米国は「抑止力」と割り切りを 国際政治学者が語る外交的したたかさ

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米国は「抑止力」と割り切りを 国際政治学者が語る外交的したたかさ

国際情勢の不確実性が増大する中で、日本は、自国の安全保障と国益を最大化するために、ある種の「割り切り」を迫られています。 それは、米国との同盟関係を維持しつつも、あらゆる状況下で米国と完全に歩調を合わせるのではなく、自国の安全保障と国益を最優先するという、主体的な決断です。

2026年3月21日

2026年3月、高市早苗首相とトランプ前米大統領(第2次政権)との間の首脳会談が、国際社会の注目を集めました。この会談を機に、国際政治学者の鈴木一人氏(東京大学公共政策大学院教授)は、激動する国際情勢における日本の外交戦略のあり方について、鋭い分析を展開しています。そこには、単なる同盟関係の維持にとどまらない、自国の国益を最大化するための「外交的したたかさ」の重要性が浮かび上がってきます。(聞き手・宮脇稜平氏)

中東情勢と自衛隊派遣の法的・現実的限界


米国とイスラエルによるイランへの攻撃が継続される可能性が示唆される中、ホルムズ海峡周辺の安全保障問題は、依然として国際社会の火種となっています。この地域は世界のエネルギー供給の要衝であり、その安定は各国の経済活動に直結します。トランプ政権時代から日本に課せられてきた、この海峡への自衛隊艦船派遣要求は、日本にとって依然として難しい判断を迫るものです。

鈴木氏は、現在の日本の法制度や憲法に厳密に照らし合わせると、自衛隊の艦船派遣は「基本的にできない」と断言します。もし仮に派遣となれば、それは米国の軍事行動を支援すると見なされ、イランとの友好関係を決定的に損なうだけでなく、自衛隊員が直接的な標的となるという、極めて深刻なリスクを招くからです。

欧州諸国も同様に、この地域への軍事的な関与には慎重な姿勢を示しており、トランプ大統領が掲げる、ある種の「思いつき」とも取れるこの方針は、現実的な制約に直面し、国際情勢の変化とともに見直される可能性が高いと鈴木氏は指摘します。

中国の台頭と米国の経済的脆弱性


今回の首脳会談は、トランプ氏の中国訪問が延期されたものの、両国間で中国への対応について、水面下での緊密な意思疎通が図られたものと見られています。

トランプ氏は、米国が中国からのレアアース(希土類)輸出規制強化という措置に直面したことで、中国に対する経済的な脆弱性を改めて痛感しています。

レアアースは、米国の最先端技術や防衛産業に不可欠な基幹資源であり、その安定供給が途絶えれば、米国の安全保障そのものが揺るぎかねない事態に陥りかねません。

この経験から、トランプ氏には、経済的なリスクを回避し、中国との関係を一定程度安定させたいという強い意図があることがうかがえます。

国際政治学におけるパワーポリティクスの観点からも、経済力が安全保障の基盤となることは明らかであり、日本が経済安全保障の面で中国に対し劣勢に立たされたままでは、米国の対中抑止力も、必ずしも盤石なものとは言えなくなるでしょう。

台湾有事「あいまい戦略」の揺らぎ


米国は、国家防衛戦略の中心に、いわゆる「第1列島線」(九州・沖縄から台湾、フィリピンに至る線)で中国の軍事的台頭を抑止するという考え方を据えています。

これは、軍事的なプレゼンスを高めることで、中国の行動を抑制しようとする伝統的な安全保障政策です。しかし、鈴木氏は、前述のような中国の経済的優位性や、米国自身の経済的脆弱性が顕在化する中で、この抑止戦略が有効に機能するかについては疑問を呈します。

特に、台湾有事が発生した場合に米国が介入する可能性を示唆する「あいまい戦略」についても、レアアース供給のような経済的リスクが前面に出てきた場合、米国は迅速な介入に踏み切れない恐れがあるとの見方を示しました。

すでに、米国が台湾の防衛を確実に支援することが困難になりつつある、というのが国際政治の現実なのだと鈴木氏は分析します。安全保障のジレンマを解消するには、軍事力だけでなく、経済的な相互依存関係の巧みな管理も不可欠なのです。

日本に必要な「割り切り」と主体性


こうした国際情勢の不確実性が増大する中で、日本は、自国の安全保障と国益を最大化するために、ある種の「割り切り」を迫られています。

それは、米国との同盟関係を維持しつつも、あらゆる状況下で米国と完全に歩調を合わせるのではなく、自国の安全保障と国益を最優先するという、主体的な決断です。

リベラルな視点からは、軍事力だけに依存しない、平和外交や国際協調を通じた安全保障の構築も重要視されます。

例えば、ホルムズ海峡への自衛隊派遣要求に対しても、感情論や「米国への配慮」といった側面にとらわれることなく、法的な制約や自衛隊員の安全、そしてイランとの関係悪化といったリスクを冷静に評価し、派遣できない理由を明確かつ毅然(きぜん)として説明する姿勢が求められます。

これは、相手国との対話を重視し、軍事的緊張を回避するという平和外交の原則にも合致するものです。

「抑止力」としての日本の戦略的役割


国際社会におけるパワーバランスが流動化する現代において、日本は、単なる同盟国として米国に追随するだけではなく、自らが「抑止力」の一翼を担う主体的な役割を果たすことが期待されています。

それは、軍事力だけに頼るのではなく、経済力、技術力、そして巧みな外交交渉力を総合的に駆使し、地域の安定に貢献することです。

特に、中国との経済的な依存関係を理解しつつ、経済安全保障の強化を図ることは、日本が国際社会で主体性を発揮するための鍵となります。

トランプ政権のような予測不能な要素が増す中で、日本は、自国の立ち位置を明確にし、国益に基づいたしたたかな外交を展開していく必要があります。

感情や過去の慣習にとらわれるのではなく、現実の脅威と機会を直視し、戦略的に行動することが、これからの日本外交には不可欠なのです。

高市首相がトランプ前大統領に「世界の平和に貢献できるのはドナルドだけ」と伝えたとされる発言は、一見するとトランプ氏への配慮に満ちた言葉ですが、その裏には、自国の国益を最大限に守りながら、

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2026-03-21 07:23:42(さかもと)

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