2026-03-17 コメント投稿する ▼
ホルムズ海峡への自衛隊派遣、憲法上の制約で困難 高市首相が答弁
日本政府が中東・ホルムズ海峡への自衛隊派遣に慎重なのは、戦闘地域での活動に憲法や法制上の制約があるためです。高市早苗首相は2026年3月16日の参院予算委員会で「できること、できないことを整理している。私が責任を持って決めていく」と語りましたが、トランプ米大統領の意向や他国の出方を見極めつつ、ホルムズ海峡から離れた海域や戦闘収束後の派遣も視野に、実現可能な貢献策の検討を急いでいます。
海上警備行動は「法的には難しい」
参院予算委では、自衛隊法の「海上警備行動」の可否に焦点があたりました。高市首相は、警察権に基づき海上の治安を維持する海警行動を発令し、護衛艦にホルムズ海峡で民間船舶を護衛させる考えがあるかを問われ、「武器使用の相手方として『国または国に準ずる組織』が想定される場合、派遣できない」と否定的な考えを示しました。小泉進次郎防衛大臣も「海上警備行動を発令して自衛隊に対応させることはない」と明言しました。
「憲法の制約で動けない」
「法的には非常に難しい」
「米国の要請にどう応えるか」
「戦闘地域には派遣できない」
「できることは限られている」
政府は2009年に海警行動を発令し、ソマリア沖・アデン湾で護衛艦による船舶護衛を始めました。これは地元の海賊から船を守るための活動で、国家主体(国または国に準ずる組織)が相手ではありませんでした。米国・イスラエルとイランとの国家間の戦闘が続く今のホルムズ海峡とは、状況が全く異なります。
仮に今回、護衛艦を派遣し、自衛隊とイラン側が戦闘状態となった場合、日本が憲法9条の禁じる武力行使を行ったと評価されうります。イランが対米攻撃の一環でまいた機雷を停戦前に除去する行為も、イランへの武力行使にあたりうります。戦闘が続く限り、ホルムズ海峡への派遣は難しいというのが政府の立場です。
集団的自衛権行使も高いハードル
憲法9条は、自衛のための武力行使を例外的に認めているというのが政府解釈です。日本がイランから直接攻撃を受ければ、個別的自衛権で反撃できます。ペルシャ湾では今回、商船三井のコンテナ船に穴が開く被害が確認されましたが、政府は損傷の原因や攻撃の有無を精査中で、「現時点で日本がイランから武力攻撃を受けたと判断する材料はない」(政府関係者)としています。
2015年成立の安全保障関連法を適用すれば、米国への集団的自衛権を行使し、戦時下の機雷掃海や船舶護衛も可能になります。ホルムズ海峡封鎖で原油輸入が途絶し、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」を認定することが前提です。
しかし、政府は2015年の国会審議で、「典型的な先制攻撃をした国に我が国が集団的自衛権を発動することはない」(当時の安倍晋三首相)と繰り返し表明した経緯があります。法整備に携わった元防衛省幹部は、「米国が今回のような先制攻撃を仕掛ける展開は全く想定していなかった。安保関連法の適用は難しいのでは」と語っています。
情報収集名目での派遣が現実的か
ホルムズ海峡への派遣より現実的とみられるのが、情報収集名目で周辺海域に艦艇を派遣する方法です。第1次トランプ政権下の2020年、米イラン間の緊張の高まりを受け、防衛省設置法(調査・研究)を根拠に派遣しました。同様の手法で艦艇を派遣し、戦闘収束後に海警行動を発令してホルムズ海峡に向かわせる案もあります。
高市首相は参院予算委で、自衛隊による機雷除去や船舶護衛、他国軍への後方支援のほか、情報収集目的での艦艇派遣を選択肢に挙げました。ただし、首相は「護衛艦の派遣はまだ一切決めていない」と強調し、小泉防衛大臣も「現時点で自衛隊の派遣は考えていない」と答弁しました。
木原稔官房長官は記者会見で「米国側から具体的な派遣要請があるわけではない」と説明しました。日本政府はトランプ大統領の発信の真意を慎重に見極める方針です。
19日の日米首脳会談が焦点
高市首相は3月15日、秘書官を首相公邸に呼び中東情勢について約2時間聴取しました。日本政府関係者は「米国が具体的に何を求めているのか把握する必要がある。他国の動きも見なければいけない」と情報収集を急ぐ考えを示しました。別の関係者は「トランプ氏にどう答えるか、早急に検討しなければならない」と語りました。
高市首相は19日にホワイトハウスでトランプ大統領と会談する予定で、イラン情勢への対応が主要議題の一つとなる見通しです。首相は参院予算委で、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃に関し「詳細な事実関係を十分把握する立場にないことから、確定的な法的評価は行っていない」と重ねて強調し、首脳会談で「国際法上の評価を議論するつもりはない」とも語りました。
政府は従来、「違法な武力行使など、国際法上認められない行為を行っている国を支援しない」との見解を示しています。米国の先制攻撃への法的評価を避ける姿勢は、仮に自衛隊派遣を検討する際の障害となる可能性があります。
自民党の小林鷹之政調会長は3月15日のNHK番組でホルムズ海峡への自衛隊の派遣に慎重な立場を示し、「法理上、可能性を排除しないが紛争が続いている状況では慎重に判断すべきだ。非常にハードルは高い」と指摘しました。憲法と法律の制約の中で、日本が何をどこまでできるのか、難しい判断が迫られています。