2025-10-09 コメント投稿する ▼
沖縄県議会 PFAS汚染「米軍基地由来」文言調整で意見書案見送り 支援要請は臨時会に持ち越し
意見書には「米軍基地由来」と明記する案が盛り込まれていたが、この文言を巡って与野党間の調整が難航したためである。 県議会は全会一致での採択を目指しており、臨時会で再協議する方針を確認した。 北谷浄水場では老朽化した活性炭の更新が必要になっているが、防衛省の米軍基地施設整備補助事業はこの費用を対象としていない。 このため県議会は、国に費用負担と支援を求める意見書を提出する方針を固めていた。
PFAS汚染「米軍基地由来」文言巡り調整 沖縄県議会で意見書案見送り
沖縄県議会は10月8日、PFAS(有機フッ素化合物)汚染対策に関する意見書案の提出を見送った。意見書には「米軍基地由来」と明記する案が盛り込まれていたが、この文言を巡って与野党間の調整が難航したためである。県議会は全会一致での採択を目指しており、臨時会で再協議する方針を確認した。
PFASは、発がん性や免疫機能低下が懸念される化学物質で、泡消火剤などに含まれてきた。県企業局が運営する北谷浄水場では、基準値を超える濃度が検出され、現在は高機能粒状活性炭による除去が行われている。
国の補助が使えない現実
北谷浄水場では老朽化した活性炭の更新が必要になっているが、防衛省の米軍基地施設整備補助事業はこの費用を対象としていない。補助事業は基地の直接整備や関連施設への補助に限られるため、汚染対策や浄水更新には適用できないという。
このため県議会は、国に費用負担と支援を求める意見書を提出する方針を固めていた。だが、「基地由来」という表現を明記すると、国が米軍に責任を問う形になるとの懸念が一部議員から上がり、与党側と野党側の意見が一致しなかった。
「米軍基地が原因と書くと、国が補助できなくなるのでは」
「原因をあいまいにしては、県民の理解は得られない」
「被害の実態を正確に書かずに支援だけ求めるのは矛盾している」
「全会一致を狙うなら、責任の所在をぼかすしかない」
「政治的配慮より、住民の安全を優先してほしい」
政治判断と制度のはざま
与党は、基地の影響を明記すべきだと主張する一方、自民党系の一部議員は「事実関係の確定がない段階で断定的な表現は避けるべきだ」と反発した。結果として、意見書案は見送られ、文言を再調整することになった。
今回の判断は、地方政治が抱える二重の制約を映している。ひとつは、国の補助制度が基地との関連を避けるよう運用されていること。もうひとつは、政治的配慮が地方議会の意思表明に影響を与える構図である。「支援を得るためには原因を明示できない」という矛盾が、議場の空気を重くした。
住民の安全と国の責任
PFAS問題は、単なる環境課題にとどまらない。県民の飲料水に直結する問題であり、基地周辺では健康不安を訴える声も多い。県は国に対して、基地内立ち入り調査や情報公開を繰り返し要請しているが、いまだ十分な対応は得られていない。
国が基地起因の可能性を認めなければ、費用支援の枠組みも狭まる。今回の意見書案見送りは、地方自治体が国の制度と政治のはざまで揺れる現実を象徴している。県議会は今後、臨時会で再び案を提出し、全会一致を目指す見通しだ。