2026-02-24 コメント投稿する ▼
カナダ・カーニー首相の訪日と「ミドルパワー」の結束:トランプ政権下での新たな生存戦略
カナダはこれらの資源を豊富に持つ資源大国であり、日本にとっては安定した供給源を確保する絶好のパートナーです。 カナダ、日本、オーストラリア、インドといった国々が連携することで、大国の意向に左右されすぎない独自の経済圏や安全保障の枠組みを維持しようとしています。
カナダ首相の訪日と揺らぐ国際秩序
今回の訪日の背景には、カナダが直面している深刻な外交上の課題があります。2026年現在、米国ではトランプ政権が貿易保護主義的な政策を強めており、隣国であるカナダとの間でも経済的な摩擦が激化しています。これまでカナダは経済の大部分を米国に依存してきましたが、その前提が揺らぎ始めています。カーニー首相が1月のダボス会議で「ルールに基づく国際秩序という『美しい物語』は終わった」と述べたのは、これまでの国際的な決まり事が通用しなくなった現状への強い危機感の表れです。米国一辺倒ではない、新しいパートナーシップの構築がカナダにとって急務となっているのです。
重要鉱物とエネルギー:経済安全保障の強化
首脳会談の主要な議題として挙げられているのが、重要鉱物やクリーンエネルギー分野での協力です。電気自動車(EV)のバッテリーや半導体の製造に欠かせないリチウムやコバルトといった重要鉱物は、現在、特定の国への依存がリスクとなっています。カナダはこれらの資源を豊富に持つ資源大国であり、日本にとっては安定した供給源を確保する絶好のパートナーです。一方、カナダにとっても、日本の高い技術力や投資を呼び込むことで、自国の資源産業を活性化させたいという狙いがあります。この相互補完的な関係は、両国の経済安全保障を強化する大きな柱となるでしょう。
「ミドルパワー」の結束を呼びかけるカナダの狙い
カーニー首相が提唱する「ミドルパワー(中堅国)の結束」という概念にも注目が必要です。これは、米国や中国のような超大国ではないものの、一定の経済力や外交力を持つ国々が手を取り合い、国際社会の安定を図ろうという考え方です。カナダ、日本、オーストラリア、インドといった国々が連携することで、大国の意向に左右されすぎない独自の経済圏や安全保障の枠組みを維持しようとしています。カーニー首相が今回の外遊先にこれら3カ国を選んだことは、まさにこのミドルパワーによるネットワークを具体化しようとする動きに他なりません。
高市政権との連携とインド太平洋の安定
日本側にとっても、この連携は極めて重要です。高市首相が進める「経済安全保障」の強化において、カナダとの協力は欠かせない要素です。また、安全保障分野では「自由で開かれたインド太平洋」の維持が共通の目標となっています。カナダは近年、インド太平洋地域への関与を強めており、日本の海上自衛隊との共同訓練や、北朝鮮の船舶による違法な物資の積み替え(瀬取り)の監視活動などでも協力しています。今回の会談では、食料安全保障も含めた幅広い分野での協力が議論される見通しであり、日加関係は「資源の供給」という枠を超えた、戦略的なパートナーシップへと進化しようとしています。
不確実な世界における多角化外交の行方
今後の予測として、カナダは米国への経済依存度を下げ、日本を含むアジア諸国との貿易をさらに拡大させていくでしょう。これは日本にとっても、北米における安定した拠点を確保することを意味します。しかし、この「ミドルパワーの結束」が実際にどれほどの対抗軸となり得るかは、今後の具体的な投資や共同プロジェクトの進展にかかっています。世界的な不確実性が高まる中で、日本とカナダが「自分たちで制御できること」に焦点を当て、実利に基づいた協力を積み重ねていけるかどうかが、両国の将来の繁栄を左右する鍵となるはずです。