2026-01-26 コメント投稿する ▼
文科省が小中の英単語削減案、負担軽減の名目で国際競争力低下させるな
中央教育審議会の作業部会で、2026年1月21日に文部科学省の担当者が、小中学校で学ぶ重要な英単語をリストで明確にした上で、実際に学ぶ単語数を減らす案を示しました。しかし単語数を減らせば英語力は低下します。安易な負担軽減は将来の国際競争力を損ないます。
現行指導要領で単語数が倍増
現行の学習指導要領では、中学校を卒業するまでに学ぶ英単語の数が、これまでに比べて約2倍になりました。文部科学省が公開している「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」によると、中学校を卒業する時点での単語レベルは、これまでが1200語レベルだったのに対して、現在は2200語〜2500語レベルになっています。
これは小学校で600〜700語、中学校で1600〜1800語を学ぶためです。高校卒業までには4000〜5000語に触れることになります。約30年前と比較すると、高校卒業までに約2倍の単語に触れることになります。
2020年度から順次施行された教育課程において、小学校で英語が教科化されたことが背景にあります。小学5年生から英語教育が科目としてスタートし、中学1年生の英語学習は2年間の英語教育を終えた前提の範囲になりました。
さらに文法項目についても、これまで高校生になってから学んでいた「現在完了進行形」と「感嘆文」、「仮定法のうち基本的なもの」が中学校に追加されました。増えた分の英文法項目は、それまでは高校生になってから学んでいたものです。
「精選も含めて見直す必要があるのでは」
「単語数を急増させるなど、あまりに高度化させたことに無理がある」
「グローバル人材を養成し、国際競争力を高める政策が根本にある」
「習得する単語数は目標ありきではなく、きちんとした積算根拠が必要」
「多くの生徒を取りこぼさないためには改善が必要」
文科省が単語数削減を提案
外国語の作業部会で2026年1月21日、文部科学省の担当者が提案しました。作業部会は、次の学習指導要領について議論をしています。
作業部会では、小学校で学んだ単語を中学で定着させることを確認しました。子どもがコミュニケーションを図りながら同じ単語を繰り返し学ぶこととあわせて、重要性を確かめました。
その上で文科省の担当者は、教えるべき単語数について「精選も含めて見直す必要があるのでは」と説明しました。生徒の負担を減らしたり、小学校から中学校への接続をスムーズにしたりする狙いがあるとしています。
しかし単語数を減らせば英語力は確実に低下します。神奈川大学の久保野雅史教授は「単語数を急増させるなど、あまりに高度化させたことに無理があるなら、やはり修正しなくてはいけません」と指摘しています。
安易な負担軽減は危険
文科省は「生徒の英語の学力は向上しています」「現行の学習指導要領の方向性は妥当です」と主張しています。しかし久保野教授は「調査の基礎データの取り方がはなはだ怪しく、きちんと検証しているとは思えません」と批判しています。
政府は2018年に閣議決定した第3期教育振興基本計画で、中学校卒業段階で「英検3級相当以上」、高校卒業段階で「準2級相応以上」の生徒の割合を、それぞれ2022年度中に50%以上とする目標を掲げていました。2023〜2027年度の第4期教育振興基本計画では、目標レベル以上の英語力を持つ生徒の割合の目標を「60%以上」に設定しています。
「先に目標ありき」で単語数を増やしたのに、達成できないから減らすというのは無責任です。習得する単語数は目標ありきではなく、きちんとした積算根拠が必要です。
現行の学習指導要領は、2013年の第2期教育振興基本計画、2015年に文科省が発表した「外国語教育の抜本的強化のイメージ」を具現化しています。そこには小学校での英語教育の早期化や教科化、中学校での英語による英語授業の実施などの方針が盛り込まれていますが、根本にあるのは「グローバル人材を養成し、国際競争力を高める」という政策です。
久保野教授は「一部のグローバルエリートを養成するために、その他大勢の生徒たちが、英語の授業についていけない、こぼれていくことを容認していいのか」と問題提起しています。
教員増と授業時間確保が必要
単語数を減らすのではなく、教員を増やし、授業時間を確保すべきです。教育予算を確保し、現場の教員に十分な支援を提供することが本来の解決策です。
多くの生徒を取りこぼさないためには、授業時間数、教員の研修、予算などを含めて、そもそもの目標を見直すことが必要です。小学校の国語教育の中でのローマ字指導との連携も大切です。
文科省は現状を直視して、現行の学習指導要領が正しかったのかどうか、きちんと検証するべきです。良いところは維持し、改善するべきところは改善してほしいです。単語数削減という安易な道を選べば、日本の英語教育は確実に後退します。
国際競争力を高めるという目標を掲げたのであれば、その実現に向けて必要な予算と人員を確保するのが筋です。目標達成が困難だからといって、目標そのものを引き下げるのは本末転倒です。