2025-07-03 コメント投稿する ▼
「国民民主すら右旋回」山尾志桜里氏が無所属で再出発 10人の聴衆に語った信念と覚悟
聴衆わずか10人、寂しい船出ににじむ決意
元衆議院議員の山尾志桜里氏が、無所属での出馬を決め、参院選東京選挙区(定数6+補欠1)で選挙戦の第一歩を踏み出した。公示日となった7月3日、東京・吉祥寺で行われた第一声。かつて民進党政調会長を務め、注目を集めた彼女の周囲には、マスコミを除けばわずか10人ほどの聴衆しかいなかった。
だがその小さな輪の中で、山尾氏の言葉は重みを持って響いた。第一声で彼女はこう切り出した。「残念ながら国民民主党から公認を取り消されましたが、中道政治をあきらめることがどうしてもできませんでした」と語り、かつて自らも立ち上げに関わった国民民主党への失望と、政治信念へのこだわりを明かした。
「不器用でも一本筋が通ってると思う」
「誰に媚びるでもなく訴える姿勢、むしろ好感が持てる」
「10人でも伝える。そこが本物だと思う」
「人は減った。でも言葉は澄んでた」
「あの静かな第一声、逆に忘れられないと思う」
「国民民主すら逃げた」右旋回への批判
山尾氏が苦言を呈したのは、国民民主党の「中道からの逸脱」だった。リベラルから穏健保守までをつなぐ政党としての立ち上げを共にした国民民主が、「選挙前になると結局、右旋回から逃れられない」と指摘。その象徴として、自身が長年主張してきた「女性天皇の容認」が、党方針と決定的に食い違ったことを挙げた。
この点において、山尾氏は明確な姿勢を示す。「女性の天皇を認めるということを、私はこの選挙で訴えたい」。男系男子にこだわる現体制では、皇室の安定継承は望めないというのが彼女の主張だ。
もともと論理性と政策通として知られ、憲法や外交、人権問題などにも積極的に関与してきた山尾氏。無所属という孤独な立場にありながらも、言うべきことを言う、その気概がにじんだ演説となった。
“山尾騒動”再燃、だが支援者は離れない
選挙戦を前に再び蒸し返されているのが、過去の不倫報道に関する世間の記憶だ。6月10日の会見では2時間半にわたり質問に応じたものの、今回の選挙にあたっては「新たな発言は控える」として再説明を避ける姿勢を示した。
これに対し、一部有権者からは依然として厳しい声が聞かれる。しかし、一方で長年の支援者は変わらぬ思いを抱いている。
「あれはプライベートな話。政治と切り離して見たい」
「報道は騒ぎすぎ。彼女の政策や実行力を見てほしい」
演説後、山尾氏は立ち止まっている人々に積極的に声をかけ、「久しぶり〜」と支援者に笑顔でサインするなど、飾らない姿勢を見せた。かつての華やかなキャリアとは裏腹に、静かなスタートとなったが、その一歩には覚悟と自負がにじんでいた。
「黄信号」の古巣、あおり受けた国民民主
山尾氏の出馬によって、最も頭を抱えているのは皮肉にも古巣の国民民主党だ。もともと支持率に余裕があった時期に、東京選挙区へ2人の候補者を立てた同党だったが、山尾氏の参戦により票が割れる可能性が生じ、「2人当選」に黄信号がともっている。
「『山尾騒動』が思い出されること自体が痛い」と語る関係者もおり、山尾氏への公認取り消しが同党にとって吉と出たのか凶と出たのかは、選挙結果を待たなければ分からない。
一方で山尾氏は、「怒りの出馬ではない」と公言し、あくまで政策と信念を訴える選挙戦に徹する構えを崩していない。かつてない逆風の中での選挙戦、それでも立ち止まらず、一歩一歩を踏みしめる彼女の姿に、静かに共感が広がり始めている。