2025-10-17 コメント投稿する ▼
あんどう裕氏が警鐘:議員定数削減と企業団体献金禁止の政治的罠
あんどう裕氏は、現在議論されている国会議員定数削減論議が「現行制度下での比例定数削減」を前提として進められており、それは既存政党に有利な制度改変であると強く批判している。 あんどう氏は、もし“真の自己犠牲的改革(身を切る改革)”を行うなら、企業・団体献金を全面禁止すべきだと断言する。
議員定数削減案の“裏側”
あんどう裕氏は、現在議論されている国会議員定数削減論議が「現行制度下での比例定数削減」を前提として進められており、それは既存政党に有利な制度改変であると強く批判している。SNS上で氏はこう述べている:
これをやると、現在の小選挙区で勝利している政党には有利となる。残るのは自民党、立憲民主党、大阪全勝の維新の会である。つまり、維新の会はそれほど傷まない。
実際、比例代表区の削減は、小選挙区で基盤を持つ大政党の議席を温存する構造を強める可能性がある。あんどう氏自身も、現制度下の比例削減には「猛烈に反対」する姿勢を改めて示しており、特に新興政党が戦いにくくなる点を懸念していると発言している。
この定数削減案の動機として、あんどう氏は「政治権力の独占と資金源の温存」を指摘する。すなわち、制度を変えることで既得政党の組織優位を制度的に強めようという意図が働いているという見立てを示す。
しかし、議員定数の見直しそのものは国会改革として一定の合理性を持つ主張でもある。したがって、重要なのは改革の「どの部分を削るか」「誰に影響が及ぶか」という設計であり、そこに政治的意図が入り込む可能性を見据える必要がある。
“本気の改革”とは何か:企業・団体献金禁止
あんどう氏は、もし“真の自己犠牲的改革(身を切る改革)”を行うなら、企業・団体献金を全面禁止すべきだと断言する。彼は、単に透明化を掲げて誤魔化すような案では不十分であり、根本から資金の影響構造を断ち切るべきだ、という立場だ。
実際、2025年3月には、立憲民主党、維新の会、参政党などによる企業・団体献金禁止法案(政治資金規正法改正案)が国会に共同提出された。これは、法人・団体からの寄付や政治資金パーティー収入を禁止対象とする内容を含む。
この法案をめぐっては、従来から議論の対象となっていた「献金制度の癒着」問題を正面から取り扱うものであり、政党・政治家の資金調達構造を根底から変える可能性を秘めている。立民・維新・参政党らは、自民党がこの分野で強く抵抗するとの見方も踏まえつつ、野党間で法案一本化を図っている。
なお、維新の会自身は、自党への企業団体献金を受け取らない方針を掲げており、政党サイトにも「企業団体からの政治献金を禁止」と明記している。
しかし、現実の政治資金制度全体を変えるためには、各政党・各議員がこの制限を受け入れ、かつ法制度として裏付けられる必要がある。
制度設計と“有利な改革”の危険性
あんどう氏が警鐘を鳴らすように、制度改変には必ず“勝者”と“敗者”が現れる。特に比例代表を削る定数削減は、小規模政党・中軸外政党の議席獲得を困難にする可能性が高い。制度改変を主導する政党が、自ら犠牲を払わない“改革”を訴える構図は、改革の公平性を疑わせる。
また、「企業・団体献金禁止」は、一見“善意の政策”として語られやすいが、実務課題も山積する。献金禁止によって資金調達先が極端に限定されること、政党助成金・個人献金依存の脆弱性、中小政党への影響などだ。特に、透明性と説明責任を伴わずに禁止だけを掲げる改革では、また別の「既得ルール」が温存されかねない。
制度改正を議論するならば、**比例制の削減や議員定数見直し、献金規制いずれにおいても「誰を優位にする制度か」を前提に議論すべきだ。政策議論を装った制度操作であってはならない。
政治的リアリズムと参政党の立ち回り
参政党という党派背景を踏まえると、あんどう氏の発言には党勢拡大を前提とした戦略が見える。すなわち、定数削減や献金禁止の制度設計段階で“不利配置”を強いられることへの牽制と、制度設計の主導権を得ようとする意志が透ける。
また、本気の制度改革を訴えるならば、参政党自身が自らの献金制限や党内資金運用の透明性確保を先行して示さなければ、ただの“主張先行政党”で終わるリスクがある。他党にも同様の負荷を課す法制度を主導するならば、まず自党が率先して身を切る姿勢を示すべきだ。
一方で、議員定数という制度論は世論との親和性も高いテーマである。多くの有権者は「議員が多すぎる」と感じており、定数削減を訴えるというのはポピュリズムとも親和性がある戦術だ。ただし、それを“どのように削るか”という中身が有権者には見えにくいため、制度の構造的歪みに気づかれにくい。
展望と注目点
今後、議員定数削減案は与野党の間で協議され、政府・与党が折り合いをつけて法案化を進める可能性がある。一方、企業・団体献金禁止法案は、野党が一本化の動きを見せているが、自民党側が強力に抵抗する可能性が高い。立憲や維新との駆け引きが焦点になる。
最も注目すべきは、制度設計の中身だ。比例縮小か小選挙区重視か、それとも比例改革を伴う改変か。企業献金禁止をどこまで貫くか、例外を認めるか。その調整過程で、実際に加害をこうむる政党・勢力が現れる。
あんどう氏の主張は、その制度設計の“あるべき姿”を巡る強い警鐘と言える。制度改変を語る政治家は、自らの立ち位置と利益を超えて、公平性を担保するためのガバナンス設計まで責任を取る覚悟が必要だ。