2026-03-17 コメント投稿する ▼
第5次犯罪被害者基本計画を閣議決定 被害者手帳導入で負担軽減へ
政府は2026年3月17日、2026年度から5年間の犯罪被害者や遺族らのための施策や対応方針を定めた「第5次犯罪被害者等基本計画」を閣議決定しました。支援を受ける際の精神的負担を減らす「被害者手帳」の導入や、一元的に支援を受けられるワンストップサービスの体制整備などを盛り込みました。現行計画より28多い307の施策をまとめ、犯罪被害者支援の一層の充実を目指します。
「何度も説明する負担」を軽減
新たな計画では、第1次計画から20年間の取り組みを整理した上で、損害回復や経済的支援、心身被害の回復・防止、刑事手続きへの関与拡充、支援の体制整備、国民の理解増進の五つを重点課題と記載しました。支援団体や当事者からのヒアリングをもとに、現行の第4次基本計画の279施策から28増えて、307の施策をまとめました。
具体的には、被害状況や過去の支援内容を記録し、何度も説明する負担を軽減する「被害者手帳」の導入を明記しました。犯罪被害者は、警察、検察、裁判所、病院、支援団体など様々な機関を訪れる際、そのたびに同じ被害状況を説明しなければならず、精神的な負担が極めて大きいという問題がありました。
「同じ話を何度もさせないで」
「たらい回しにされた」
「支援が途切れてしまった」
「地域によって支援内容が違う」
「どこに相談すればいいかわからない」
被害者手帳には、被害の概要、支援を受けた機関や内容、必要な配慮事項などが記録され、支援機関の間で情報を共有することで、被害者が何度も同じ説明をする必要がなくなります。また、各機関が支援経過を共有する「カルテ」の導入も明記されました。
ワンストップサービスで「たらい回し」防止
第5次基本計画では、たらい回しや支援の漏れを防ぐため、支援コーディネーターを中心に各機関をつなぐワンストップサービスを進めるとしました。人材育成や財政面の補助で地域間の格差解消を目指します。
警察庁は2024年に「犯罪被害者等支援におけるワンストップサービス体制構築・運用の手引き」を作成し、全ての地域でワンストップサービス体制が早期に構築・運用されるよう取り組んできました。犯罪被害者等からは「置かれた状況に応じた支援を受けられていない」「地域によって支援内容に差がある」などの切実な声が上がっていました。
ワンストップサービスとは、犯罪被害者が一つの窓口に相談すれば、必要な支援を総合的に受けられる仕組みです。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは既に全国で運用されていますが、第5次基本計画では、これをあらゆる犯罪被害者に拡大します。
支援コーディネーターが中心となって、警察、医療機関、法律相談、心理カウンセリング、経済的支援などの各機関をつなぎ、被害者のニーズに応じた支援を一元的に提供します。被害者は複数の機関を自ら訪ね歩く必要がなくなり、心身の負担が大幅に軽減されます。
犯罪被害給付制度も抜本的強化
第5次基本計画では、経済的支援の充実も盛り込まれています。犯罪被害給付制度については、2023年6月の「犯罪被害者等施策の一層の推進について」で抜本的強化に関する検討を行うこととされており、警察庁において2023年から2024年にかけて検討が行われました。
2024年の政令改正により、他の公的給付の最低給付額を参考に、遺族給付金の最低額が引き上げられました。また、2024年の民法及び民事執行法の改正により、養育費については先取特権の付与や執行手続のワンストップ化など、履行確保に向けた見直しが図られています。
性犯罪・児童虐待などへの対応強化
第5次基本計画では、性犯罪・性暴力対策、ストーカー対策、児童虐待防止対策など、個別の被害類型に着目した施策も取りまとめられています。
近年の施策として、2023年3月の「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」、2024年4月の「こども・若者の性被害防止のための総合的対策」、2022年7月改訂の「ストーカー総合対策」、2022年9月の「児童虐待防止対策の更なる推進について」などがあり、これらを踏まえて犯罪被害者等の精神的・身体的被害の回復に向けた取り組みを強化します。
性犯罪・性暴力事案、配偶者からの暴力事案、児童虐待事案などは、その犯罪の性質から潜在化しやすく、また、加害行為が繰り返し行われることが少なくないため、犯罪被害者の精神的・身体的被害が深刻化する傾向があります。
計画期間は2026年度から5年間
第5次基本計画の計画期間は、2026年4月1日から2031年3月31日までの5年間です。計画に盛り込まれた施策については、その進捗状況、犯罪被害者等を取り巻く環境の変化等を踏まえ、定期的に見直しを行います。
犯罪被害者等基本法は2004年に制定され、2005年12月に第1次基本計画が閣議決定されました。以降、約5年ごとに計画が見直されてきました。第5次基本計画は、これまでの20年間の取り組みを総括し、新たな課題に対応するためのものです。
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るという目的を達成するため、被害者手帳やワンストップサービスなど、実効性のある施策の実施が求められています。全ての犯罪被害者等が、尊厳を持って支援を受けられる社会の実現に向けて、政府の取り組みが注目されます。