2025-12-01 コメント投稿する ▼
医療法改正で問われる国民負担・医療アクセス・情報管理――松田学の鋭い質問
そのため、今回の法改正案では「地域医療支援病院」「救急病院」「特定機能病院」などに対し、電子カルテの標準化や情報共有の仕組みを整備することを努力義務としています。 松田議員は、これらの本質的な議論を政府に問いかけたと述べています。 医療DXの推進は本来、医療の効率化や質の向上、さらには国民の健康寿命延伸や医療費抑制につながる意義があります。
参政党・松田学議員が問う 医療法改正の狙いと危険性――「医療DX」と地域医療再編のリアルな論点
医療法改正案の概要と国の狙い
2025年2月に政府が閣議決定した医療法等の一部を改正する法律案は、高齢化の進行を見据えた医療提供体制の根本的な再編を目指すものです。改正案の柱は、
(1)地域医療構想の見直し
(2)医師偏在是正
(3)医療DXの推進
――この3点です。具体的には、病床機能の分化・連携を促したり、公立など特定病院への役割集約を進めたりする方針が示されています。2040年頃をにらみ、入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携を含む地域全体での医療体制の再構築を狙っている点が最大の特徴です。
しかし改革の背景には、「現在の医療体制のままでは将来の医療需要に対応できない」という判断があります。報告によれば、団塊世代が75歳以上となる2025年以降、医療・介護へのニーズは急増する見通しです。加えて医師不足や医療従事者の偏在、医療費の高騰、過重労働などの構造的課題もある。これらを放置すれば、制度の持続性が揺らぐというのが政府の危機感です。
そのため、今回の法改正案では「地域医療支援病院」「救急病院」「特定機能病院」などに対し、電子カルテの標準化や情報共有の仕組みを整備することを努力義務としています。これにより、異なる医療機関間で患者情報を迅速かつ安全に共有し、たとえば急性期医療、在宅医療、介護などをシームレスにつなぐ構造をつくる狙いです。
松田学議員の質疑――参政党の視点からの問題提起
2025年12月1日、参院本会議で参政党を代表して松田学議員が本改正案について代表質問を行いました。質疑の主な論点は三つです。まず「医療費抑制による国民負担率35%実現に向けた医療費の削減」。次に「医療・介護の在り方を、国民・住民を起点とした社会システムへと転換する試みとしての地域医療連携」。そして「地域のコミュニティを通じた予防・健康づくりの推進」といった住民主体の社会構造への転換です。さらにDX化については、電子カルテ共有や医療データの利活用による効率化に言及する一方で、「パンデミック時などに国民監視のツールにならないか」という懸念も示しました。松田議員は、これらの本質的な議論を政府に問いかけたと述べています。松田議員の質疑は動画で公開されており、国会中継で確認できます。
この質疑の中で興味深かったのは、答弁漏れがあったと松田議員が指摘し、議場が一時騒然となったことです。つまり、提出された法案の論点すべてについて政府は明確に答えられなかった。議論の浅さ、あるいは議論から逃げる姿勢が浮き彫りになった瞬間でした。松田議員は、この後の審議を同党の別の議員に託すと述べています。
地域医療再編と医療DX――期待と懸念
医療DXの推進は本来、医療の効率化や質の向上、さらには国民の健康寿命延伸や医療費抑制につながる意義があります。国の「医療DXビジョン2030」では、全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DXを三本柱とし、医療の将来像を描いています。
実際、モデル事業も2025年2月から始まり、複数の医療機関や薬局をまたいだ情報共有や、患者による自身のデータ閲覧、介護との連携などが試行されています。これにより、受診の重複防止、適切な治療継続、在宅医療や介護の連携といった柔軟な医療提供が可能になるとの期待があります。
しかしその一方で、いくつかの懸念もあります。第一に、小規模医療機関や地方病院のシステム導入能力が追いつかず、不均等が生まれる可能性がある点。第二に、電子カルテ共有や情報の二次利用を前提としたシステム運用において、情報の安全管理やプライバシーへの配慮が十分かどうかという問題。第三に、地域医療を再編することで、病床削減や病院統合が進み、かえって受けられる医療機会が制限される恐れ――特に地方や医療過疎地では「医療へのアクセス低下」という現実的な危機があります。例えば、他党議員はこの改正案で示された「約11万床の病床削減による医療費削減効果」に対し、在宅医療や介護ニーズを無視した過大な効果試算と批判しています。
こうした懸念は、制度改革の議論として避けて通れません。特に医療と介護、住民の暮らしをつなぐ地域の医療ネットワークを構築するには、単に制度と技術を変えるだけでなく、地域の実情、医療インフラ、住民の意識や社会資本をどう確保するかという視点が不可欠です。
制度改革は「国民目線」で
医療DXや地域医療再編のような改革は、その方向性自体は間違っていないと思います。高齢化が進み、医療や介護への負荷が増す中で、従来の「病院中心」「病床中心」の医療体制を維持するのは、財政的にも人的にも限界があるのは明らかです。デジタル化や地域連携を通じて効率化しつつ、住民の生活と医療をつなげるのは合理性がある。
ただし、制度の都合や行政の論理だけで進めるのではダメです。特に小規模医療機関、地方、過疎地、医師偏在地域では、アクセスの低下という「医療の受け皿崩壊」が起こりかねません。国民の健康と安心を第一にするなら、まずは 住民・地域を起点 にした議論が必要です。DXや地域構想をツールと捉え、それをどう使うかは「誰のためか」を常に問わなければなりません。
今回、松田議員が本質的な問いを投げかけたのは、まさにこの点だと思います。たとえ法案が通されても、地域の医療が守られるよう、国会、自治体、現場、住民――すべての層で緊張感を持った議論とチェックが求められます。
医療費を下げるためなら、必要な病床を潰して受けられる医療を減らして構わないのか
国会は、この問いに正面から答える必要があります。