2025-11-17 コメント投稿する ▼
クマ被害196人で過去最悪ペース 10月は88人と月別最多を記録
環境省は11月17日、2025年4月から10月のクマによる全国の被害者数が計196人だったと発表した。 過去最多だった2023年度の219人に迫る深刻な状況となっている。 秋田県は10月だけで37人が被害を受け、うち2人が死亡する異常事態となった。 2023年度も同様にブナの実の凶作によってクマの人身被害が過去最多の219人となった。
4月から10月の被害者196人のうち12人が死亡した。都道府県別で最も多いのは秋田の56人(うち死亡者3人)で、岩手34人(同5人)、福島20人(同0人)、長野15人(同1人)と続いている。秋田県は10月だけで37人が被害を受け、うち2人が死亡する異常事態となった。
秋田県の「災害級」被害状況
秋田県のクマ被害はまさに「災害級」の深刻さである。同県の「ツキノワグマ等情報マップシステム
クマダス
」によると、2025年に入ってからの目撃情報は5300件余りに達している。しかも10月6日からの1週間で1000件を超えるという異常な状況だ。県議会では与野党を問わず各議員から「子どもが犠牲にならなければ行政は動かないのか」「フェーズは変わった。もはや災害級。毎日のようにけが人が出ている」として、県に抜本対策を求める声が途切れない状況である。
鈴木健太秋田県知事は10月26日、自身のインスタグラムで「もはや県と市町村のみで対応できる範囲を超えており、現場の疲弊も限界を迎えつつある」として自衛隊派遣の要望を検討する姿勢を示した。実際に11月5日から自衛隊が秋田県内で箱わなの輸送支援などクマ対策活動を開始している。
「もう日常がクマありきになってしまった。外に出るのが怖い」
「子どもを一人で外に出せない。学校の送り迎えも不安だ」
「山菜採りに行くのも命がけ。でも生活があるから行かないわけにはいかない」
「これまでこんなことはなかった。異常だと思う」
「駆除しても駆除しても減らない。どうすればいいのか」
秋田県で駆除されたクマは、2025年にすでに1000頭以上を数えている。それでも目撃情報は増え続け、住民の不安は募るばかりだ。
ブナの実凶作が主要原因
環境省は10月に被害が急増した要因について、クマの餌となるブナの実の不作が主な原因とみている。ブナ科の木の実の凶作により、クマが餌を求めて人里や市街地にまで出没するようになったためだ。
過去のデータを見ると、ドングリなどの凶作年にはクマの大量出没が発生する傾向がある。2023年度も同様にブナの実の凶作によってクマの人身被害が過去最多の219人となった。今年も同じパターンが繰り返されている。
東北地方では特にブナ類の凶作とクマ出没増加の関係が顕著に現れており、岩手県と秋田県の2県だけで全国の被害の約半数を占めている。これらの地域では餌不足によってクマが人の生活圏に侵入する事例が急増している。
市街地への侵入が深刻化
今年のクマ被害の特徴は、山間部だけでなく人の日常生活圏での被害が急増していることだ。長野県飯山市ではクマが住宅に侵入し3名が重軽傷を負う衝撃的な事件が発生した。また、秋田市の物流倉庫にクマが侵入し、長時間にわたって立てこもる事態も起きている。
従来のクマ被害は山中での遭遇が中心だったが、最近では学校や役場近く、住宅密集地など、地元住民が「まさか、ここで?」と驚くような場所で被害が発生している。これは従来の対策では対応できない新たな段階に入ったことを意味している。
秋田市内に住む男性は「クマがいることが日常になっている」と驚くべき実態を明かしている。線路に子グマが寝そべっているのを目撃したり、電車がクマと衝突して遅延することも日常茶飯事になっているという。
対策強化も追いつかない現実
政府は2024年4月からクマ類を「特定鳥獣管理計画」の対象種に追加し、2025年9月1日には緊急銃猟制度を施行するなど対策を強化している。しかし、これらの対策をもってしても、被害の拡大に歯止めがかからない状況だ。
2023年の捕獲数上位の自治体は、秋田県の2185頭を筆頭に、北海道、福島県、岩手県、山形県、青森県の順で、6道県のみで6700頭に上っている。全国では9099頭という驚異的な数を捕獲したにもかかわらず、2年後の出没や被害はそれを上回っている。
この現象について専門家は、現在の推定値が過小評価でもっと生息数が多い可能性と、増加率が想定よりも高く2年で数が回復してしまった可能性の両方を指摘している。東北地方の対策者からも「2年前より多い」という諦めにも似た声が聞こえてくるという。
クマ類は生態系の頂点に立つアンブレラ種であり、多様性のある生態系の指標動物でもある。生物多様性保全の観点からも重要な動物であるため、単純な駆除だけでは解決できない複雑な問題となっている。科学的モニタリングに基づく適応的管理と、人とクマが安全に共存できる社会づくりが急務である。