2025-04-09 コメント投稿する ▼
核廃絶触れず、成果は限定的 岸田前首相主導「国際賢人会議」が終了
理想は高く、現実は厳しく
この会議は、岸田氏が外相時代に参考にした「核軍縮の賢人会議」を踏まえて、2022年12月に設立された。目的は、2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議への政策提言だったが、もう一つの狙いとして、地元・広島での2023年G7サミットに向けた機運づくりもあった。
「核なき世界」の実現を訴えてきた岸田氏にとって、G7の場を広島で開く意義は大きかった。オバマ元米大統領の来日も期待していたが、結局実現しなかった。世界情勢がそれを許さなかった。
“賢人”たちの議論、しかし…
会議には日米欧に加えて、中国やロシアなど核保有国からも研究者や元外交官が参加。だが、メンバーは政府から独立した学者らが中心で、政治リーダーの姿はなかった。外務省も「政府の諮問機関ではなく、有識者が自由に議論する場」と位置づけており、実質的には学術色の濃い会議だった。
岸田氏は「提言をまとめられて感慨深い」と語ったが、その中身はやや物足りなかった。最終提言は、核リスクの管理や「核戦争の防止」に重点を置いたものの、被爆地からの訴えである「核兵器の全面廃絶」には踏み込まなかった。核兵器禁止条約にも一切触れず、被爆者らの期待に応える内容とは言いがたい。
「もっと踏み込んでほしかった」
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の川崎哲氏は「核兵器を使わせない、増やさない方向性は評価するが、廃絶に向けた明確なメッセージがなかった」と語る。
一方で、座長を務めた白石隆・熊本県立大学特別栄誉教授は「核抑止論が世界の前提になっている現状では、核リスクの削減こそが現実的な議題だった」と述べ、提言の意義を強調する。
政府の後押しもなく、静かな幕引き
第6回会議には、石破茂首相をはじめ、政府関係者の姿はなかった。開催にあたって目立った広報もなく、会議は静かに終わった。政府一体となって成果を世界に発信する体制は整っておらず、「岸田さんだからできた会議」と、外務省幹部がこぼすように、政治的な後ろ盾も薄かった。
今月からニューヨークで始まるNPT再検討会議の準備委員会で、日本政府は今回の提言を発信する予定だ。しかし、どこまで国際社会に響くのかは不透明だ。
- 岸田文雄前首相が2022年に設立した「国際賢人会議」が第6回で終了。
- 目的はNPT再検討会議への提言と、広島G7サミットに向けた「機運醸成」。
- オバマ元大統領などの参加は実現せず、メンバーは学者中心に。
- 最終提言は核戦争の回避が主眼で、「核廃絶」や禁止条約には言及なし。
- 会議への政府の関与も薄く、政治的影響力には乏しい結果に。
- 今後、NPT準備会合で提言を発信予定だが、国際的な反響は不透明。