2025-08-01 コメント投稿する ▼
教員に残業代が出ない理由とは?給特法の限界と新垣淑豊氏が提案する現場改善策「沖縄モデル」
教員に残業代が出ない理由とは?
給特法改正の限界と新垣淑豊氏の提案
「先生って、残業代もらえないんですよね?」
そんな疑問が、ようやく社会でも耳にされるようになりました。日々早朝から登校し、夜は会議や部活動、週末も行事対応。教員の長時間労働はもはや常態化しています。それにもかかわらず、なぜ残業代が支払われないのか――。
その背景にあるのが、1971年に施行された「給特法(義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」です。
教員の残業代が出ない構造
「教職調整額」が支給される仕組み
この法律では、教員の勤務は多岐にわたり、時間で一律に管理するのは難しいという理由から、残業代の代わりに「教職調整額」として月給の4%を一律に支給する制度が導入されています。
しかし実態としては、その4%が、授業以外の膨大な業務――たとえばいじめ対応、ICT指導、保護者対応、地域連携など――をすべてカバーする形となっており、過労や健康被害の温床となっています。
授業だけが仕事じゃない。先生の仕事は年々広がっていて、もう限界です
こう語るのは、沖縄県議会議員の新垣淑豊氏です。氏は、自身の公式サイトで、教員の働き方に対する問題提起とともに、制度改正の課題点を鋭く指摘しています。
改正給特法のポイント
残業代の代替として「最大10%」の引き上げ
2026年4月から施行される改正給特法では、「教職調整額」の引き上げが決定されました。これまでの4%から段階的に引き上げ、2031年には最大10%とする方針です。
また、新たに「主務教諭」という中間的な役職を設け、管理職と一般教諭の間で校務を担う体制強化も行われる予定です。
さらに、教育委員会や自治体に対しては、「業務量管理・健康確保措置実施計画」の策定と公表が義務付けられました。勤務間インターバルの確保や健康診断のフォローアップなどが含まれています。
しかし新垣氏は、この改正内容について楽観視していません。
制度を作るのは簡単。でも、やれと言われても、やれないのが地方の現実なんです
地方の現場が抱える深刻な課題
制度を担う体制が追いつかない
特に市町村単位の小規模自治体では、教職員の健康管理を支えるだけの人員も予算も不足しており、制度を実行するのは現実的ではないといいます。
産業医や保健師の確保、勤務実態の把握をわずか数人の教育委員会事務局で担えと言われても、物理的に無理です
教員の過重労働の解決には制度だけでなく、「現場が実際に動かせる仕組み」が不可欠だと、新垣氏は訴えています。
新垣氏が提案する“沖縄モデル”
健康管理室の広域設置で現場を支える
そうした問題意識から、新垣氏は沖縄県議会において、より実効性のある対策として「教育事務所単位での健康管理室の設置」を提案しています。
複数の市町村が共同で“健康管理室”を運営し、専門職を配置すれば、コストも抑えられ、継続的な支援が可能になります
この案では、保健師や産業医を配置し、勤務時間や健康状態のチェック、ストレス面談の実施までを一括管理。自治体ごとの予算分担で運営費を支え、特にリソースの乏しい町村部でも対応可能にする狙いがあります。
新垣氏はこの広域的な体制を「沖縄モデル」として構築し、令和7年9月議会で提案する予定です。
「教員の待遇改善」は空論で終わらせてはならない
給特法の改正は、確かに第一歩です。ですが、それだけでは“絵に描いた餅”に終わってしまう可能性も大きいのが実情です。
制度を作るだけでなく、どうやって現場で機能させるかが今、いちばん求められています
教員の長時間労働は、子どもたちの教育の質にも直結する重大な課題です。新垣氏のように、現場の実情に根差した改革案を持ち寄り、国と自治体が真剣に向き合う時期に来ています。
現場を無視した制度は、どれだけ理想的でも実行できません。現場の声を反映し、実効性のある仕組みを構築することが、持続可能な教育の第一歩となるでしょう。