2025-12-11 コメント投稿する ▼
宮崎泉和歌山県知事がIR誘致判断保留 大阪開業後に是非決定と表明
2022年4月20日、和歌山県議会は本会議で、県が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)について、区域整備計画の認定を国に申請する議案を反対多数で否決した。
慎重姿勢鮮明
宮崎泉和歌山県知事がIR誘致判断を保留、「大阪開業後の状況見極め」で観光庁調査に回答拒否
和歌山県のIR(統合型リゾート)誘致問題で、宮崎泉知事(66)が慎重姿勢を鮮明にしている。2025年12月11日の県議会一般質問で、国からの意向調査に対して「回答できる状況にない」と答えたことを明かした。知事は「大阪IRの2030年秋頃開業後の姿を見極め、是非を判断すべき」として、再検討の時期を明確に先送りする考えを示した。
観光庁調査に「回答不能」、知事の苦悩が浮き彫り
2025年10月、政府はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備地域を追加選定するため、月内にも全都道府県と政令指定都市を対象に意向調査を実施する方向で検討に入った中、宮崎知事は独自の判断を下した。
観光庁による意向調査では、IRに関する区域整備計画の認定申請について「検討または予定している」「予定はない」のいずれかを選ぶ質問があったという。しかし、宮崎知事は、回答できないとした理由を「経済波及効果や雇用効果が発生すれば活性化の可能性はあると考えるが、ギャンブル依存症患者の増加や交通渋滞の発生など負の影響への根強い懸念がある」と説明した。
宮崎泉氏は1959年和歌山県和歌山市出身で、大阪大学人間科学部卒業後、和歌山県に入庁し、和歌山県総務部総務管理局人事課長、和歌山県知事室長、和歌山県教育委員会教育長、和歌山県副知事を歴任した県庁出身の知事だけに、行政的な慎重さが際立っている。
現場では県民の複雑な声が聞かれる。
「経済効果は魅力だが、ギャンブル依存症が心配。大阪の状況を見てからでも遅くない」
「また振り回されるのは嫌だ。今度は慎重に判断してほしい」
「観光立県として可能性は追求すべきだが、リスクも十分検討が必要」
「前回の失敗を教訓に、今度はしっかりとした計画で進めてもらいたい」
「県民の意見をもっと聞いて、透明性のある決定をしてほしい」
2022年の苦い経験が影響、クレアベストの資金難で頓挫
2022年4月20日、和歌山県議会は本会議で、県が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)について、区域整備計画の認定を国に申請する議案を反対多数で否決した。「資金計画が不透明」などとして22人が反対し、賛成は18人にとどまった。
この苦い経験が、現在の宮崎知事の慎重姿勢に大きく影響している。和歌山県は2021年6月20日、和歌山市の「和歌山マリーナシティ」に誘致を目指すIRの運営事業者について、カナダに本社があるIR投資会社の日本法人「クレアベストニームベンチャーズ」とグループ会社の共同事業体を正式に選んだ。
しかし、県議会では「県議からは、投資資金の確保や集客目標の達成を疑問視する意見の他、IR誘致に賛成の議員からも『総花的すぎてついていけない』などの発言があった」と厳しい批判が続出した。
2022年4月28日、クレアベストニームベンチャーズは「和歌山県議会のご同意が得られず、和歌山IRの実現により目指してきたチャレンジへの扉は、正式に閉じられることと相成りました」として、和歌山県におけるIR区域整備認定申請に向けた活動を中止することを発表した。
クレアベストグループはトロントに本社を置く、プライベート・エクイティ・マネジメント(PEファンド、未公開株投資運営)会社で、1987年の設立で、25億カナダドル(約2270億円)超の資金を運用しているが、最終的には資金調達の不透明さが問題となった。
大阪IR開業を試金石に、2030年以降の判断へ
宮崎知事が判断の根拠としているのが、大阪IRの開業状況だ。大阪IRは2030年秋頃のIR開業に向けて、公民連携して取組みを進めている状況で、大阪IRは民設民営の事業であり、大阪IR株式会社(合同会社日本MGM、オリックス不動産、関西の地元企業20社)が整備や運営を行う。
2023年7月には岸本周平前知事(故人)が関西プレスクラブで「(国の再募集があれば)状況を見ながら考えたい。(IR誘致が決まった)大阪の動向を見守りたいのが正直なところ」と述べており、前知事時代から大阪IRの動向注視は一貫している。
宮崎知事は今回、IRの是非について「しかるべき時期に判断したい」としたが、実質的には2030年の大阪IR開業後まで判断を先送りする方針を明確にした。これにより、和歌山県のIR誘致検討は5年以上の空白期間を迎えることになる。
和歌山県議会が「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)」の誘致について議論してきたIR対策特別委員会は、改選後の議会では設置しないことになり、前県議の任期満了日の4月29日で終了となったことも、県政としてIR問題に一定の区切りをつけた形となっている。
今回の宮崎知事の姿勢は、拙速な判断を避け、大阪IRという「先例」の検証を重視する慎重な行政運営の表れといえる。ギャンブル依存症などの社会的課題と経済効果のバランスを慎重に見極めようとする姿勢は、県民に対する責任ある対応として評価される一方、観光振興の機会逸失を懸念する声もある。