2025-11-07 コメント投稿する ▼
総務省がP2Pファイル共有ソフト注意喚起、開示請求95%がアダルト動画
P2Pファイル共有ソフトの特徴として、ユーザーがダウンロードしただけのつもりでも、同時に他人にデータを送信してしまうため、著作権者の許可なく著作物を公開したとみなされ、情報開示の対象となってしまいます。
P2Pファイル共有ソフトは、利用者同士がネットワーク上で直接つながり、データを送受信できる技術です。本来はデータ通信の低コスト化と安定化を両立させる有益な技術ですが、漫画や動画などの海賊版拡散に悪用されているのが現状です。
開示請求制度の機能不全が深刻化
2022年にプロバイダー責任制限法が情報流通プラットフォーム対処法に改正され、加害者特定手続きを大幅に簡略化する「発信者情報開示請求」制度が設けられました。この制度により、著作権侵害や誹謗中傷などの被害者が、投稿者の身元を迅速に特定できるようになることが期待されていました。
しかし、総務省の調査では、2025年に各プロバイダーが受けた開示請求申請約15万件の大部分を、アダルト動画の著作権侵害案件が占める結果となりました。P2Pファイル共有ソフトの特徴として、ユーザーがダウンロードしただけのつもりでも、同時に他人にデータを送信してしまうため、著作権者の許可なく著作物を公開したとみなされ、情報開示の対象となってしまいます。
プロバイダー業務の逼迫と制度運用への支障
プロバイダー側からは「業務が逼迫し、誹謗中傷などほかの開示請求に対応できない」として、「制度運用に支障をきたしつつある」といった深刻な意見が寄せられています。本来、被害者救済を目的として設けられた開示請求制度が、大量の著作権侵害案件により機能不全を起こしている状況です。
国民生活センターでも2025年7月1日に「動画を見るためにファイル共有ソフトを使ってない」と題した注意喚起を発表しており、無料で動画や漫画が見られるソフトと思って使用したファイル共有ソフトによる著作権侵害トラブルが急増していることを警告しています。
特に問題となっているのは、利用者が「無料で動画が見られる便利なツール」程度の認識でファイル共有ソフトを使用し、著作権法違反に該当する行為を無自覚に行ってしまうケースです。ファイル共有ソフトは自動的にダウンロードしたファイルをアップロードする仕組みであるため、意図的にアップロードしていなくても著作権法違反が成立してしまう危険性があります。
政府の対応策と今後の展望
総務省は今回の注意喚起により、P2Pファイル共有ソフトの利用を抑制することで、開示請求制度全体の運営を円滑化させる狙いがあることを明確にしています。また、「軽い気持ちの利用が損害賠償請求に発展する」として、利用者に対し強い警告を発しています。
同省は過去にも、2013年2月にP2Pファイル共有ソフトによるコンテンツ不正流通の抑止に向けた実証実験を実施するなど、継続的に対策を講じてきました。しかし、アダルト動画関連の著作権侵害案件の急激な増加により、制度の根本的な見直しが求められる状況となっています。
ファイル共有ソフトの利用には、著作権法違反のほかにも、ウイルス感染や個人情報流出といったセキュリティリスクも潜んでいます。一度インターネット上に流出した情報を完全に回収・削除することは事実上不可能であり、被害の拡大を防ぐ最も確実な対策は、公私を問わずファイル共有ソフトを使用しないことです。
総務省の今回の注意喚起は、デジタル社会における著作権保護と適切な制度運用の両立を図る重要な取り組みといえるでしょう。利用者一人ひとりが著作権に対する正しい理解を深め、適法な方法でコンテンツを楽しむことが求められています。