2025-10-29 コメント投稿する ▼
滋賀県がリペアチャレンジ開始、廃家具240点回収・修理・販売で循環経済実証
都道府県が主導して「回収→修理→販売」を一体的に検証する形は全国的にも珍しく、新たな循環経済モデルの実現を目指しています。 清掃工場などに粗大ごみとして出された家具類の中から、再利用の可能性があるものを県が選別・回収しています。 滋賀県の「リペアチャレンジ」は、廃棄物を新たな価値ある資源として認識し直す取り組みです。
廃棄物を資源へ、3カ月で240点超を回収
滋賀県は、循環経済(サーキュラーエコノミー)の推進に向けた実証事業「リペアチャレンジ」を開始しました。これまで廃棄物として処理されてきた家具類を回収して修理し、販売する取り組みです。都道府県が主導して「回収→修理→販売」を一体的に検証する形は全国的にも珍しく、新たな循環経済モデルの実現を目指しています。
すでに約3カ月間で、予想を上回る約240点の廃家具類が回収されました。このうち約1割程度が修理対象として選定されており、11月以降は月1回のペースで修理完了品の販売が進められます。滋賀県担当者は「予想を上回る」と述べており、廃棄物の中に多くの再利用可能な資源が存在することが確認されました。
近江八幡、草津、栗東、甲賀、湖南、日野、竜王、愛荘、豊郷、多賀の各市町と甲賀広域行政組合が協力しており、地域を超えた連携体制が構築されています。清掃工場などに粗大ごみとして出された家具類の中から、再利用の可能性があるものを県が選別・回収しています。
「3カ月で240点も集まったんですか。家を片付ける時に出た家具がこんなに活躍するなんて」
「修理して販売するって、昔の日本はこんな感じだったのかな。大事にモノを使う文化を取り戻すんだ」
「県がこんなことやってくれるのは良いけど、経済的に成立するのか気になる。採算性の検証もするって書いてた」
「廃棄物として燃やすより修理するほうが、環境にもいい。こういう循環の仕組みがもっと増えるといい」
「地域の修理業者も関わってるんですね。職人さんの仕事を守りつつ、環境も守るという一石二鳥」
民間事業者と連携、町屋を活用した販売施設で毎月展開
修理と回収の実務は、竜王町の「木の家専門店 谷口工務店」に委託されています。回収した廃家具類は同店に集め、県と協議しながら状態を見て修理の可否や内容が判断されます。同店の職人やスタッフが清掃や補修、再塗装などを手がけ、県内の修理業者が一部の修理を担当します。すべての家具類に清掃(クリーニング)が実施されることで、見た目の回復と衛生面の確保が同時に達成されます。
11月以降、修理完了した家具類の販売は、大津市にある町屋を再利用した「クラフトマンカレッジ」で実施されます。原則として毎月第1土曜日に展示・販売会が開催され、第1回は11月1日午前10時から午後4時まで行われます。報道関係者向け説明会として開催されますが、一般利用者も見学・購入できます。
この取り組みは、単なる廃家具の処理ではなく、かつての町屋という地域資源を活用して、地域の職人技と流通を一体化させる新たな経済モデルを示しています。修理職人の技能を活かしながら、環境への配慮と経済性の両立を目指す設計になっています。
年間予算950万円、5年間の実証事業として検証
滋賀県がこの事業に充てる2025年度予算は950万円です。単年度事業として実施されるため、5年間の継続を通じて積み重ねられるデータと知見が蓄積される見通しです。利益は出ない見通しとなっており、事業の核は経済採算性の検証ではなく、循環経済モデルとしての可行性と課題を明らかにすることにあります。
委託先の谷口工務店に対して毎年度、在庫管理、単品ごとのリペア記録、売上といった詳細な報告が求められます。こうしたデータ収集により、修理に要する労力やコスト、市場における需要を可視化し、社会に根付く循環経済の仕組みとして何が必要か、どんな課題があるかを明らかにすることが目的です。
ごみ処理は通常、市町村などの基礎自治体が担当します。都道府県レベルが基礎自治体の境を越えて粗大ごみの中から再生可能なものを選び、修理・販売まで一体的に検証する試みは、全国で滋賀県が初めてです。委託先の変更可能性も考慮され、5年間のデータを通じて、民間事業者が事業継続可能な条件を探り出す設計になっています。
世界的な資源制約を背景に、「モノを長く使う」文化の再構築へ
世界的に資源制約が高まる中、資源の投入と消費を最小限に抑え、資源を最大限に循環させる経済システムへの移行が求められています。日本の戦後高度経済成長期は、新しいものを大量に消費する経済モデルが主流でしたが、21世紀の環境制約と人口減少の中では、「モノを長く使う」という文化的転換が不可欠になっています。
滋賀県の「リペアチャレンジ」は、廃棄物を新たな価値ある資源として認識し直す取り組みです。修理職人の技能を活かしながら、地域の人々がそうした修理品を購入・利用する流れを通じて、循環経済が社会実装される可能性を検証しています。
県の担当者は「廃家具類を題材に回収・修理・販売の流れを実践し、社会に根付かせるために解決すべき課題や必要な要件を明らかにしたい」と述べています。2026年1月21日の判決予定日を経て、2026年度以降も事業が継続されれば、日本全国への波及効果も期待されます。