2025-05-16 コメント投稿する ▼
沖縄戦歴史認識で対立:玉城デニー知事が西田昌司議員を強く批判、沖縄県議会が抗議決議
沖縄戦の歴史認識めぐる激しい対立
沖縄県の玉城デニー知事は16日、県庁で行った定例記者会見で、自民党の西田昌司参院議員による沖縄戦の歴史に関する発言に強い批判を示した。西田議員は「ひめゆりの塔」の展示内容を「歴史の書き換え」と主張し、その発言が物議を醸している。玉城知事は「沖縄戦の体験者や遺族、県民の心を深く傷つけるもので、到底容認できない」と語った。
玉城知事は、西田議員の発言が沖縄戦の実態を歪め、犠牲者の尊厳を踏みにじるものであると指摘。また、西田議員に賛同し、「日本軍が沖縄の人たちを殺したわけではない」と述べた参政党の神谷宗幣代表の発言にも懸念を示し、「県民の多くが不安を感じているだろう」と語った。
沖縄県議会と糸満市議会が抗議決議
この問題を受け、沖縄県議会は同日、西田議員の発言に対し、謝罪と撤回を求める抗議決議を賛成多数で可決。さらに、ひめゆりの塔がある糸満市議会も全会一致で抗議決議を可決し、「体験者や遺族、県民の心を傷つけ、尊厳を損なう行為である」と強い言葉で非難した。
日本軍第32軍の作戦評価に懸念
玉城知事は、会見で陸上自衛隊幹部候補生学校が作成した学習資料にも言及。この資料では、沖縄戦での日本軍第32軍の作戦を「本土決戦を遅らせるための重要な戦略」として肯定的に評価していた。知事は「こうした作戦が多くの住民を巻き込んだ悲惨な戦争につながり、約9万4000人の県民が犠牲になった」と述べ、防衛省に対し、史実に基づく教育の徹底を求めた。
この資料には、第32軍の牛島満司令官と長勇参謀長の辞世の句も掲載されており、彼らの自決が「従容として見事」と評価されているが、住民の被害には触れていない。専門家からは「戦時中の軍の行動を美化し、被害者の視点を無視している」との批判が出ている。
識者が歴史修正主義に警鐘
沖縄国際大学の石原昌家名誉教授は、「住民被害を軽視し、歴史を一方的に美化することは問題だ」と述べた。また、琉球大学の山口剛史教授も「事実を歪める発言は、被害者に対する敬意を欠いている」と警鐘を鳴らした。
さらに、沖縄戦を巡る歴史修正主義の動きは過去にも問題視されており、1980年代には教科書検定で日本軍の行動を隠す動きが批判を受けた経緯がある。今回の発言も、その延長線上にあるとの指摘がなされている。
* 玉城デニー知事が自民党・西田昌司参院議員の「ひめゆりの塔」発言を厳しく批判。
* 参政党・神谷宗幣代表の「日本軍が沖縄の人たちを殺したわけではない」との発言にも懸念を表明。
* 沖縄県議会と糸満市議会が、西田議員への抗議決議を可決。
* 陸上自衛隊幹部候補生学校の資料で、日本軍第32軍の作戦を肯定的に評価していることが明らかに。
* 専門家からは歴史修正主義に対する懸念の声が上がっている。
沖縄戦の歴史を巡る議論は、過去の教訓をどう伝え、未来に平和をどう築くかという根本的な問いを突きつけている。