2025-12-05 コメント投稿する ▼
藤沢市宮原モスク建設 38件の反対陳情を市議会が一括却下
神奈川県藤沢市宮原地区で計画が進むイスラム教のモスク建設について、2025年12月4日、藤沢市議会の建設経済常任委員会は、住民らから出された請願・陳情のうち、モスクの開発許可取り消しや交通安全対策を求める計39件(請願1件、陳情38件)をすべて不採択、あるいは趣旨不了承と判断しました。
藤沢市のモスク建設問題
市議会が反対陳情を一括で拒否 住民の失望と議会の判断
藤沢市議会での判断
神奈川県藤沢市宮原地区で計画が進むイスラム教のモスク建設について、2025年12月4日、藤沢市議会の建設経済常任委員会は、住民らから出された請願・陳情のうち、モスクの開発許可取り消しや交通安全対策を求める計39件(請願1件、陳情38件)をすべて不採択、あるいは趣旨不了承と判断しました。
請願のなかでも特に注目されたのは、「礼拝堂建設に伴う交通安全対策の実施」を求める請願でした。多数の住民が懸念する渋滞や路上駐車、歩行者への安全確保などを求めるものですが、委員会ではこれも満場一致で却下されたと複数の傍聴報告が伝えられています。
この結果、モスク建設は「議会を通じた制約なし」の状態となり、住民の実質的な反対運動は、行政許認可の後追いという形にとどまりました。
計画の概要と市の立場
このモスク建設は、藤沢市宮原3344番1の民有地を事業主体とするもので、住民説明会の義務が生じる「特定開発事業」ではなく、「開発事業」として都市計画法に基づき許可された事案です。市の説明によれば、該当地は市街化調整区域ですが、申請内容は法の基準に適合しており、開発許可を交付済みです。市が建設主体ではなく、補助金も交付されておらず、公的な財政負担はないとしている点も明らかです。
一方、建築に着手するにはさらに建築基準法に基づく確認(建築確認申請)が必要で、事業者が適正な手続きを踏めば建物を建てることは合法とされています。許可や確認をいったん受けた後に、恣意的に取り消すことは原則として認められない、という市の立場も示されています。
住民の懸念と反対運動の広がり
このモスク建設を巡っては、署名活動が広がりを見せています。インターネット上では「モスク建設反対」の署名が始まり、開始から数日で1万筆を超え、のちに2万〜3万筆規模にまで達したとの報告があります。
住民側の主張は、おおむね以下のようなものです。
* 礼拝時の大音量による騒音や、礼拝者の増加による交通渋滞、路上駐車の増加。
* 駐車場確保や誘導員配置など、十分な交通安全対策がなされる保証がない。
* モスク建設が地域の生活環境や治安に与える影響。
* 土葬など、文化・慣習の違いを伴う葬儀習慣への懸念。
こうした声を背景に、反対派住民らは陳情・請願を提出し、地域での説明会や行政との対話を求めてきました。
SNS上でも多くの市民が反対や不信を表明しています。以下は投稿の一例です。
「住民の声を無視された気分。どうして話だけ聴いてくれないの?」
「渋滞やゴミ、治安不安――モスクができたら怖くて子ども歩かせられない」
「説明会もほとんどなかった。こんな大事な話がなぜ秘密裏に進むのか」
「請願を全部却下されたって、俺たちの声って何だったんだ」
「モスク建設で街の雰囲気変わるなら引っ越す人も出ると思う」
これらの声には、「自分たちの生活環境がないがしろにされた」という深い失望感がにじんでいます。
なぜ議会は「不採択」を選んだか
今回、議会が陳情・請願を却下した理由として、いくつか考えられるものがあります。
第一に、すでに都市計画法などに基づく手続きで開発許可を出しており、法的には問題なしと判断されたことが大きいです。特定開発事業ではなく、民間による一般的な開発事業という扱いが前提であり、宗教施設だからといって特別扱いすることは難しいという法秩序尊重の立場です。
第二に、請願・陳情の内容が「モスクだから」「イスラムだから」といった宗教的・文化的な偏見や懸念に強く依拠する可能性が高く、議会として採択することで地域の分断やヘイトにつながるリスクを避けたという判断かもしれません。ある市議は本件への関与を否定する声明を出しており、政治的な色を明確にすることを回避する意図も指摘されています。
第三に、交通安全対策を求める請願であっても、特定の事業者にだけ条件を課すことは公平性や法の下の平等の観点から慎重にならざるを得ない、という行政手続きとの整合性の問題があります。
しかしながら、この判断は住民の「安心・安全」「地域の生活環境」を重視する声を切り捨てたように映り、多くの反発を招いています。
今後の注目点と議会・行政への課題
今回の決定は、モスク建設を巡る議論が一段落したことを意味するものではありません。以下の点が、今後の焦点となるでしょう。
まず、事業者による建築確認申請の内容や、実際の建設後の運営方法がどのようになるかが重要です。駐車場の配置、礼拝時のアクセス、騒音対策、礼拝者のマナー管理など――住民の懸念に対する対策が実効あるものかどうかが問われます。
次に、行政と住民双方にとって透明性の確保です。説明会の実施、周辺住民への事前告知、定期的な情報公開など、信頼を回復するための手続きが求められます。
また、宗教施設という性質を理由に、地域住民の声や文化的・社会的な懸念をただ排除するのではなく、共生と安全を両立させる制度設計が今後問われるでしょう。
最後に、こうした事案が全国各地で起こる可能性がある点です。住民の生活権と宗教の自由のバランスをどうとるかは、単なる藤沢だけの問題ではなく、日本全体の自治体レベルの課題です。
藤沢で起きた今回の決定は、多文化共生と地域の安心・安全をどう両立させるか、その難しさと重要性を改めて示すものになりました。