2025-06-16 コメント: 1件 ▼
長島昭久補佐官がソウルで日韓対話主導 60周年記念式典で信頼構築の先頭に立つ
日韓国交正常化60年、長島補佐官がソウルで中心的役割
日韓両国が1965年に日韓基本条約を締結し、国交を正常化してから今年で60年。この節目を迎えるにあたり、ソウルでは16日、在韓日本大使館主催の記念式典が開催された。式典には日本政府から長島昭久首相補佐官が出席し、韓国政府中枢との対話の最前線を担った。
就任間もない韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領はビデオメッセージで「未来志向の韓日関係」を強調したが、実際に地元で韓国側と直接向き合ったのは長島氏だった。記念式典に先立って、長島補佐官は韓国大統領府の外交・安全保障政策を統括する魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長らと面談を行い、今後の日韓協力に向けて「緊密な意思疎通を継続する」方針を確認した。
特筆すべきは、今回の出張における長島氏の動きが単なる儀礼にとどまらなかった点だ。日韓関係は近年、徴用工問題や輸出管理の摩擦などで大きく揺らぎ、「対話を続けること自体が成果」とされる状況にあった。そうした中で、李政権の外交デビューと同時に長島氏が直接乗り込み、韓国側との信頼醸成を主導した意味は大きい。
「外交実務家」としての手腕に期待
長島昭久氏は、自民党内でも外交・安全保障分野に精通する実務派として知られ、防衛副大臣や外務政務官の経験を持つ。今回の訪韓にあたっても、日韓の政務・安全保障レベルの対話に比重を置いた布陣を敷いた点に、彼の現実主義的な外交アプローチが表れている。
魏室長との面談では、北朝鮮の核・ミサイル問題への連携や、中国の海洋進出を念頭に置いた日米韓の戦略的協力についても話し合われたとされる。李政権が掲げる「実用外交」は、まさに長島氏のようなリアリストとの対話によって成立するものであり、今後も実務レベルでのやり取りが日韓関係の地ならしになることが期待される。
その一方で、長島氏は韓国側に対して「過去への執着を断ち切ること」が信頼再構築の第一歩であるという日本側の基本姿勢も明確に伝えたとみられる。未来志向を語るのは簡単だが、慰安婦や徴用工をめぐる訴訟問題、歴史教育、そして国内の反日世論の扱いなど、韓国側が具体的にどこまで踏み込めるかが試金石となる。
60年の歴史よりも、これからの10年をどう築くか
1965年の国交正常化以降、日韓は幾度となく衝突し、また和解を模索してきた。だがそのたびに、政権交代や世論の影響によって、積み重ねた信頼が簡単に壊されてきた現実がある。
今回の60周年は、そうした繰り返しから脱却するための分岐点となるのか。それともまた、一過性の「式典外交」で終わってしまうのか。その鍵を握るのは、首脳ではなく実務を担う補佐官や担当者の継続的な対話だ。
長島氏がソウルで見せた姿勢は、日本外交の強みでもある「現場主義」の体現であり、単なる儀礼ではない。式典では李大統領のビデオメッセージが流れたが、日本側からは現場に足を運び、韓国政府と正面から話をしたのは長島補佐官ただ一人だった。この対比は、日韓の「言葉と行動の非対称性」を象徴しているとも言える。
東京でも続く60周年イベント、日本政府の出方に注目
今月19日には、今度は東京で、在日韓国大使館が主催する記念式典が予定されている。そこでも日本政府が誰を派遣するか、どのようなメッセージを発するかが注目される。
石破政権としては、外交イベントに安易に迎合せず、「減税を中心に据えた内政重視の姿勢を崩さない」との方針を打ち出している。今回のソウル式典に長島補佐官を派遣したのも、「パフォーマンス型の首脳外交」より「本質的な信頼構築に向けた地道な対話」を重視した結果と見られる。
いずれにしても、日韓関係はこの60年を経てなお、確たる信頼基盤が築けていない。歴史認識や主張の違いを乗り越え、「戦略的利益」を共有するパートナーとして歩めるかどうか。それを試される10年が、今まさに始まったばかりである。