2025-09-12 コメント: 1件 ▼
大阪副首都構想と万博後の現実 経済効果だけでなく住民負担を直視せよ
大阪府市が打ち出した成長戦略「BEYOND EXPO2025」は、万博の開催を起点に経済を拡大し、2040年代に名目府内総生産(GRP)を80兆円にするという意欲的な構想である。 観光による収入増が行政にとって追い風になる一方、こうした住民の声が十分に反映されていないことが批判の根拠となっている。 経済効果とともに、住民の負担や損失を含めたバランスの取れた政策判断が求められている。
万博の光と影 大阪副首都構想に残る課題
大阪府市が打ち出した成長戦略「BEYOND EXPO2025」は、万博の開催を起点に経済を拡大し、2040年代に名目府内総生産(GRP)を80兆円にするという意欲的な構想である。だが、こうした未来像に対して府民の受け止め方は一様ではない。実際に「万博で生活が豊かになった」と実感している府民は一部にとどまり、多くの住民は渋滞や騒音、ゴミ捨てなど観光公害に悩まされてきた。
成長戦略では、万博跡地の開発やIR(統合型リゾート)の建設を経済効果の柱に据えているが、経済効果ばかりを強調する姿勢に懸念も広がる。地域社会が抱える負担や経済的損失をどこまで正確に試算し、政策に反映していくのかが問われている。
観光公害に苦しむ住民の現実
大阪府内では万博に関連する観光客の増加によって経済波及効果が強調される一方、生活環境の悪化に直面する住民が少なくない。交通渋滞による通勤・通学の遅延、観光客のマナー問題、ゴミ処理にかかる行政コストなどは現実の負担である。
「生活は便利になったどころか不便になった」
「イベントのたびに道路が混み、通勤が苦痛」
「経済効果ばかりで住民負担は誰も計算していない」
「ゴミや騒音の処理費用は結局税金で払っている」
「観光公害で疲弊している声を政策は無視している」
観光による収入増が行政にとって追い風になる一方、こうした住民の声が十分に反映されていないことが批判の根拠となっている。
経済効果の数字だけで語れない現実
大阪府市は万博を経済成長の起爆剤と位置づけ、産業や雇用の拡大を強調している。しかし「経済効果」という言葉が独り歩きし、実際の生活者にとっての損益が正しく勘案されていない点が問題視される。経済学的にも、大規模イベントはプラス効果と同時にマイナス効果を生み出すのが常であり、渋滞による時間損失やインフラ維持費、観光公害への対策費用を計算に含めなければ正しい経済評価にはならない。
国際的な事例でも、オリンピックや万博後に観光客が急減し、維持費が財政負担となるケースが多い。大阪が「副首都」を掲げるのであれば、プラスのシナリオだけでなく、長期的なコストも含めた現実的な経済分析が不可欠である。
副首都構想に必要な住民目線
副首都構想は、東京一極集中を是正する狙いからも期待されている。しかし、その実現には「住民が豊かさを実感できるかどうか」が決定的に重要である。目標として掲げられた80兆円のGRP拡大は魅力的だが、それが数字の上だけで終われば意味を持たない。地域住民にとって生活の質が向上するのかどうか、実際の体感を重視した検証が求められる。
大阪が副首都として国を支える存在になるためには、光の部分だけでなく影の部分を直視する姿勢が不可欠だ。経済効果とともに、住民の負担や損失を含めたバランスの取れた政策判断が求められている。
大阪万博と副首都構想 経済効果と住民負担の両面を直視せよ
「BEYOND EXPO2025」の骨子案は大阪の未来像を描くものであるが、観光公害に苦しむ住民の声を置き去りにしてはならない。経済効果と損失の双方を加味した現実的な計画こそが、副首都を目指す大阪に必要な視点である。