2025-12-07 コメント投稿する ▼
高市早苗首相、能登地震被災地を初視察 復興支援と地方再生への問い
公式の経済政策声明においても、能登地震から約2年を経て「能登地方の日常のにぎわいと人々の笑顔を一刻も早く取り戻す」ため、インフラ復旧だけでなく、被災者の生活支援や伝統産業の再建支援を重要課題にしている。 ただし、被災地全体の再建には、単なるインフラ復旧だけではなく、人口減少や産業基盤の再編といった根本的な構造問題への対応も求められている。
能登で被災地の現状確認と住民との意見交換
高市早苗首相は2025年12月7日、2024年1月1日に発生した2024年能登半島地震で被災した石川県を訪れた。就任後初めての被災地訪問となり、同県珠洲市の土砂崩れ現場や応急仮設住宅、さらに輪島市の火災で焼失した朝市通り、穴水町の仮設商店街、七尾市の和倉温泉などを視察した。午後には地元住民との意見交換も行い、復旧・復興に向けた政府の姿勢を改めて示した。同行したのは馳浩石川県知事。
この視察は、12月2日に訪問した東日本大震災の被災地、福島県に続くものだ。相次ぐ被災地訪問は、早期の復旧・復興に真剣に取り組む姿勢を国民に示す狙いと見られる。
復興支援強化の政策と現地の温度差
高市首相は11月26日に、前首相から受け取っていた能登地震復興支援強化の提言書をもとに、地域への支援を加速させる意向を示していた。公式の経済政策声明においても、能登地震から約2年を経て「能登地方の日常のにぎわいと人々の笑顔を一刻も早く取り戻す」ため、インフラ復旧だけでなく、被災者の生活支援や伝統産業の再建支援を重要課題にしている。
しかし、被災地域を取り巻く事情は容易ではない。震災で壊滅的な打撃を受けた町村がある一方で、そもそも人口減少や高齢化に悩んでいた地域も多いからだ。特に北能登の一部地域では、震災以前から若年層の流出が続き、住民数が減少傾向にあった。
震災から約1年後には、ようやく地元での修学旅行の受け入れが再開されるなど、観光面での復興の兆しもうかがえる。ただし、被災地全体の再建には、単なるインフラ復旧だけではなく、人口減少や産業基盤の再編といった根本的な構造問題への対応も求められている。
住民の声と政府の姿勢のギャップ
視察中、住民からは「仮設住宅の寒さ対策はまだ足りない」「伝統産業の復活には支援が不可欠だ」といった切実な声があがった。特に冬場が厳しい珠洲市などでは、暖房や断熱の改善を求める声が強く、仮設のままでは長期の生活は厳しいとの声が多数を占めた。
「ようやく首相が来てくれて希望が持てた」
「でも仮設のまま何年も住むのは辛い」
「伝統の漆器産業どう支えるのか気になる」
「もっと若い世代が戻れる条件整えてほしい」
「観光客戻らないと町が生きない」
こうした声に対し、首相は「復興は国の責任。住民の声を政策に反映させたい」と応じ、仮設住宅の改善や商店街の復活支援、観光振興策の必要性に理解を示した。
だが一方で、国としてどこまで支援を継続できるか、また人口減少が進む地域への長期投資の是非は、今後の国会論議や予算措置にかかっている。
復興だけでなく「地方再生」の視点を
高市政権は経済再建や防衛強化を重視しており、地方振興はその一環と位置づけている。だが、人口が減り、働く人も高齢化する地域に対し、単に公共事業や補助金を投入するだけでは限界がある。仮設住宅や商店街の復興、観光振興とともに、若者の誘致や雇用確保、教育機会の維持など、将来を見据えた「地方の骨太な再建モデル」が必要だ。
今回の視察で、首相が実際の被災地の現場と住民の切実な声を直接聞いたことは評価できる。だが、それを政策に落とし込み、形ある成果として示さなければ、被災地の復興は空回りしかねない。
首相は、今回の訪問後も被災地支援を重視していく姿勢を表明している。だが果たしてそれは、単なるポーズではなく「被災地の未来」を見据えた本気の取り組みになるのか。日本全国が注目している。