2025-10-08 コメント投稿する ▼
南紀白浜空港で初の自衛隊統合演習 米豪も参加、和歌山県知事「安全確保と説明責任を」
自衛隊が10月20日から31日にかけて全国で実施する大規模統合演習(実動演習)で、和歌山県白浜町の南紀白浜空港が初めて演習拠点として使用されることが明らかになった。 今年4月に有事対応の「特定利用空港・港湾」に指定された同空港での実動訓練は初の事例となる。 南紀白浜空港は、本州で唯一「特定利用空港」に指定されており、九州・沖縄地域と並ぶ有事対応拠点としての役割が期待されている。
自衛隊、南紀白浜空港で初の統合演習へ 米豪も参加 県知事「安全確保と情報公開を強く求める」
自衛隊が10月20日から31日にかけて全国で実施する大規模統合演習(実動演習)で、和歌山県白浜町の南紀白浜空港が初めて演習拠点として使用されることが明らかになった。今年4月に有事対応の「特定利用空港・港湾」に指定された同空港での実動訓練は初の事例となる。
今回の統合演習には、自衛隊員約5万2300人に加え、米軍約5900人、豪軍230人が参加し、戦闘機F15やT4練習機の連続離着陸訓練(タッチ・アンド・ゴー)が実施される予定だ。演習の一環として、四国沖で行われる「統合防空ミサイル防衛訓練」や「統合対艦攻撃訓練」にも同空港が関与する。
和歌山県の宮崎泉知事は8日の定例記者会見で、「安全確保と地元への十分な説明を求める。国には透明性のある対応を望みたい」と述べ、防衛省や自衛隊に対して正式な要請書を提出したことを明らかにした。
米豪軍も参加、緊迫感増す“南の防衛拠点”
南紀白浜空港は、本州で唯一「特定利用空港」に指定されており、九州・沖縄地域と並ぶ有事対応拠点としての役割が期待されている。特定利用空港制度は、緊急時に自衛隊や海上保安庁が迅速に空港・港湾を活用できるように整備を進める国の防衛インフラ施策の一環である。
今回の演習では、米豪両軍の参加も注目を集めており、地域住民の間では「実戦さながらの訓練ではないか」との声も上がる一方、地政学的リスクへの懸念も根強い。
「南紀白浜が防衛の最前線になるとは思ってもいなかった」
「安全第一で進めてほしい。地元に被害があってはならない」
「自衛隊の活動は理解するが、米軍が関わると不安が増す」
「地域防災の訓練にもなるなら意義はある」
「国が情報を隠すのではなく、県民に説明責任を果たすべきだ」
こうした地元の声は、安全への懸念と国防への理解が交錯する複雑な心境を映している。
「防衛」と「地域共生」―バランス問われる演習
宮崎知事は「国から米軍参加の説明が一切なかった」と不満を表明しており、防衛省から正式な空港使用届もまだ提出されていないという。知事は「安全確保と情報公開の徹底、そして地元住民の意向を尊重するよう求める」と強調し、演習実施に際して防衛省への要請書を送付した。
県はこれまで、防衛施設整備を「災害時の連携強化につながる」として前向きに評価してきた。実際、国は南紀白浜空港整備のために約11億円を計上し、将来的には滑走路延伸にもつながると期待されている。
しかし一方で、米軍の訓練参加が地域の安全と生活環境にどう影響するかについての議論は尽くされておらず、「地元合意なしの既成事実化ではないか」との批判も上がる。
国防インフラ整備に必要なのは信頼
特定利用空港・港湾制度の導入は、災害対応や有事の際の国民保護を目的とするものであり、自衛隊と地方自治体が緊密に連携してこそ意義がある。
防衛政策の現場が住民の理解を得られなければ、いざという時の対応にも支障をきたす。
演習を通じて顔の見える関係を築くことが防災にもつながる
宮崎知事はそう語りつつも、「説明不足が信頼を損ねることのないよう、政府には丁寧な対応を求めたい」と繰り返した。
防衛と安全、経済と観光――。その全てのバランスを取るのは容易ではない。だが、国民の命と生活を守るという根本目的を見失えば、防衛インフラ整備の意義は失われる。南紀白浜空港での今回の演習は、まさにその信頼関係を問う試金石となる。