2025-10-20 コメント投稿する ▼
飲食料品消費税2年間ゼロへ 自民・維新連立合意も実現は困難な5兆円減収
試算によれば、飲食料品の消費税をゼロにした場合、年間で5兆円程度の税収減になる可能性があるとされ、財政規律を重視する自民党内や財務省側からの反発は必至です。 その後、自民との連立合意文書においても「飲食料品の消費税減税について協議を継続する」という文言が盛り込まれ、実現に前向きな流れが生まれつつあります。
食品“消費税2年間ゼロ”案に現実味
2025年10月20日、自由民主党(自民)と日本維新の会(維新)が連立政権樹立で合意した中で、維新が掲げる「飲食料品にかかる消費税を2年間ゼロとする」案が実現の可能性を増しています。維新が今夏の参院選公約に掲げたこの政策は、物価高対策として強く打ち出されており、合意文書にも「協議を継続する」と記されました。
しかし、この案には重大な財政・実務の壁が立ちはだかっています。試算によれば、飲食料品の消費税をゼロにした場合、年間で5兆円程度の税収減になる可能性があるとされ、財政規律を重視する自民党内や財務省側からの反発は必至です。
維新の減税公約と合意文書への反映
維新は2025年6月24日に示された参院選公約案で、飲食料品の消費税率を2年間0%にすることを明記しました。その後、自民との連立合意文書においても「飲食料品の消費税減税について協議を継続する」という文言が盛り込まれ、実現に前向きな流れが生まれつつあります。
ただし、合意文書はあくまで「協議継続」であって、正式な法案提出や制度設計が明確になったわけではありません。維新としては目玉政策として掲げており、政権内ポジションを高める狙いもあると見られます。
5兆円の税収減と財務省・自民の反発
金融・経済の専門機関や財務省の内部試算では、飲食料品を消費税率0%に引き下げた場合、国と地方を合わせて年間で4.8兆円〜5兆円程度の減収になると見積もられています。税収が激減すれば、社会保障費や地方自治体の予算などへの影響が避けられません。実際、財務省幹部は「消費減税をするなら、社会保障の整備が薄くなる」と明言しています。
自民党側にも慎重論があります。これまで消費税減税は増税時の反動を思い起こさせるため、慎重姿勢を崩していません。過去、税率を上げた時期に支持率が急落したという記憶もあり、再び「税を下げて戻す」という流れに対する国民の反発も想定されます。
レジ改修・買い控え・増税と受け止められるリスク
税率をゼロにするには、レジ・会計システムの改修や流通・販売側の対応が不可欠で、早くても1年以上の準備期間が必要という指摘があります。また、減税期間終了後に税率を戻す際には「増税」と受け止められ、国民の信頼を損なう恐れがあります。税制調査会の関係者は「税制度はしっかり実行できなければ、国民の不満は大きくなる」と警鐘を鳴らしています。
加えて、実施を急ぎ過ぎると、駆け込み購入や買い控えといった消費の乱れを招き、経済にマイナスの影響を与える恐れもあります。こうした実務リスクは“減税の効果”以上に制度設計・運用面での慎重さを要求しています。
本当に優先すべきは“減税”か、それとも“減税以外の選択肢”か
減税自体は国民受けする政策ですが、私は「減税ありき」ではなく「手取りを増やす・負担を減らす現実的手段を優先すべきだと考えます。例えば、与党側も野党側も給付・補助金などで政策を打ち出してきましたが、制度の恒久化やターゲットを絞った支援の方が効果的です。
また、税収が5兆円も減れば、その分をカバーする財源を別に確保しなければ、他の政策(社会保障・教育・防衛)などが削られるリスクがあります。財政健全化を放棄してまで減税とするなら、長期的には国益に反します。私自身、減税優先の立場です(給付金は意味がない)が、この消費税ゼロ案には、財源裏付け・制度運用・公平性の観点から重大な疑問を抱きます。
さらに、減税実施後の税率戻しが「増税」として受け止められる構造を考えると、国民の信頼を損なうリスクも大きい。税率を元に戻さなければ財政が破綻するなら、最初から減税を安易に打ち出すべきでないのです。
自民と維新の連立合意によって、飲食料品の消費税を2年間ゼロにする案が実現に近づいてきました。しかし、5兆円規模の減収、財務省・自民の慎重姿勢、実務の難しさという三重の壁を前に、実現には政権の覚悟と緻密な設計が求められます。減税を打ち出すなら、国民の手取りが確実に増え、生活が改善する構造を示さなければ、単なる“人気取り”で終わる可能性があります。新政権の本気度が試される局面です。