2025-07-29 コメント投稿する ▼
沖縄で「ゾンビタバコ」逮捕相次ぐ 指定薬物エトミデートは「知らなかった」では通用しない
ゾンビタバコで逮捕相次ぐ沖縄 「知らなかった」は通用しない“指定薬物”の現実
合法ギリギリが一転「犯罪」へ ゾンビタバコの脅威
沖縄県内で、麻酔成分「エトミデート」を含む電子タバコ用リキッドの所持により、少年や若年層を含む複数の人物が医薬品医療機器法違反で逮捕される事態が相次いでいる。通称「ゾンビタバコ」とも呼ばれるこのリキッドは、吸引によって意識障害や手足のけいれんなどを引き起こすとされ、東南アジアなどを中心に麻薬的に乱用されてきた。
厚生労働省は5月16日、エトミデートを指定薬物に追加し、所持・使用・譲渡・販売・輸入などを原則として全面禁止とした。政令の施行からわずか2か月で、沖縄県内では3人が立て続けに摘発されており、まるで“違法と知らずに吸っていた”かのようなケースが実際に起きている。
少年も逮捕「笑気麻酔」として広がる危険リキッド
今回、逮捕されたのは16歳の少年と20歳の男性2人。いずれもエトミデートを含む電子タバコ用リキッドを所持していた疑いが持たれている。リキッドは「笑気麻酔」や「無害なサプリ」と称して流通していたとみられ、違法性を十分に理解しないまま手にしていた可能性もある。
沖縄県警によると、10日に逮捕された少年は家族の通報をきっかけに捜査が開始された。一方、9日に逮捕された2人は、警察が5月26日にリキッドの所持を発見し、後の捜査で違法性が確認された。いずれも、エトミデートが指定薬物に追加された「施行日以降」に所持していたため、違法行為と判断された。
市民の間にも不安や驚きが広がっている。
「ゾンビタバコって何?怖すぎる」
「合法だと思って吸ってた若者も多そう」
「未成年が吸って逮捕?親として心配」
「周知されてないのに罪になるの?」
「そもそも売る方にも責任あるのでは?」
「知らなかった」は通用しない 法律の壁
今回の件で注目されたのが、「自分が吸っているものが指定薬物になったとは知らなかった」という主張が、果たして法的に通用するのかという点だ。
刑事事件に詳しい弁護士の見解によると、「新たな物質が政令で指定薬物とされた場合、効力が発生する日以降の所持は違法となり、知らなかったでは済まされない可能性が高い」とされる。
刑法では、「法の不知(知らなかった)」は原則として違法性を免れる理由にはならず、たとえ個人が故意でなかったとしても、違法状態にある限り、処罰対象となる場合があるという。
とはいえ、情状面で「周知が不十分だった」「過失なく知らなかった」といった事情が認められれば、処分が軽くなる可能性はゼロではない。
合法と錯覚しやすい“見た目”の危険
電子タバコのリキッドや“ナチュラル系”を装ったサプリメントなどは、見た目もパッケージも合法商品のように見える。販売者も「合法成分」とうたって拡散していたケースもあり、購入者が法的リスクを十分に認識できないまま手を出してしまう現実がある。
だが、いったん政令で指定されれば、それまで合法だった成分も一転して違法物質となり、「所持しているだけで逮捕」という事態になりかねない。とりわけ、未成年者や若年層が情報を十分に得ないままリキッドを使用している場合、悪質な流通業者の“見せかけの合法性”にだまされる危険性が高い。
“自己責任”では済まされない時代に
厚労省は年に数回、指定薬物の追加を行っているが、その都度の周知には限界がある。こうした現実の中、今回のように“知らずに吸っていた”という若者が逮捕される流れは、今後も繰り返される可能性がある。
問題は、「気づいたときには犯罪になっていた」という法の落とし穴に、多くの若者が陥りかねないことだ。
今回の逮捕事例は、“無知が違法を免れない”という日本の法体系の原則を、改めて浮き彫りにした。そして、それを前提に、販売業者・行政・教育現場・家庭など、あらゆるレベルでの情報共有と予防策が求められている。