2025-10-13 コメント投稿する ▼
公約万博後の夢洲再開発、財界の待ったと鉄道延伸負担――“負の遺産”からの再構築
万博の成功が変化の契機となる可能性を秘めているが、跡地利用計画には財界の反発、鉄道延伸を含む交通インフラの負担など、重い課題が横たわっている。 だが、財界側から早くも「待った」がかかっている。 万博後に残る“レガシー施設”をどう扱うかは世界の万博跡地開発の命題であり、用途が場当たり的になれば資金回収不能となる恐れがある。
「負の遺産」から生まれ変わる夢洲の難局
大阪・関西万博の会場だった夢洲(大阪市此花区)は、かつて「無駄な人工島」「市の開発失敗例」と揶揄されてきた。万博の成功が変化の契機となる可能性を秘めているが、跡地利用計画には財界の反発、鉄道延伸を含む交通インフラの負担など、重い課題が横たわっている。
計画と反発:異なるビジョンが交錯
大阪府・大阪市は2025年4月、「夢洲跡地基本計画」を公表し、アリーナ、ウォーターパーク、緑地などを含む複合施設案を示した。大屋根リングの一部を保存・公園化する案も明記しており、来春に最終計画をまとめ、開発者を公募する構えである。
だが、財界側から早くも「待った」がかかっている。関西経済連合会の松本正義会長は、同計画にモータースポーツ拠点など万博とは無関係な施設が含まれていることに疑問を呈し、「経済界や専門家の了解も得ながら計画すべきだ」と語った。
この指摘には根拠がある。万博後に残る“レガシー施設”をどう扱うかは世界の万博跡地開発の命題であり、用途が場当たり的になれば資金回収不能となる恐れがある。大阪府市は夢洲を国際観光拠点に育てたいという意向だが、構造的には開発負荷が重くなる。
鉄道延伸案と重いコスト負担
夢洲へのアクセス改善は、まちづくりの成否を左右する切り札だ。府市は、JR西日本の桜島線(ゆめ咲線)延伸案と京阪電鉄の路線延伸案を有力ルートと位置づけ、両案を合わせた事業費を約3500億円と見積もっている。公的資金拠出が不可欠との前提で、鉄道各社も方向性を見定めつつある。
ただし、延伸案の採算性に対する疑問は根強い。万博期間中は大量の来場者輸送を鉄道が頼りにされたが、平常時の需要予測に基づく採算性は不透明だ。延伸ルートが活用されなければ、固定資産費と維持管理費が財政の重荷になる可能性が高い。
また、延伸建設の負担割合を巡っては自治体・国・民間企業間の交渉が必要だ。鉄道事業会社側は公的資金支援なしには難しいとの見解を示しており、計画の実行には資金構造の見える化とリスク分担の設計が不可欠である。
IRとのシナジーとリスク
夢洲北側にはIR(統合型リゾート施設)の誘致が決まっており、2030年秋頃の開業を目指している。ホテル、カジノ、国際会議場、エンタメ施設を含む複合施設で、年間来場者2,000万人、売上高約5,200億円を見込む試算がある。
理想的には、万博跡地の施設群とIRとの相乗効果(シナジー)を活かして観光集客力を強められる。ただし、IR単独では採算プレッシャーが強く、周辺誘導施設が不充分だと「箱モノ」だけが残る懸念もある。跡地とIRを別管理で動かせば、連携不全が起きかねない。
過去から学ぶ万博跡地活用
過去の万博跡地活用の成功例は、事前に跡地利用を設計しておいたケースが多い。1970年大阪万博では、万博閉幕後に鉄道や道路インフラがそのまま都市交通に組み込まれ、まちに溶け込んだ。吹田市周辺などがそれを活かし、生活・商業地域へと変貌を遂げた。
愛知万博でも、跡地は記念公園化され、交通路線が残された。これら成功例では「閉幕後の使い道」が設計段階から意識されており、施設を単なるイベント資産として終わらせなかった。
一方、万博後の放置例や施設廃止例も多く、維持費だけが残って赤字を拡大した事例もある。夢洲においても、維持・運営コストの見通しが甘ければ「負の遺産」を再生できなかった過去の例と同じ道をたどる可能性がある。
課題克服と議論の深みを
夢洲開発に成功を収めるには、単なる施設配置図の議論だけでは足りない。資金計画、交通インフラ、運営負荷、用途配分の合意、維持体制までを含む総合的設計が必要だ。
財界の「待った」はブレーキにも見えるが、無批判な進行への警鐘ともとれる。専門家・市民・企業を巻き込み、用途・規模・運営モデルを緻密に詰めなければ、再び“使われない島”に逆戻りしかねない。
交通アクセス、IR誘致、跡地用途…。夢洲はいま、華やかな舞台の裏で重い選択を迫られている。未来をかけた再開発の論点は、いま動き始めている。
この投稿は吉村洋文の公約「2025年大阪・関西万博の成功と大阪府と大阪市の連携強化」に関連する活動情報です。この公約は10点の得点で、公約偏差値36、達成率は0%と評価されています。