2025-12-02 コメント投稿する ▼
政府が地方拠点強化税制を拡充へ 企業の地方移転促進で東京一極集中是正
政府・与党が東京23区から地方へ本社機能を移転する企業の法人税を減税する「地方拠点強化税制」について、2026年3月までとなっている期間を延長した上で、軽減率を拡大させる方向で調整に入ったことが2025年12月2日に判明しました。 4年連続の転出超過を記録しており、企業の地方移転の動きが定着してきていることが明らかになりました。
企業の地方移転が過去最多を記録
帝国データバンクの調査によると、2024年に首都圏から地方へ本社を移転した企業は過去最多の363社に達しました。一方で地方から首都圏への転入は296社となり、67社の転出超過となっています。4年連続の転出超過を記録しており、企業の地方移転の動きが定着してきていることが明らかになりました。
この背景には、WEB会議を活用したビジネススタイルやリモートワークが定着した企業では、BCP対策による拠点の分散化や、地方創生に貢献する企業ブランドイメージの向上、従業員のワークライフバランス向上といった地方移転におけるメリットに対する理解が経営層でより浸透した可能性があります。
「うちの会社も地方移転を検討している。税制優遇があるなら背中を押してくれる」
「東京のオフィス代が高すぎる。地方なら半分以下で済むし税金も安くなるなんて」
「災害リスク分散という意味でも地方移転は重要だと思う」
「地方創生につながるなら企業の社会的責任も果たせる」
「働き方改革の一環として検討したい。従業員の生活の質も向上しそう」
地方拠点強化税制の拡充内容
現在の地方拠点強化税制は、認定事業者が特定業務施設の新設又は増設に際して取得等した建物等に係る法人税等の特別償却又は税額控除のいずれかの適用を受けることができる制度です。特別償却では取得価額の25パーセント、税額控除では7パーセントが適用されます。
政府は東京一極集中の是正策は現状では目立った成果を挙げていない状況を踏まえ、制度の魅力度を向上させることで企業の地方移転を加速させたい考えです。延長期間や具体的な軽減率は今後の議論で詰めた上で、2026年度税制改正大綱に盛り込まれる予定です。
同制度は平成27年(2015年)の税制改正で創設されており、これまでも数度の延長と拡充が行われてきました。令和6年度の税制改正では、この制度が令和8年3月31日まで延長され、内容も拡充されており、今回の措置はさらなる強化策となります。
東京一極集中の現状と課題
全国に占める東京圏の人口割合は2020年の29.3パーセントから2050年の33.7パーセントへ4.4ポイント上昇する見通しとなっており、東京一極集中は今後も継続する見込みです。
この一極集中には深刻な問題があります。日本の人口の約3割である約3,600万人が暮らす東京圏で災害が発生すれば、膨大な建物被害と人的被害が発生するリスクがあることに加え、企業の本社機能の停滞は、全国にわたる関係の店舗・工場、顧客・取引先、消費者等に影響が及ぶ可能性があるため、リスク分散の観点からも地方移転の促進が急務となっています。
しかし現実には、政府の取り組みにもかかわらず東京一極集中の是正は進んでいません。政府が長らく掲げてきた省庁の地方移転は十分に進まず、民間企業においても抜本的な変化は見られていないのが現状です。
減税政策の重要性
現在の物価高により企業経営は圧迫されており、税負担軽減は企業にとって切実な課題となっています。地方拠点強化税制の軽減率拡大は、企業の地方移転を促進する強力なインセンティブとなる可能性があります。
特に中小企業にとって、オフィス賃料の削減と税制優遇の組み合わせは経営改善に直結するメリットとなります。東京都心などの大都市近郊に比べると、地方ではオフィスの賃料にかかる負担も下がりますという利点もあり、総合的なコスト削減効果が期待できます。
また、減税による財政負担の軽減は、民意が示した「減税」という要望にも合致するものです。参院選等で示された国民の意向を踏まえれば、給付金よりも減税を優先すべきであり、地方拠点強化税制の拡充はその具体的な実現策といえます。