2025-10-01 コメント投稿する ▼
土地取引の国籍報告義務は抜け穴だらけ 外国資本による水源地買収は防げない
背景には、外国資本による森林や水源地買収に対する懸念がありました。 今回の最大の問題点は、外国企業が日本で法人を設立して土地を取得すれば、自動的に「日本国籍」として扱われる仕組みです。 森林や水源地を守るには、名義上の国籍ではなく、最終的な出資者・実質的支配者を把握する仕組みが不可欠です。
土地取引に国籍報告義務を追加、抜け穴だらけの規制
国土交通省は7月1日付で国土利用計画法の施行規則を改正し、大規模土地取引に際して取得者の国籍を届け出させる制度を導入しました。背景には、外国資本による森林や水源地買収に対する懸念がありました。水源涵養機能の低下や国土の安全保障リスクを防ぐことを目的としています。しかし、制度の実際の中身を見ると「規制をしているフリ」に過ぎないとの批判が強まっています。
届け出制度の仕組みと新設された「国籍」欄
国土利用計画法は、土地投機の防止を目的に市街化区域で2000平方メートル以上、都市計画区域外で1万平方メートル以上の土地取引を対象に、2週間以内の自治体報告を義務付けています。2024年には全国で約1万9000件の届け出がありました。改正で新たに「国籍」の記載が義務化され、個人は国籍を、法人は設立国を届け出ることになりました。
外国資本の日本法人は「日本国籍」扱い
今回の最大の問題点は、外国企業が日本で法人を設立して土地を取得すれば、自動的に「日本国籍」として扱われる仕組みです。つまり、資本の出所や実際の経営支配が外国であっても、届け出上は日本人と区別されません。規制の趣旨である「外国資本の把握」が骨抜きになる抜け穴です。投資ファンドやペーパーカンパニーを通じれば、誰が実質的に土地を支配しているのかを把握することは困難です。
「日本法人を作れば国籍は日本扱い。意味がない」
「水源地保護どころか外国資本に門戸を開いただけ」
「住民に説明するためのアリバイ規制に見える」
「実効性のある資本規制を導入すべき」
「これでは“規制ごっこ”にすぎない」
水源地保護に直結しない制度
森林や水源地を守るには、名義上の国籍ではなく、最終的な出資者・実質的支配者を把握する仕組みが不可欠です。諸外国では、土地取得に際して外資審査を義務付けたり、戦略的な土地は取得自体を制限したりする制度が存在します。今回の日本の改正は、数字上の把握を「やっているように見せる」制度にとどまっています。これでは、外国企業が日本法人を通じて山林や水源地を買収し続けても、行政が実態を正確に把握できないままになる恐れがあります。
必要とされる実効的規制
土地利用に関する透明性を確保するには、単なる国籍報告では不十分です。最終的な株主や資本の出所を追跡する「実質的支配者情報」の届け出義務を強化し、違反には厳格な罰則を設けるべきです。さらに、水源地や国境近くなど戦略的に重要な土地については取得段階から許可制とし、国益を守る制度設計が求められます。今回の制度改正は「水源地保護の第一歩」と説明されますが、現状では外国資本による買収を止めるどころか、形式的な数字を集めるだけで終わる危険があります。国民の不安に応えるには、より抜本的な法整備が不可欠です。