2025-10-24 コメント投稿する ▼
玉城デニー知事が安保3文書前倒し改定に懸念表明、基地負担増を拒否―国連特別報告者のPFAS発言も受け
知事は「沖縄の基地負担が増えるようなことがあっては決してならない」と述べ、現行の安保3文書で既に示されている軍備増強計画が沖縄県民に十分な説明を伴わないまま進められてきたと指摘しました。 知事は現行の3文書の進捗や課題に関する十分な説明がなされないまま、前倒しありきで改定に向けた作業が進められることに大変な懸念を持っていると強調しました。
基地負担増を拒否、政府に丁寧な説明求める
沖縄県の玉城デニー知事は2025年10月24日、県庁内で定例会見を開き、自民党と日本維新の会が20日に締結した連立政権合意書に安保3文書の前倒し改定が明記されたことについて、強い懸念を表明しました。知事は「沖縄の基地負担が増えるようなことがあっては決してならない」と述べ、現行の安保3文書で既に示されている軍備増強計画が沖縄県民に十分な説明を伴わないまま進められてきたと指摘しました。
玉城知事は、2022年末に閣議決定された現行の安保3文書で、中国を念頭に置いた「抑止力」の強化を名目として、沖縄の島々への軍備増強が記載されたことに言及。その後、県が地元への丁寧な説明の実施や、他国攻撃能力を有するミサイルの沖縄への配備を行わないよう政府に求めてきたにもかかわらず、十分な応答がなされていないと述べました。知事は現行の3文書の進捗や課題に関する十分な説明がなされないまま、前倒しありきで改定に向けた作業が進められることに大変な懸念を持っていると強調しました。
「基地負担はこれ以上増やさないでほしい。沖縄は既に十分過ぎるほどの米軍施設を抱えている」
「政府は沖縄県民の声をちゃんと聞いているのだろうか。一方的に決められるのは納得できない」
「軍備増強よりも、子どもたちの教育費や医療費の方が優先じゃないか」
「私たちの命と暮らしを脅かすような政策に同意するわけにはいかない」
「国連での発言を受けて、政府は真剣に基地問題に向き合うべき時だ」
国連特別報告者の国連総会での発言を受け、政府の対応を監視
玉城知事は、国連人権理事会特別報告者であるマルコス・オレリャーナ(Marcos Orellana)氏が10月23日、ニューヨークの国連総会第3委員会(人権)で米軍基地関連の有機フッ素化合物(PFAS)汚染の深刻さを述べたことに言及しました。オレリャーナ氏は軍事施設と関連するPFAS汚染が米国やオーストラリア、日本の沖縄で報告されたと指摘し、人と環境を守るための対応を各国に求めています。
オレリャーナ氏は2024年11月に沖縄を視察し、普天間飛行場周辺の喜友名泉(きゆな・ちゅんなーがー)や嘉手納町の屋良ウブガーなど、高濃度のPFAS汚染が確認されている場所を調査しました。これらの湧き水は、沖縄県民にとって伝統的な儀式や日常生活で利用されてきた大切な水源です。かつて新生児の沐浴の儀式に使用されていた場所が現在、深刻な汚染によって利用できない状況になっていることから、文化的権利の効果的な享受が侵害されているとの懸念も示されています。
玉城知事は、「政府はオレリャーナ氏の国連総会での発言を真摯に受け止め、県が求める基地内への立ち入り調査の実現や原因究明に取り組んでいただきたい」と強調しました。沖縄県は2016年以降、複数の浄水場の水源からPFOSとPFOAなどのPFAS物質が検出され、約45万人の県民が汚染を知らされないまま曝露される可能性があったと指摘されています。基地内への調査立ち入りが実現せず、汚染源の特定や責任の追及が進まない状況が続いており、県民の不安は高まっています。
現行政策の課題が解決しないまま前倒し改定へ
玉城知事の発言の背景には、自民・維新連立政権の成立による政策環境の変化があります。これまでの自公連立体制では、ブレーキ役を担ってきた公明党が抜けたことで、防衛力強化を掲げる勢力が政権内で優位になるとみられています。安保3文書の前倒し改定は、国内総生産(GDP)比2パーセント以上への防衛費引き上げを念頭に置いており、沖縄の経済負担や基地集中のさらなる加速につながる可能性があります。
玉城知事は、現行の3文書で既に示されている課題、特に米軍基地周辺でのPFAS汚染や騒音被害に対する政府の対応が十分ではない現状を指摘します。県民の健康と環境を脅かす問題が解決しないうちに、新たな軍備配備計画が進められることは、政治の優先順位が国民生活ではなく軍事拡大にあることを物語っています。沖縄戦から80年が経った今も、沖縄県民は米軍基地による様々な負担を強いられており、これ以上の基地機能の強化や新たな軍事施設の配備は、県民生活をさらに逼迫させるものだと知事は警告しています。
基地負担軽減の実現に向けた県の決意
玉城知事は、基地負担の軽減を望む沖縄の強い要求をしっかり申し入れていくと述べ、引き続き政府との協議に臨む姿勢を示しました。同時に、国連という国際的な舞台でPFAS汚染などの沖縄の現状が共有されたことの意義を認識し、国際世論を背景にした問題解決への道を探る構えも見せています。
政府は国連での指摘を受けて、ようやく重い腰を上げるしかない状況が生まれつつあります。米軍基地のドイツ駐屯地では軍側の予算でPFAS浄化施設が設置されている一方で、沖縄では基地への立ち入り調査すら実現していない不公正さも、国際的な批判の対象になっています。玉城知事は、こうした国際的な圧力と県民の声を組み合わせることで、政府の姿勢変化を促そうとしています。