2025-11-17 コメント投稿する ▼
日中フォーラム21年目で初の開催中止 高市首相台湾発言への中国側反発で民間対話も政治利用される異常事態に
2005年の反日デモ最盛期に始まったこの民間対話は、数々の困難を乗り越えてきたが、習近平体制の中国にとって「対等な対話」そのものが受け入れ難いものになっていることを露呈した。 しかし21年間の変遷を振り返ると、中国の国際的な発言力が増すにつれて、対話姿勢は明らかに高圧的になっている。
21年目で破綻
日中フォーラム延期が示す中国の傲慢外交 高市発言を口実にした「対話拒否」の真意とは
高市早苗首相の台湾有事発言を理由に、21年間継続してきた「第21回東京―北京フォーラム」が延期に追い込まれた。中国側は「雰囲気を損なう」として一方的に開催中止を通告したが、これは中国の国際的な態度の傲慢化を象徴する事件といえる。2005年の反日デモ最盛期に始まったこの民間対話は、数々の困難を乗り越えてきたが、習近平体制の中国にとって「対等な対話」そのものが受け入れ難いものになっていることを露呈した。
日本側実行委員会である言論NPOの工藤泰志代表(66歳)は「中国側も民間対話を重視していたが尖閣問題の時を上回る力が働いた」と困惑を隠さない。しかし21年間の変遷を振り返ると、中国の国際的な発言力が増すにつれて、対話姿勢は明らかに高圧的になっている。果たしてこのフォーラムは本当に意味のある対話の場だったのか、それとも中国のプロパガンダ戦略に利用されただけだったのか。
高市発言への過剰反応が示す中国の本音
問題となった高市首相の発言は、11月7日の衆院予算委員会で「台湾有事は状況次第で存立危機事態になり得る」と述べたものだ。これは日本の安全保障上の当然の認識であり、中国による台湾への武力行使があった場合の日本の対応を法的な枠組みで説明したに過ぎない。
しかし中国側の反応は異常なほど激烈だった。中国の薛剣駐大阪総領事はXで「勝手に突っ込んできたその汚い首を一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」という外交官として考えられない暴言を投稿し、中国外務省は日本への渡航自粛を呼び掛けるという報復措置に出た。
この過剰反応は、中国が台湾問題で一切の批判や懸念を許さないという姿勢の表れだ。しかも今回は民間の対話まで政治的な道具として利用し、圧力の手段にした。言論NPOによると、中国側は16日の書簡で「高市首相は中国側が厳重に抗議した後も誤った立場を撤回しなかった」と主張したが、これは主権国家の首相に対する内政干渉そのものである。
「中国の反応はあまりにも大人気ない。対話を政治の道具にするべきではない」
「21年も続けてきた対話を簡単に止めるなんて、中国の本音が見えた」
「高市首相の発言は当たり前のこと。中国が過敏になりすぎている」
「民間対話まで政治利用する中国に失望した。もう対話の意味がない」
「これで中国の正体がはっきりした。対等な関係なんて最初からなかった」
2005年から2025年:変貌した中国との対話の限界
東京―北京フォーラムは2005年、中国で大規模な反日デモが発生し日中関係が最悪の状況にある中で、工藤泰志氏らが提唱して設立された。当初は「友好のための対話ではなく、課題解決を目指すための対話」として、両国の有識者が本音で議論する貴重な場だった。
2006年には安倍晋三官房長官(当時)がフォーラムでの発言を契機に訪中を実現するなど、政府間外交の扉を開く役割も果たした。2013年には日本政府による尖閣諸島国有化で関係が悪化した際も、「不戦の誓い」を合意するなど一定の成果を上げてきた。
しかし中国の経済力と軍事力が飛躍的に向上した習近平時代に入ると、中国側の姿勢は明らかに変化した。2010年にGDPで日本を抜いて世界第2位の経済大国となり、軍事費も急激に拡大する中で、中国は「対等な対話」よりも「上から目線の要求」を前面に出すようになった。
今回の一方的な開催中止は、その変化の象徴といえる。中国にとってフォーラムはもはや日本に対して圧力をかける道具でしかなく、真摯な対話の場ではなくなっている。宮本雄二元駐中国大使が「中国にとって台湾問題は別格」と指摘したように、中国は自らの「核心的利益」に関わる問題では一切の妥協を許さない姿勢を鮮明にした。
対話継続への幻想を捨てるべき時
工藤代表は「絶望はしていない。年内開催を探りたい」と述べているが、果たしてこのような中国との対話に意味があるのだろうか。21年間の実績を見れば、フォーラムが日中関係の根本的改善に寄与したとは言い難い。むしろ中国の国際的な発言力増大とともに、対話は一方的な中国の主張を聞かされる場に変質している。
中国は現在、南シナ海の軍事拠点化、ウイグル人への人権侵害、香港での民主主義弾圧など、国際法を無視した行動を続けている。台湾への軍事圧力も日々強化しており、「平和的な対話」を求める姿勢は微塵も見られない。
今回の事件は、中国が民間対話すら政治的な駆け引きの道具として利用することを明確に示した。日本政府の正当な発言に対して、外交官が暴言を吐き、民間対話まで中止に追い込む中国との「建設的な対話」など、最初から不可能だったのである。
日本は中国との関係において、対話継続への幻想を捨て、現実的な対中政策を構築する時期に来ている。21年間の経験が教えてくれたのは、力の論理でしか動かない相手との対話の限界だった。