2025-11-15 コメント: 1件 ▼
沖縄空き家1億円窃盗事件「ゾンビたばこ」購入に悪用、中高生数十人関与で県警が本格捜査
沖縄本島の空き家で中高生らが1億円を超える現金を発見し、複数回にわたって持ち出していた事件で、盗んだ現金の一部が危険ドラッグ「ゾンビたばこ」の購入に使用されていたことが2025年11月14日までに明らかになりました。 この事件は、若者の薬物問題と現金の不法取得が複雑に絡み合った深刻な社会問題として注目を集めています。
肝試しから始まった1億円窃盗事件
事件の舞台となったのは、沖縄本島の閑静な住宅街にある空き家でした。2025年5月から6月にかけて、複数の中高生が「肝試し」という名目でこの空き家に侵入したところ、屋内で大量の紙幣を発見しました。この発見が仲間内で共有されると、現金の持ち出しが組織的に行われるようになったのです。
捜査関係者によると、関与した少年らは数十人に及び、数十万円から100万円余りを隠し持っていた者もいたといいます。現金の総額は少なくとも1億円を超えるとみられ、一回の窃盗事件としては異例の規模です。県警は、少年が大金を所持していることを不審に思った周辺住民からの相談を受けて事案を把握しました。
「1億円もあったら、何でも買えちゃうじゃん」
「でも盗んだお金で薬物買うって、もう完全にヤバい道に入ってる」
「肝試しのつもりが人生終了コースって...親はどう思ってるんだろう」
「こんなに簡単に現金が手に入ったら、正直働く気なくなりそう」
「ゾンビたばこの値段知ってるから、かなりの本数買えたはず」
深刻化する「ゾンビたばこ」問題と高額取引
少年らが現金で購入していた「ゾンビたばこ」は、指定薬物エトミデートを含む電子たばこ用リキッドです。1本あたり約2万5000円という高額で取引されており、本来は医療用麻酔薬として使用される成分が違法に流用されています。沖縄では2024年秋頃から若者の間で「笑気麻酔」などと呼ばれて広がり、深刻な社会問題となっています。
エトミデートは数十秒で効果が現れ、5分から10分程度作用が続きます。吸引すると意識が混濁し、手足がけいれんしたり、自分の体をコントロールできなくなったりすることから「ゾンビたばこ」と呼ばれています。台湾や中国などで製造されたリキッドが、SNSを通じて密売されているとみられています。
沖縄県警の統計によると、2025年5月にエトミデートが指定薬物に追加されて以降、7月から8月にかけて10代から20代の若者の逮捕が相次いでいます。浦添市では20代男女が全国初の摘発事例となったほか、宜野湾市でも18歳少年が逮捕されるなど、若年層への蔓延が深刻化しています。
薬物依存と犯罪の負のスパイラル
今回の事件で特に深刻なのは、盗んだ現金が薬物購入に直結している点です。薬物依存支援を行う琉球GAIA代表理事の鈴木文一氏によると、エトミデートは高額なため、「初めは興味本位で吸っていた人が、自分の薬代が回らなくなって密売に回る」ケースが多いといいます。
実際に、SNSでは「笑気麻酔あります」「合法リキッド」などと偽った販売投稿が確認されており、若者が被害者から加害者へと転落する構図が明らかになっています。1億円という大金を手にした少年らの一部も、この負のスパイラルに巻き込まれていた可能性があります。
沖縄が薬物流入の玄関口に
沖縄がゾンビたばこの日本における流入拠点となっている背景には、地理的要因があります。アジア諸国との距離が近く、物流や人の往来が盛んな地域であることに加え、観光客や米軍関係者による多国籍なコミュニティが存在することが影響しているとされます。
捜査関係者は「県内に海外の人脈がある暴力団からの流通経路があるのではないか」と分析しており、台湾マフィアや半グレ集団が組織的に売買の窓口となっているとの情報もあります。2024年10月には台湾南部で末端価格120億円超の大規模密輸事件が摘発されており、国際的な薬物流通ネットワークの一端が沖縄にまで及んでいることが懸念されています。
県警組織犯罪対策課は「米軍基地が多く、本土に比べ水際の監視が手薄で、地理的にアジアの取引網に近い沖縄は、麻薬の穴場として利用されやすい」と指摘しています。沖縄が日本の薬物流入の防波堤ではなく通り道となっている現実を、行政と警察は深刻に受け止める必要があります。
教育と予防対策の重要性
この事件は、単なる窃盗事件を超えて、若者の薬物問題と社会の構造的な課題を浮き彫りにしています。1億円という大金を前に判断力を失った少年らが、さらに危険な薬物に手を出すという二重の問題が発生したのです。
専門家は「生きづらさのケア」の重要性を指摘しています。薬物を断つだけでなく、若者が抱える根本的な問題に向き合い、適切な支援を提供することが必要です。また、SNSを通じた薬物取引の監視強化や、学校教育における薬物の危険性についての啓発活動も急務となっています。
今回の事件を教訓として、沖縄県は薬物流入の監視体制強化と、若者への予防教育の充実を図ることが求められます。1億円という大金が若者を犯罪と薬物の世界に引きずり込んだこの事件を、二度と繰り返してはなりません。「買わない、使わない、関わらない」を徹底し、地域全体で若者を守る取り組みが必要です。