2025-11-11 コメント投稿する ▼
奈良若草山焼き史上初の有料化決定、人気観覧エリアに入場料2000円で雑踏事故防止へ
奈良若草山焼き史上初の有料化「人気エリアに入場料2000円」雑踏事故防止で安全対策強化。 奈良県などで組織する実行委員会事務局は2025年11月11日、2026年1月24日開催の若草山焼きで、人気の観覧エリアを有料化し、先着4650人を対象に1人2000円の入場料を徴収すると発表した。
奈良市の冬の風物詩「若草山焼き」で、観覧エリアの一部有料化が史上初めて実施されることが決まった。奈良県などで組織する実行委員会事務局は2025年11月11日、2026年1月24日開催の若草山焼きで、人気の観覧エリアを有料化し、先着4650人を対象に1人2000円の入場料を徴収すると発表した。近年の観覧者増加による雑踏事故を防ぐ安全対策の一環で、収入は警備費用などに充てられる。
古都の伝統行事が直面する課題
若草山焼きは毎年1月の第4土曜日に実施される、古都奈良に早春を告げる伝統行事として1000年以上の歴史を持つ。春日大社、興福寺、東大寺の神仏が習合し、先人の鎮魂と慰霊、奈良全体の防火と世界の人々の平安を祈る炎の祭典として親しまれている。2025年は1月25日に開催予定で、午後6時30分に山麓中央の大かがり火から松明に火を移し、法螺貝とラッパの合図で一斉点火が行われる。
行事当日は午後4時45分の御神火奉戴祭から始まり、総勢約40人の時代行列による聖火行列、午後6時15分からの大花火打ち上げを経て、クライマックスの山焼きへと続く。標高342メートル、面積33ヘクタールの若草山全体が赤々と燃え上がる光景は壮観で、近年の観覧者は推計約19万人に達している。
「毎年見に行ってるけど、人が本当に多くなったよね」
「山麓は特に混雑がひどくて、危険を感じることもある」
「外国人観光客も増えて、安全対策が心配だった」
「有料化は仕方ないと思う。安全が一番大事」
「2000円なら妥当な値段だと思います」
有料化の対象と詳細
有料化の対象となるのは「若草山麓ゲート内」と「県庁横の奈良公園バスターミナル屋上」の2箇所で、ともに立ち見のみとなる。若草山麓ゲート内は4500人分、奈良公園バスターミナル屋上は150人分の合計4650人分のチケットが販売される。入場料は1人2000円で、チケットは11月17日からオンラインなどで先着順で販売される予定だ。
県によると、若草山麓ゲート内は急傾斜地で転倒などの事故が予測され、安全対策が急務となっていた。炎を間近で見ることができる人気エリアだが、地形的な制約から観覧者の安全確保が困難な状況が続いていた。今回の有料化により人数を制限し、専用の警備体制を整備することで事故防止を図る。
他エリアは無料を維持
一方で、奈良公園内の浮雲園地や春日野園地、平城宮跡などの他の観覧エリアは引き続き無料で開放される。これらの場所からも若草山の山焼きを十分に楽しむことができ、特に平城宮跡からは復元された朱雀門越しに山焼きの炎を眺める絶景スポットとして人気が高い。
実行委員会では、有料化による収入を警備費用など安全対策に充当し、より安全で快適な観覧環境の整備を進める方針だ。現時点では当日券の販売は予定しておらず、荒天中止になっても払い戻しは行わないとしている。チケット購入方法の詳細については、奈良県の公式ウェブサイトなどで順次発表される予定だ。
インバウンド増加が背景に
今回の有料化の背景には、インバウンド観光客の急増がある。奈良県は東大寺や興福寺、春日大社などの世界遺産を擁し、特にアジア系外国人観光客に人気が高い。若草山焼きも近年、国内外から注目を集める冬の一大イベントとして定着しており、観覧者数は年々増加傾向にある。
特に山麓エリアは炎の迫力を間近で感じることができるため、写真撮影や動画投稿を目的とした観光客が集中しやすく、混雑による安全上の懸念が高まっていた。実行委員会では今回の措置について「伝統行事を安全に継承していくための必要な対策」として理解を求めている。
若草山焼きの起源については諸説あるが、山頂の鶯塚古墳の霊魂を鎮めるため、東大寺と興福寺の領地争いを解決するため、春の芽生えを促すためなど様々な説が伝えられている。現在は防災と世界平安を祈願する神事として、奈良市消防団約300人が参加して安全に実施されている。