2026-02-19 コメント投稿する ▼
麻生派60人に急増、旧安倍派は「わが世の春だったのに」と恨み節、派閥政治は本当に終わるのか
安倍派などの裏金問題を機に大半の派閥が解散した自民党で、唯一残る派閥「麻生派」が活況を呈しています。2026年2月19日に開催した派閥の定例会には、ずらりと60人が参加しました。衆院選前は43人だったのが、17人も増えたのです。
麻生派が過去最多の60人に急増
麻生派に所属する中堅国会議員は「こんなに増えて、うれしいのひとことだ」と語ります。派閥の領袖である麻生太郎副総裁は19日の会合で、「おごることなく、国民のためにどんな課題があるのか、何に取り組むべきかを考えながら、しっかりやっていくべきだ。うちは昔から明るいのがいいところ。結束してやっていこう」などと語り、上機嫌だったといいます。
昨年の自民党総裁選で、麻生氏は高市早苗首相を推し、キングメーカーに返り咲きました。その論功行賞のように、高市首相の下で麻生派は党の要職を占めています。麻生氏が副総裁に就任、麻生氏の義弟でもある鈴木俊一元財務相が幹事長となり、総務会長には有村治子元女性活躍担当相が就きました。2月の衆院選で自民党が316議席を獲得する圧勝をした後には、森英介元法務相が衆院議長に就任しました。
麻生派は衆院選後17人増えました。森氏が議長就任に伴って派閥を離脱する一方、新たに18人が派閥に加わったためです。その内訳は、伊藤信太郎元環境相ら昨年の衆院選で落選して今回復活した議員が4人、北神圭朗衆院議員や阿部弘樹衆院議員ら今回の衆院選で他党や無所属から自民党に移った議員が3人、今回の最年少当選だった村木汀衆院議員ら新人議員が11人です。
親分として面倒を見る麻生会長の姿勢
なぜ麻生派に人が集まるのでしょうか。麻生派所属の議員は「派閥の領袖として、やるべきことはやるというのが麻生会長の姿勢です」と話します。
「例えば、高市氏が総裁になった直後、少数与党のため首班指名も厳しい状況だったとき、麻生会長は北神氏や阿部氏の事務所を直接訪れて、高市氏に1票をと口説いていた。そして、選挙になれば2人とも自民党が公認して、当選させている。まさに親分として面倒を見るということを実践しているのが麻生会長です。他の派閥では、とてもそこまでやりませんでした」
麻生派がこんな隆盛を誇る背景には、裏金問題で他の派閥が解散に追い込まれたことがあります。自民党では派閥裏金事件を受けて、麻生派以外の派閥は解散しました。新人議員の教育機能は党本部が担うことになりましたが、党内には派閥での連携を志向する意見もあります。
「麻生派が60人って、もう実質的に自民党の中枢じゃないか」
「裏金問題がなければ、安倍派が主流派だったのにね」
「派閥政治って結局なくならないんだな」
「高市首相を支える中心が麻生派なのは間違いない」
「旧安倍派の議員たちは悔しいだろうな」
旧安倍派議員「わが世の春だったのに」
そんな麻生派を横目でうらやましそうに見ているのが、旧安倍派で裏金問題にかかわった一人でもある衆院議員です。「麻生派がこんな隆盛を誇るとはね。裏金問題がなければ、高市首相を支える中心はうちだったはず。わが世の春だったのに」と恨み節を語ります。
今回の衆院選で、裏金問題に関与した議員は、無所属の世耕弘成氏を加えて44人が出馬し、2人が落選しただけで、42人が当選しました。そのうち武田良太元総務相など旧二階派の3人をのぞき、39人が旧安倍派議員です。処分を受けていた旧安倍派の元幹部たちも復権し、萩生田光一氏が幹事長代行、西村康稔氏が選挙対策委員長、松野博一氏が組織運動本部長と、党の要職に起用されています。
旧安倍派の議員は、派閥復活の期待を隠しません。「当選後、安倍派時代の仲間で集まったとき、誰からともなく『もう一度、安倍派をやりたいね、再興したい』という話が出た。安倍晋三元首相が推していた高市氏が首相となったからには、支えたいと。『高市派をやれたら最高』『それがベストだ』という若い議員もいた」
「今、麻生派だけが主流派となって、60人に増えたことがニュースになっている。でも、安倍派はかつて100人の規模を誇っていた。なんだかなあという思いはあります。萩生田氏、西村氏、松野氏の誰かが本気になってやれば、安倍派の復活か高市派の旗揚げもあるような気がする」
岸田派も勉強会設立の動き
一方、岸田派に所属していた議員は複雑な表情でした。裏金問題で自民党への批判が高まったとき、岸田文雄元首相が、派閥の解消を進めた経緯があります。
「うちは派閥解消の言い出しっぺだからね。ただ、仲間には次の総理を狙う林芳正総務大臣がいます。その応援のために勉強会くらいは必要だという話はよく出ます。やっぱり仲間で集まりたい、群れたいという議員はけっこう多い。私もその一人です。この選挙で実質的に岸田派が推した新人議員もいます。派閥があればサポートできるが、今はこっそりとやるしかありませんからね」
かつて自民党政務調査会の調査役だった政治評論家の田村重信氏は麻生派の活況ぶりについてこう話します。
「衆院選では、多くの議員が高市首相の人気に乗じて当選した。新人議員で右も左もわからない人ほど、高市首相をど真ん中で支えている麻生派に入って世話になりたいと考えるのは当然でしょう。キャリアがある議員でも、麻生派に入ることが、高市首相への恩返しであり、あわよくばいいポストにつけるという気持ちにもなるはず」
そして、こうも言います。「裏金事件はまだ裁判が続いているし、『政治とカネ』の問題での不信感は払拭できたとはいえない。派閥の政治資金にかかわる面とは決別して、自民党内ではこれから勉強会などの目的でグループをつくるようになっていくのではないか。やっぱり総裁選や組閣になれば、まだまだ派閥やグループで動くのが自民党の歴史ですからね」
派閥政治は本当に終わるのか
麻生派の急拡大は、自民党の派閥政治が完全には終わっていないことを示しています。裏金問題を機に派閥解消が叫ばれましたが、実際には麻生派だけが残り、その勢力を拡大しています。
政治資金規正法違反事件で起訴された議員も含め、旧安倍派の議員たちは処分期間が終了し、党の要職に復帰しています。彼らは高市首相を支える立場にありますが、麻生派に対する対抗意識も持っています。
安倍派はかつて100人規模を誇る最大派閥でした。その勢力が裏金問題で一気に失われ、今は麻生派が唯一の派閥として60人規模にまで拡大しています。旧安倍派の議員たちが「わが世の春だったのに」と悔しがるのも無理はありません。
高市首相は派閥政治からの脱却を掲げていますが、実際には麻生派の支援なしには政権運営ができない状況です。麻生副総裁は高市首相のキングメーカーとして、党内での影響力を強めています。
自民党内では、派閥という名前を使わずに勉強会やグループという形で集まる動きも出ています。岸田派も林芳正総務大臣を中心に勉強会を設立する動きがあり、旧安倍派も「安倍派の復活」や「高市派の旗揚げ」を模索しています。
結局のところ、派閥政治は形を変えて続いていくのかもしれません。裏金問題は派閥の政治資金のあり方に一石を投じましたが、議員同士の結びつきや派閥の持つ教育機能、人事への影響力といった本質的な部分は変わっていないようです。