ナフサ在庫20日分の衝撃 ホルムズ封鎖が医療・物流・食品包装に連鎖

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ナフサ在庫20日分の衝撃 ホルムズ封鎖が医療・物流・食品包装に連鎖

ホルムズ海峡の事実上の封鎖から1か月が経過した2026年3月30日現在、石油化学の根幹原料であるナフサ(プラスチックなどの原料となる粗製ガソリン)の供給ひっ迫が、日本経済の広範な分野に連鎖しつつあります。本誌の取材と業界調査の集計によると、日本標準産業分類の中分類99のうち少なくとも21に影響が及び、さらに5つの中分類が「次の波」の予備軍として待ち構えています。問題はその広さだけでなく、医療用プラスチックは数週間、汎用樹脂や食品包装材は2〜3か月という、切迫したタイムリミットにあります。

石油備蓄を放出しても届かない ナフサだけが守られない理由


政府は2026年3月26日から国家備蓄の放出を開始し、民間・産油国共同備蓄とあわせて計45日分、8000万バレルを供出する方針を打ち出しました。しかし、この政策には根本的な盲点があります。石油備蓄は守れても、ナフサは守れないという制度上の欠陥です。

日本はエチレン原料の95%をナフサに依存し、そのナフサ輸入の4割超を中東から調達しています。ところが、ナフサの国内在庫はわずか20日分しかありません。石油備蓄法の対象は燃料製品が優先で、国家備蓄放出で元売り4社に引き渡された原油は、まず製油所でガソリンや軽油に精製されます。化学原料であるナフサへの配分は後回しになり、政策が届くのは4月中旬以降になる見通しです。

その間にも減産は進んでいます。国内エチレン生産設備12基のうち6基がすでに減産に入り、残る6基のうち3基は定期修理で停止中です。三菱ケミカルグループは茨城事業所で3月6日からエチレンの稼働率を下げ、紙おむつ原料・塗料原料・粘着剤の値上げを発表しました。出光興産は千葉・山口の2拠点で16日から減産を開始し、三井化学も千葉・大阪の2基でポリエチレン・ポリプロピレンを4月1日納入分から1キロあたり90円以上値上げすると発表しています。

「21の中分類」への連鎖波及 医療・物流・食品包装に時間がない


本誌の取材で確認された影響業種は、製造業11分野、運輸業5分野、建設業・電気ガス・生活関連など5分野の計21中分類に上ります。特に深刻なのは医療業(中分類83)です。全国約34万5000人の透析患者に使われる透析用プラスチックの在庫は数週間分とされており、関連資材のひっ迫は医療現場全体の懸念材料となっています。

プラスチック製品(中分類18)と食品包装を含むパルプ・紙(中分類14)の在庫は2〜3か月で、和歌山の製造現場では「その先は生産ラインが止まる」との声が上がっています。建設業(中分類06〜08)でも日本ペイントのシンナー75%値上げ、信越化学工業の塩ビ樹脂2割値上げが工事現場を直撃しており、在庫が切れる4〜5月が分水嶺です。

運輸業では5中分類すべてが影響を受けています。軽油価格は1週間で1リットルあたり28円上昇し、全国平均で178円を超えました。帝国データバンクの試算では、燃料費が2025年比3割上昇した場合、運輸業の営業利益は平均8割消失し、4社に1社が赤字に転落します。中小企業庁の調査ではエネルギー費の荷主への転嫁率が33.9%にとどまっており、50台以下の事業者は平均値ベースで赤字圏に沈んでいます。

「ガソリン代だけじゃなく、食品の包装フィルムまで足りなくなるなんて、怖すぎる」
「透析患者の家族です。医療資材が数週間で底をつくかもしれないって、今すぐ対策してほしい」
「中小のトラック会社はもう限界。軽油が高くて運べば運ぶほど赤字になってる」
「政府の備蓄放出は石油のためだけで、ナフサは後回し? 産業の根っこが腐ってるのに」
「ナフサって言葉を今回初めて知ったけど、これが止まると日本社会が止まるんだと知って震えた」

野村総研試算 スタグフレーション現実化の危機 政府のナフサ対策は遅れている


ドバイ原油は2026年3月26日時点で1バレル130.93ドルに達しており、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストが試算の前提とした140ドルとの差は10ドルまで縮まっています。原油が140ドルになった場合、GDPを年0.65%押し下げ、物価を年1.14%押し上げるというのが同氏の試算です。景気後退と物価上昇が同時に起きる「スタグフレーション」が現実味を帯びてきました。

政府は代替調達ルートの確保も進めており、ホルムズ海峡を通らないUAEのフジャイラ港経由のタンカーが3月28日に日本に到着し、4月5日にも続く見通しです。経済産業省によると、米国・南米などからの輸入と国内精製分を合わせ、ナフサは国内需要の約2か月分が確保できる見込みとされていますが、川下製品の在庫状況は業種によって大きく異なります。

今、物流事業者や製造業が取るべき対応は明確です。燃料サーチャージの即時改定交渉、樹脂パレットや包装資材の在庫確認、そして荷主との「いつまで供給・輸送できるか」の率直な情報共有の3点です。政府は石油とガソリンを守る施策は打ちましたが、産業を支えるナフサの具体的な確保策はまだ示されていません。現在の物価高はこれまでの数十年にわたる経済政策の失敗が蓄積した結果であり、今回のホルムズ危機はその構造的脆弱性を一気に顕在化させました。財政出動や給付金よりも、エネルギー調達の多様化と減税を通じた実効性ある対策を急ぐべき局面です。

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まとめ
  • ホルムズ封鎖から1か月で、ナフサ供給ひっ迫が産業分類21中分類に連鎖していることが確認された
  • ナフサ国内在庫は約20日分で、政府の備蓄放出はガソリン・軽油優先のため化学原料には届かない
  • 三菱ケミカル・出光興産・三井化学などが相次ぎ減産し、不可抗力(フォースマジュール)を宣言した企業もある
  • 医療用透析プラスチックは数週間、食品包装・汎用樹脂は2〜3か月、建設資材は4〜5月が分水嶺
  • 運輸業では軽油が全国平均178円超となり、中小事業者の4社に1社が赤字転落の瀬戸際
  • ドバイ原油は130.93ドルに達し、野村総研試算の140ドル前提との差は10ドルまで縮まり、スタグフレーションが現実味を帯びている

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2026-03-30 14:11:43(藤田)

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