2025-09-17 コメント投稿する ▼
歳費返納撤回で揺れる参政党・初鹿野裕樹議員 公約との乖離が問う政治家の信頼性
初鹿野氏は当選前、X上で繰り返し「議員歳費を返納する」と発信していた。 2025年1月には「政治と金の問題を批判してきたので、当選の暁には歳費を返納する」と宣言し、同月30日には「国会議員歳費・旅費及び手当等に関する法律を改正し、歳費を返納する」と明言した。
街頭演説と支持拡大の背景
参政党の初鹿野裕樹議員(48)は2025年7月の参議院選挙で初当選を果たした。横浜市桜木町駅前で行われた9月15日の街頭演説では、「日本を守り、子どもや孫に素晴らしい日本を引き継ぐ」と力強く訴えた。警視庁で23年間勤務した元警察官であり、2024年の衆院選落選を経て再挑戦した今回の参院選では、公明党現職の佐々木さやか氏との激戦を制し、神奈川選挙区の最後の議席を獲得した。
ただし選挙戦の最中から、南京事件を「捏造」と投稿したり、抗議者を「非国民」と呼ぶ発言などが波紋を広げていた。こうした言動に対して街頭でも抗議の声が上がり、支持層と反対層が明確に分かれる状況が続いている。
「歳費返納」公約の経緯と現行制度
初鹿野氏は当選前、X上で繰り返し「議員歳費を返納する」と発信していた。2025年1月には「政治と金の問題を批判してきたので、当選の暁には歳費を返納する」と宣言し、同月30日には「国会議員歳費・旅費及び手当等に関する法律を改正し、歳費を返納する」と明言した。さらに「能登半島地震の復興財源などに充てれば良い」と具体的用途まで提示していた。
国会議員に支給される歳費は、歳費法で月額129万4000円が定められている。過去には東日本大震災時に2割削減が実施された事例があり、参議院では自主返納制度が設けられた時期もあったが、2022年で失効した。現在は法改正なしに返納はできず、寄付扱いとなれば公職選挙法違反に抵触する可能性もある。
撤回の理由と説明不足への批判
初鹿野氏は9月12日の取材に対し、「参院で自主返納制度が存在したことを前提に発信したもので、直ちに返納する意図ではなかった」と釈明した。さらに「政党方針を確認せず投稿したことは不適切であり、歳費返納の意向は一度取り下げたい」と公約撤回を明言した。
一方で、既に7月下旬から8月分の歳費を受け取っており、具体的な使途や法改正への取り組みは報告されていない。支持者からは次のような声が相次いでいる。
「歳費返納して下さい。法律上無理なら自治体に寄付すべきです」
「横浜市民として返納を期待して投票した人も多い。直接自治体に寄付するのが筋」
「現行制度ではできないというなら、次の国会で返納可能な法案を提出すべきです」
「返納を選挙公約に掲げて当選したのだから、実現努力を示す責任がある」
「有権者を裏切る形になってはならない。説明責任を果たせ」
SNS上では「返納撤回=公約違反」とする批判が強く、今後の政治姿勢に影響を及ぼすのは避けられない。
政治家と歳費制度をめぐる論点
今回の撤回劇は、政治家と金の問題への国民の不信を改めて浮き彫りにした。国会議員の歳費は税金から支払われており、無条件の返納はできない仕組みになっている。ただし制度改正により寄付禁止規定との整合を図ることは可能であり、過去には震災時の特例もあった。したがって「制度が壁」との説明だけでは不十分であり、法改正を主導する姿勢を示すことが政治家として求められる。
さらに、物価高や増税への国民の不満が高まる中で「政治家自身の身を切る改革」への期待は強い。現職総理・自由民主党(自民党)総裁の石破茂氏も減税を優先課題とする姿勢を示しており、政治と金にまつわる不信解消は与野党共通の課題といえる。歳費返納を掲げた初鹿野氏の撤回は、国会全体の信頼性にも影を落とす。
今後の影響と政治不信
初鹿野氏は「今後も理解を深めていく」とコメントしたが、選挙直前まで繰り返し強調していた「歳費自主返納」という旗印を自ら降ろしたことで、支持者からの厳しい視線は続くだろう。公約の撤回は一度の説明で済むものではなく、法改正への具体的行動を示さなければ「有権者を利用しただけ」との批判を免れない。
国民の政治不信は「政治と金」の問題が繰り返されるたびに深まってきた。歳費返納問題はその象徴となり、議員の発言と行動の一致が強く問われている。今後の国会で制度改正にどれだけ本気で取り組むかが、初鹿野氏の政治家としての評価を決定づけるだろう。