとき、道に迷った高齢者が助けを求めたとき、あるいは交通事故に巻き込まれたとき、臨機応変な対応ができるかどうかが問われる。
「もしバス内で倒れた人がいたら?運転手が意思疎通できない状況は危ない」
「島の路線バスが外国人一人だけになると、緊急時対応が不安」
日本人を雇えない現実 業界の「低待遇」に切り込まず
バス・タクシー業界が直面する人手不足の根本原因は、労働環境そのものにある。長時間勤務、低賃金、不規則な生活。国交省も毎年約3千人のバス運転手が減っており、年間約2500キロの路線が廃止されていると認めている。
しかし、外国人労働者の受け入れが進む一方で、日本人を呼び戻すための待遇改善や、運行の省人化など本質的な改革は後回しにされているのが実情だ。
現在、外国人が取得できる大型2種免許は20言語での学科試験受験が可能になり、今後の取得者は増加すると見られる。だがその背後には「日本人がやりたがらない仕事を外国人で埋める」という、制度的な依存構造も浮き彫りになっている。
「外国人を呼ぶ前に、日本人が働ける環境を整備すべきじゃ?」
「待遇改善なしで人手不足を外国人で解決って、根本解決になってない」
外国人労働者の定着と共生へ、制度の見直しは不可避
特定技能制度は、単なる短期労働力確保ではなく、家族帯同や在留期間延長を可能とする「定着型」の制度である。しかし、その一方で現場では言語の壁、安全面、住民との摩擦などさまざまな課題が顕在化している。
バスという公共インフラに外国人が本格的に乗務する時代が来る以上、制度設計や支援体制を急速に整備することは不可欠だ。日本語サポーターの養成、現場でのOJT、地域住民との交流機会の創出など、「共生社会」への地道な歩みが求められている。
だが同時に、外国人に頼るだけでなく、「なぜ日本人がこの仕事をやりたがらないのか」という本質的問題にも、政府と業界は真正面から向き合うべきだ。労働力不足のツケを“外注”する時代は、もう限界に近い。