2025-05-20 コメント投稿する ▼
沖縄県高齢者調査:生きがい感じる割合全国上回るも、経済的不安と健康格差に課題
沖縄の高齢者「生きがいあり」全国上回るも、暮らし向きには不安も
沖縄県が県内在住の高齢者を対象に初めて行った意識調査で、「生きがいを感じている」と答えた人が全体の8割を超え、全国平均より高いことがわかった。県はこの結果を20日に公表した。
調査は2024年11月、県内に住む60歳以上の男女4,000人を対象に郵送とオンラインで実施され、約6割にあたる2,377人から回答が寄せられた。
「日々に生きがいを感じている」「多少なりとも感じる」と答えた人は全体の82.7%。これは、内閣府が行った全国調査の76.3%を上回っており、沖縄の高齢者が比較的前向きな気持ちで暮らしていることを示している。
生きがいを感じる瞬間としては、「孫や家族と過ごす時間」「友人とおしゃべりや食事をする時間」など、人とのつながりが中心に挙げられていた。県は、「地域の中で人と関わり合いながら暮らすことが、高齢期の幸福感につながっている」と分析している。
生活には不安も 家計と健康に地域格差
一方で、経済面では厳しさが浮き彫りになった。家計について「特に心配はしていない」とした人は59.5%にとどまり、全国平均(67.7%)よりも低い水準だった。加えて、月の世帯収入が25万円未満という層が多く、経済的な余裕がない実情が見えてくる。
収入の多寡は健康状態にも関係しており、所得が少ない層ほど「健康状態があまり良くない」あるいは「良くない」と答える割合が高かった。逆に、所得が高い層では、心身の状態が良好とする回答が目立った。
こうした背景には食生活の違いもある。肉や魚、野菜、果物といった栄養バランスの取れた食材を日常的に摂っている人は、高所得層に多く、噛む力の強さも比例していた。
移動手段と老後の住まいに新たな課題
高齢者の9割以上が「週1回以上は外出している」と答えており、比較的活動的な生活を送っている様子がうかがえる。中でも「毎日のように出かけている」という人たちの移動手段として最も多かったのが「自分の車」で、82.3%がこれを利用していた。徒歩(38.9%)、バス(9.7%)、モノレール(9.0%)はやや少数派だった。
今後、高齢者の運転免許返納が進めば、外出手段が限られ、社会参加や日常の買い物にも影響が出かねない。地域の移動支援や交通インフラの整備が、喫緊の課題として挙げられる。
また、「今の家から転居したくない」とした回答は83.4%にのぼり、老後も住み慣れた地域で暮らしたいという思いが強いことが浮き彫りになった。体力が衰えた場合の選択肢としては、「自宅に介護サービスを取り入れて住み続けたい」が最多の53.3%。一方、「特別養護老人ホームなどの施設へ入りたい」との声も45.0%あり、いずれにせよ安心して老後を送れる環境整備が求められる。
地域の暮らしを守る行政の役割
今回の調査では、施設に入所している高齢者は対象外とされ、全国との比較には65歳以上の回答を抽出して分析が行われた。
沖縄県は今後、こうした調査結果をもとに、地域での支え合いや介護サービスの充実、生活支援の仕組みづくりなどを進める必要がある。高齢者が最後まで自分らしく暮らせる社会の実現に向け、制度面と地域の連携が鍵を握ることになりそうだ。