2025-06-10 コメント: 1件 ▼
和歌山県が「紀州林業広め隊」を結成 吉本芸人とNMB48が林業の魅力を発信
深刻な担い手不足に危機感 「林業をカッコよく」発信
和歌山県が本気を出した。林業従事者の減少に歯止めをかけるため、県は吉本興業所属の人気芸人やNMB48のメンバーとともに「紀州林業広め隊」を立ち上げた。芸人とアイドルの発信力を活用し、県内林業の現場をリアルに紹介して“見せる林業”を目指すという、異色の取り組みがスタートした。
林業を取り巻く環境は極めて厳しい。昭和35年には約1万3千人いた和歌山県内の林業従事者は、令和2年にはわずか1千人程度にまで減少。急速な高齢化と新規参入者の不足により、「このままでは産業として成り立たなくなる」との危機感が広がっている。
県林業振興課は「まずは林業の存在と魅力を若者に知ってもらうことが第一歩」として、今年度からより発信力のある人材を起用する方向に舵を切った。
“見取り図”に続き“スマイル”も参戦 NMB48中川さんは唯一の女性隊員
「紀州林業広め隊」には、すでに林業PR動画で好評を博したお笑いコンビ「見取り図」に続き、同じく吉本所属の「スマイル」「わんだーらんど」の2組が新たに参加。さらに、NMB48の和歌山県出身メンバー・中川朋香さんも唯一の女性隊員として参加し、林業現場の情報をSNSやYouTubeを通じて発信していく。
隊員らは、実際に県内の山林に足を運び、木の伐採や運搬、製材の現場などを取材・体験。そのリアルな姿をストーリー仕立てで1年を通じて伝える予定だ。芸人やアイドルが林業のヘルメットを被り、汗を流しながら笑いとともに「木を伐る」姿は、これまでの林業イメージを大きく塗り替えるかもしれない。
記者会見で「わんだーらんど」のまことフィッシングさんは「実家が建材店なので、紀州材の価値を自分なりに伝えたい」と語り、林業への並々ならぬ思いを明かした。一方、中川さんは「生まれ育った地元で、唯一の女性として女性視点でも林業の魅力を伝えていきたい」と意気込みを語った。
林業の“人材不足”は地方の存続にも直結
この取り組みが注目される背景には、林業の担い手減少が単なる業界の問題にとどまらないという現実がある。山間部では林業と地域経済が密接に結びついており、従事者がいなくなれば森林管理が行き届かず、土砂災害や獣害、さらには景観悪化の要因ともなり得る。
南紀森林組合の千井芳孝さんは「現場によって地質や作業環境が全く違う。勉強してから訪れてほしい」と前置きした上で、「林業には何よりも人の力が必要。林業に興味を持った若者が、やがて移住・定住につながるような情報を発信してほしい」と語った。
行政としても林業の「定住産業化」を本気で進める必要があり、「広め隊」はその先導役として機能することが期待されている。
“林業はカッコいい”を常識に SNS時代の人材確保策
このプロジェクトが他と異なるのは、「PRの主役が行政や業界関係者ではなく、芸人やアイドルである」という点だ。SNS全盛の今、若者に直接届く発信力は何よりも重要だ。従来の「林業=3K(きつい・汚い・危険)」というイメージを脱し、「林業=カッコいい」「やってみたい」と思わせるには、感情に訴えるストーリーテリングが必要不可欠だ。
「これはおもしろい取り組み。林業が身近に感じられる」
「NMB48の中川さん推し。応援してる!紀州材って初めて聞いた」
「林業ってガテン系と思ってたけど、意外と興味湧いた」
「子どもが林業体験に興味持ってる。この活動はありがたい」
「スマイルの林業ロケめっちゃ笑ったけど、学びもあった」
こうしたネット上の反応が示すように、「林業を知らない人にも伝える」「体験してみたくなる」きっかけづくりとして、芸人やアイドルの果たす役割は大きい。
「紀州林業広め隊」は単なるキャンペーンではない。林業という地域の根幹を支える産業を、次の世代につなぐための真剣な挑戦であり、笑いやエンタメを通じて“暮らしの根”を伝える試みでもある。