2025-10-20 コメント投稿する ▼
「日本維新の会」大阪都構想3度目の機運 副首都構想絡みで党内に温度差
その中で維新が強く迫っていた「副首都構想」が、実は党の看板政策である「大阪都構想」と密接に結びついている。 だが、既に2度の住民投票で否決されており、3度目に向けた“機運醸成”には、党内の温度差も浮き彫りになっている。 今回の自民・維新連立合意において、維新が提示した「副首都構想」という政策がクローズアップされた。
「日本維新の会」大阪都構想、3度目の機運と党内温度差
2025年10月20日、自由民主党(自民)と維新が連立政権樹立で正式合意した。その中で維新が強く迫っていた「副首都構想」が、実は党の看板政策である「大阪都構想」と密接に結びついている。都構想は大阪市を廃止し、複数の“特別区”に再編するもので、維新の核心テーマである。だが、既に2度の住民投票で否決されており、3度目に向けた“機運醸成”には、党内の温度差も浮き彫りになっている。
過去の挫折と維新の原点
維新の前身となる地域政党は2010年に結党され、「大阪都構想」を旗印に掲げた。この構想では、大阪府・大阪市の二重行政を解消し、府と市を統合・あるいは大阪市を廃止して特別区を設置することで、東京と肩を並べうる「都」の構造を大阪に作ろうというものだ。だが、2015年5月の住民投票でわずか1万票余の差で否決、0・76ポイント差で破れた。さらに2020年11月1日の再投票でも反対票が賛成票を上回った。
この二度の敗北によって、維新は一時「都構想は封印」と言われるほど慎重な姿勢を取っていた。だが近年、知事・代表の吉村洋文氏が「看板は下ろしていない」「改めて皆さんと考えたい」と述べ、再び都構想への舵を切り始めた。
副首都構想との関係性と今回の合意
今回の自民・維新連立合意において、維新が提示した「副首都構想」という政策がクローズアップされた。この構想では、東京一極集中の是正や災害時の首都機能バックアップを目的とし、法案の骨子に「道府県区域内で特別区設置があること」などの条件が明記された。
この「特別区」というキーワードが、都構想と重なる点だ。つまり、維新側としては副首都構想の実現を通じて、大阪都構想を再び動かすための“道筋”を確保しようとしている。関係筋によれば「副首都構想に都構想が含まれている」と指摘されている。
機運はあるが、党内に漂う慎重論
こうした動きの中で、「3度目の住民投票」に向けた機運は確かに醸成されつつあるが、維新内部には慎重な声もある。大阪府内の維新系市議によれば「今回はアプローチがこれまでと違う。住民への丁寧な説明が必要」と語る。
一方、府市一体運用が既に進んでいるという評価から「都構想を新たに問う意味があるのか」という懐疑的な見方も存在する。
この温度差が、実質的に「一枚岩」で都構想を進められるかどうかの鍵になる。特に、維新が一党で推し進めるには限界があるため、自民・公明など他党との合意形成が不可避と見られる。
実現に向けた課題とその意味
都構想が現実の改革となるためには、以下の点がクリアされる必要がある。まず、住民の理解を得るための具体的な再編案である。特別区の設置や府・市の権限整理、財源配分、議会・首長ポストの見直しなど、制度設計が曖昧なままでは再び住民投票が否決されるリスクが高い。
次に、既存の「府・市一体運用」が進んでいるとの評価がある中で、「都構想の必要性」を改めて説明できる論点が求められる。単なる名称変更・ポスト削減ではなく、改革の中身が問われている。さらに、都構想が実現した際に生じるコスト・移行期間の混乱・住民サービス低下などの懸念をどう払拭するかも重要だ。
最後に、維新が単独で進める「改革」の限界を考えれば、国政・府市・地元の各政党・団体との合意構築なしには成功は難しい。自民・維新連立が成立した今、その公算は増したが、同時に「都構想=維新の独走」ではなく「府市・連立の共同責任」として進める姿勢が問われる。
府・市の二重行政解消という観点から見れば、大都市圏において行政のスリム化は望ましい。だが、今回の事例で私が強調したいのは、「数を減らせば良い」という単純な改革論ではなく、中身の質を高められるかどうかだ。
今回、維新は自民との連立を契機に看板政策を再び前面に出しているが、もしそれが「ポスター政策」に終わるなら、むしろ政治不信を増すだけだ。民主主義における改革とは、形式ではなく実機能の変化を伴うものでなければならない。
加えて、都構想に挑むのであれば、府市民が「自分たちの暮らしが良くなる」と実感できる説明責任を維新は果たさなければならない。党内に温度差がある現状で、“一枚岩”を作るのは容易ではない。そうした観点から見ると、今回の機運は高まっているが、実現までの道のりは決して平坦ではない。
日本維新の会が掲げる大阪都構想は3度目の挑戦に向けて確かな機運を帯びてきたが、党内の温度差や具体案の未整備という壁も同時に浮上している。自民との連立という大きな舞台の変化が千載一遇のチャンスではあるが、改革の質を担保できなければ、失敗のリスクは依然として高い。住民投票を再び問うのであれば、それ以前に「府・市がなぜ、いかに変わるのか」を透明に示すことが不可欠だ。