2025-11-19 コメント投稿する ▼
広島市長が非核三原則堅持要求 高市首相の見直し方針に被爆地から強い反発
広島市の松井一実市長は11月19日の定例記者会見で、高市早苗首相が非核三原則の見直しを検討していることについて「堅持していく方がいい」と明確に反対の立場を表明した。
広島市長、非核三原則見直しに反対 高市首相の検討方針を批判
広島市の松井一実市長は11月19日の定例記者会見で、高市早苗首相が非核三原則の見直しを検討していることについて「堅持していく方がいい」と明確に反対の立場を表明した。唯一の戦争被爆国として歩んできた平和国家としての理念を堅持するよう求めた。
高市首相は国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に伴い、非核三原則の見直し議論を与党内で開始させる検討に入ったことが明らかになっている。特に核兵器を「持ち込ませず」の概念が、米国の核抑止力の実効性を低下させかねないとの理由から見直しを主張している。
被爆地首長が強い懸念表明
松井市長は会見で「核抑止力への依存明示で緊張を高めるのではなく、国民の命を守るための外交努力をするべきだ」と注文を付けた。核拡散防止条約(NPT)の批准国として「核のない世界の理想を求め、現実的な対応をしていく論理を逆転させることになる」と厳しく批判した。
さらに松井市長は「破るのであれば、条約を破棄する行為にもなり重大だ」と訴え、被爆地広島の首長として国是である非核三原則を守ることの重要性を強調した。一方で「議論することは否定しない。意見を封ずることでは、国民の理解は深まらない」と付け加え、議論自体は必要との認識も示した。
SNS上では松井市長の発言に対して様々な反応が寄せられている。
「被爆地の市長として当然の発言だと思う。高市さんは現実を見すぎている」
「外交努力が大切なのはその通りだが、中国の軍拡を見れば抑止力も必要ではないか」
「核抑止論は結局、核軍拡競争を招くだけ。広島の声に耳を傾けるべきだ」
「議論は必要だが、被爆国として守るべき一線がある」
「現実的な安全保障と理想のバランスが難しい問題だ」
高市首相の見直し論の背景
高市首相は9月の自民党総裁選立候補時に「米国の拡大抑止の下にあるのであれば、『持ち込ませず』についてはしっかりと議論しなければならない」と見直しに前向きな考えを示していた。
高市首相は11月11日の衆院予算委員会で、非核三原則を堅持するかについて「私から申し上げる段階ではない」と明言を避けた状況にある。政府は来年末までに安保3文書を改定する方針で、自民は来週にも改定に向けた議論を開始する予定だ。
高市氏は昨年9月に出版した編著『国力研究』の中で、非核三原則が「邪魔だ」とし、特に「持ち込ませず」の部分を検討する必要があると主張していた。首相就任により、自らの持論を国家の基本方針に反映させようとしている形だ。
被爆地からの強い反発
中国新聞は社説で「被爆の惨禍を体験した日本が『平和国家』として、ここまで積み上げてきた核軍縮の努力や信頼を破壊する暴挙である。断じて許されない」と強く批判している。
また、非核三原則は1967年に佐藤栄作首相が提唱し、1971年11月に衆院決議により「国是」となった経緯がある。被爆地広島、長崎にとって極めて重要な理念的支柱であり続けてきた。
松井市長は過去の会見で、高市首相が唱えてきた非核三原則の見直しを巡る議論について「日本が守ってきた原則の良さや値打ちを再確認するチャンスになれば、それでいい」と語っており、議論を通じて非核三原則の価値を再認識することに期待を示している。
現実と理想のはざまで
高市政権は2010年に当時の岡田克也外相が「核の一時的寄港を認めないと日本の安全が守れない事態が発生したとすれば、その時の政権が命運を懸けて決断し、国民に説明する」とした国会答弁を引き継いでいる。
この答弁は、有事の際には例外的措置があり得ることを示唆しており、非核三原則が絶対的なものではないことを政府として認めている状況だ。
しかし、被爆地からは「理想と現実の矛盾があるからといって、被爆国としての理念を放棄するべきではない」との声が強い。松井市長の発言は、こうした被爆地の思いを代弁したものといえる。
安全保障環境の厳しさが増す中で、日本は理想と現実のバランスをどう取るべきかが問われている。高市首相の見直し方針に対する被爆地の強い反発は、この問題の根深さを浮き彫りにしている。