2025-05-09 コメント投稿する ▼
日本学術会議の法人化、独立性とガバナンスの両立に課題 – 監事任命と評価委員会が焦点
日本学術会議の法人化、独立性とガバナンスをどう両立するか
政府は2025年3月、日本学術会議を「国の特別の機関」から「特殊法人」へと移行させる法案を閣議決定した。この法案は、学術会議の独立性を維持しながらも、組織の透明性と説明責任を強化することを目的としている。しかし、監事の任命方法や評価委員会の設置、中期的な活動計画の策定を巡り、議論が続いている。
監事の任命方法と独立性への懸念
田中健議員は、日本学術会議に設置される監事の任命方法に疑問を投げかけた。政府案では、監事は内閣総理大臣が任命し、その任期には再任制限が設けられていない。田中議員は「総理が任命する監事が、本当に独立して監査を行えるのか」と疑問を呈し、「再任制限がないことは、監事が任命権者である総理の意向に左右される可能性がある」と指摘した。
これに対し、政府は「監事は業務全般の監査を担当し、学術的な価値判断には関与しない。総理からの指揮命令は一切受けず、独立した立場で職務を遂行する」と説明した。しかし、田中議員の懸念は残ったままだ。
評価委員会の設置、学問の自由とのバランス
もう一つの論点は、学術会議が中期的な活動計画を策定する際、内閣総理大臣が任命する評価委員会が意見を述べることだ。政府は「評価委員会は、自己点検評価書に基づき、その方法や結果を確認し、改善の提言を行うものであり、学術会議の自主性を侵害するものではない」と説明する。
しかし田中議員は、「政府が学術を評価する仕組みは、学問の自由を脅かしかねない」と反論。憲法23条で保障された学問の自由に対する政府の姿勢が問われている。
特殊法人化で目指すもの
日本学術会議の特殊法人化は、政府からの独立性を確保しつつ、立法府への科学的助言機能を強化することを目的としている。特殊法人は、独立行政法人と異なり、政府が直接関与できる範囲が限定されており、学術会議の自主性を尊重した運営が可能とされている。
政府は「学術会議は特殊法人として、科学に基づく政策提言や国際協力を進める一方、運営の透明性を確保し、説明責任を果たす」と説明する。しかし、田中議員は「本当に独立性が守られるのか」と繰り返し確認を求めた。
今後の課題
日本学術会議の法人化は、学問の自由と説明責任のバランスをどのように確保するかが最大の課題だ。特に監事の任命方法や評価委員会の役割は、今後の運用ルールで明確にしなければ、学術会議の独立性が危うくなる可能性もある。
また、学術会議が立法府への科学的助言機能をどう発揮していくか、具体的な活動内容にも注目が集まる。今回の議論は、その第一歩に過ぎない。