2025-10-29 コメント投稿する ▼
玉城デニー知事が辺野古移設断念を要望、県民投票の民意と現実の乖離浮き彫り
玉城氏は米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の県外・国外移設と早期閉鎖・返還を改めて訴え、「県民の理解が得られない名護市辺野古移設計画は断念してほしい」と要望しました。 玉城知事が「県民の理解が得られない」と表現するのは、この県民投票という民主的手続きの結果に基づいています。 知事が「辺野古移設は県民の理解を得られない」と述べるのは、県民投票という手続きの結果を政治的に活用した表現と言えます。
高市政権初の沖縄訪問、基地問題の根深いしこり明らかに
黄川田仁志沖縄北方担当相は2025年10月29日、就任後初めて沖縄県を訪れ、玉城デニー知事と面談しました。玉城氏は米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の県外・国外移設と早期閉鎖・返還を改めて訴え、「県民の理解が得られない名護市辺野古移設計画は断念してほしい」と要望しました。高市早苗政権の発足後、閣僚の沖縄訪問は初めてで、政府と県のしこりの根深さが改めて浮き彫りになりました。
面談の冒頭で、玉城氏は米軍基地問題に触れ、「戦後80年、沖縄の本土復帰から50年以上を経た今も過重な負担が続いている」と述べました。問題解決に向けて県との対話に応じてほしいとの立場を示しています。その後、玉城氏から20項目にわたる「要望書」を受け取った黄川田氏は「沖縄の発展のため全力で取り組んでいく」と応じました。
黄川田氏は玉城氏との面談に先立ち、糸満市の平和祈念公園も訪れ、国立沖縄戦没者墓苑で献花しました。2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件から3年近く経過した中での沖縄訪問は、高市政権が基地問題で玉城知事との関係修復を図る意図が読み取れます。
「戦後80年、いまだに基地負担が続いてる。県民の願いを聞いてほしい」
「知事は県民の声を代表して発言してる。断念という強い言葉を使った」
「20項目の要望ですか。基地問題だけじゃなく、経済振興とか複合的な課題があるんだ」
「政府は対話に応じるっていうけど、辺野古工事は進み続けてるんだから、本気かどうか疑問」
「沖縄の過重な基地負担は確かに日本全体の問題。本土もしっかり受け止めるべき」
県民投票では7割超が反対、しかし移設計画は強行へ
辺野古移設を巡る県民の民意は明確です。2019年2月24日の県民投票では、辺野古沿岸部の埋め立てについて「反対」が7割を超えました。投票率は52.48%で、反対票は43万4273票。投票資格者数115万3591人の約4分の1を上回る圧倒的な反対意思が示されています。
玉城知事が「県民の理解が得られない」と表現するのは、この県民投票という民主的手続きの結果に基づいています。しかし現実には、この民意に関わらず、政府による工事は継続されており、県民投票から約6年経過した現在も辺野古の埋め立てが進行中です。
政府の防衛省は、従来から「普天間飛行場の返還は沖縄県民多数の願い」と述べており、現地での負担軽減の観点から辺野古移設を正当化してきました。確かに市街地の中心に位置する普天間飛行場は、危険性の除去が喫緊の課題であり、返還自体は県民の大多数が望んでいます。
県民世論のパラドックス、「普天間返還は望むが辺野古には反対」の矛盾
ここに浮き彫りになるのが、沖縄県民意識における根本的なパラドックスです。多くの沖縄県民にとって、普天間飛行場の「返還」という目標と「辺野古移設の反対」という立場が、同時に成立しているのです。
県民投票で7割超が反対した一方で、実際のところ、普天間飛行場をどこへ移設すべきか、あるいはまったく移設せずに返還するべきかについて、県民全体で統一的な代替案が存在しません。玉城知事は「県外・国外移設」を主張していますが、受け入れる自治体や国家の存在は明らかではありません。
この状況は、県知事と県民一般の間にも、認識の乖離が存在することを示唆しています。知事が「辺野古移設は県民の理解を得られない」と述べるのは、県民投票という手続きの結果を政治的に活用した表現と言えます。一方で、県民の日常生活における基地問題の関心度や、具体的な政策判断の深さまで、必ずしも知事の主張と一致しているとは限りません。
防衛省の見立て、移設は「負担軽減」であるという論理
防衛省は従来から、辺野古移設が基本的に沖縄の負担軽減につながると主張しています。具体的には、普天間飛行場の全機能を辺野古に移す「代替」ではなく「機能縮小」を伴う移設であり、航空機の飛行ルートも基本的に海上を通ることになる点を強調しています。
加えて、普天間飛行場返還後の跡地約476ヘクタール(東京ドーム約100個分)の活用により、宜野湾市をはじめとする沖縄のさらなる発展が期待できるとも述べています。沖縄県と宜野湾市も、この跡地利用に向けた計画を進めており、経済発展の道筋を描いています。
この観点からすると、政府にとって辺野古移設は「基地負担軽減」の施策であり、玉城知事の「断念要望」は、この基本的な政策方向と対立しています。
沖縄振興と基地問題の複合課題、解決への道筋は見えず
玉城知事が黄川田担当相に提出した20項目の要望は、基地問題だけに限定されません。経済振興、子ども子育て支援、雇用創出など、沖縄県が抱える包括的な課題が列挙されていると考えられます。このことは、知事がこれらの課題解決と基地問題の解決を、密接に関連するものと考えていることを示唆しています。
しかし、玉城知事の政治的主張「辺野古移設断念」が、沖縄県民全体の合意形成の結果なのか、あるいは政治指導者としての独立した政治判断なのかについては、説得的な説明がなされていません。県民投票という民意を政治的に活用しながらも、代替案を示さない知事の立場には、説明責任の課題があると言えます。
高市政権下での新しい沖縄政策がどのような形で展開されていくのか、基地問題と経済振興の課題がどう統合されるのかが注視されます。