2025-12-11 コメント投稿する ▼
政府が防衛装備移転三原則5類型を来春撤廃へ 同志国支援強化と国内防衛産業振興で中国抑止力向上
政府・与党は防衛装備移転三原則の運用指針で装備品の輸出を制限してきた「5類型」を2025年春にも撤廃する方向で調整に入りました。この決定により日本の防衛産業は大きな転換点を迎え、同志国支援の強化と国内防衛産業の競争力向上が期待されます。
5類型撤廃で殺傷能力ある武器の輸出が可能に
防衛装備移転三原則の運用指針では、これまで輸出可能な装備品を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型に限定してきました。しかしこの制限が同志国への支援や国内防衛産業の足かせとなっていました。
5類型に基づく実際の輸出実績は、フィリピンへの警戒管制レーダー1件のみという低調ぶりでした。一方で同盟国・同志国からの自衛隊装備品への関心は高く、フィリピンは防空ミサイルに関心を示し、ニュージーランドも護衛艦導入の意向を日本側に伝えています。インドネシアも中古潜水艦の取得に意欲を見せています。
小泉進次郎防衛相は「撤廃を進めていかなければならない」と明言し、輸出拡大が「世界の秩序を回復させる重要なツールになる」として必要性を強調しました。
自維連立合意で2026年通常国会中に実現
自民党と日本維新の会の連立政権合意書には「2026年通常国会において防衛装備移転三原則の運用指針の5類型を撤廃する」と明記されました。この合意により政策転換は既定路線となっています。
「これまで5類型が足枷になっていたが、輸出拡大できれば各国との運用面の連携も深まる」
「他の国の防衛力増強が加速度的に進んでいる中で日本だけが遅れるわけにはいかない」
「世界の秩序を回復させる重要なツールとして防衛装備移転をさらに推進することが必要」
「国内防衛産業の基盤強化には海外への販路拡大が不可欠だ」
「中国の脅威に対抗するには同志国との装備協力が急務である」
政府関係者や防衛産業からは5類型撤廃を求める声が高まっています。
中国への抑止力強化と防衛産業振興を両立
5類型撤廃の最大の狙いは、東・南シナ海で威圧的な行動を強める中国への抑止力強化です。インド太平洋地域の同志国に日本製の防衛装備品を輸出できれば、各国の防衛力向上を通じて地域全体の安定に貢献できます。
現在オーストラリアとは海上自衛隊の「もがみ型護衛艦」をベースにした能力向上型艦船の共同開発に取り組んでいます。5類型撤廃により、このような国際協力がさらに拡大することが期待されます。
国内防衛産業の観点では、これまで防衛省向けが中心だった企業にとって海外市場への道が開けます。令和6年度の調達実績では三菱重工業が1兆4567億円、川崎重工業が6383億円など大手企業が主体でしたが、海外に販路が広がれば新興企業の参入も期待できます。
厳格な輸出管理で歯止めを確保
一方で殺傷能力のある武器の輸出拡大には慎重な対応が必要です。政府は無制限な武器輸出を防ぐため、輸出の際に閣議決定を義務付ける案なども検討しています。
運用指針の見直しには法改正は不要で、国家安全保障会議(NSC)の9大臣会合で決定できます。これにより迅速な政策転換が可能となります。
自民党安全保障調査会の小野寺五典会長は「装備移転をどうするかの方向性を決めた上で防衛政策に反映する必要がある」と述べ、5類型撤廃を先行して議論する考えを示しました。
平和国家としての歩みと両立する新たな枠組み
今回の政策転換は、平和国家としての基本理念を維持しながら、現実的な安全保障環境に対応するバランス型アプローチと言えます。防衛装備移転三原則の三原則自体は維持し、その上で運用面の柔軟性を高める方針です。
これまで「武器を輸出しない国」として独特の地位にあった日本が、「国際標準のルールで武器輸出を行う国」へと転換することで、国際社会における役割も変化することになります。厳格な輸出管理と透明性の確保により、責任ある武器輸出国としての地位確立を目指すことが重要です。