2025-08-18 コメント投稿する ▼
丹下健三設計の旧香川県立体育館、解体方針を堅持 池田知事「安全対策を先延ばしできない」
丹下健三氏設計の旧香川県立体育館、解体方針を堅持
香川県の池田豊人知事は18日の定例会見で、建築家・故丹下健三氏が設計した旧県立体育館(高松市)について「安全対策を先延ばしにすることはできない」と述べ、解体を予定通り進める方針を示した。建物保存を求める建築家協会や民間団体の要望を退け、県として最終判断を下した形だ。
「安全対策を先延ばしにするのは適切ではない」
「所有し活用する主体や耐震対策の具体性が見えていない」
「日々老朽化が進んでおり、もう少し様子を見るという判断はできない」
「再生の提案は理解するが、実現性が確認できない以上、県として責任を持てない」
「県民の安心・安全を最優先に考える」
民間団体の保存活用案
「旧香川県立体育館再生委員会」は、土地と建物を民間資金で買い取り、ホテルなどに活用する構想を提示していた。しかし、池田知事は「所有主体や資金計画が明確でなく、耐震化の道筋も示されていない」と指摘。県としては実効性に乏しいと判断した。
また、日本建築家協会も保存を求めていたが、県は「過去に耐震改修工事の入札や利活用の市場調査を行ったが、いずれも応札や具体的提案がなかった」と説明し、保存より解体を選択した背景を強調した。
県の対応と今後のスケジュール
県はすでに解体工事の入札公告を実施。応札期間は9月2日から4日で、着実に手続きを進めている。平成25年以降、耐震改修の入札や活用案の調査を行ったが不成立となり、令和5年に解体を正式決定。今回の会見は「保存を望む声」と「安全確保」の狭間で揺れてきた議論に区切りをつける意味合いが強い。
丹下氏が設計した同体育館は、戦後日本を代表するモダニズム建築のひとつとして知られてきた。だが、築半世紀を超えて老朽化が進行し、耐震性の不足も指摘されている。県は「文化財的価値よりも公共施設としての安全性が優先」との姿勢を崩さず、保存を求める建築界の声とは平行線をたどった。
残された課題
今回の決定により、丹下建築の象徴的存在が失われることへの懸念は残る。観光資源や文化的遺産としての価値を重視する声がある一方で、行政は「県民の安全」「実現可能性」「財政負担の回避」を理由に前進を選んだ。
老朽化した公共建築をどう扱うのか。文化的価値を守りつつ安全対策を講じる財源をどう確保するのか。香川県の判断は、全国の自治体にとっても大きな前例となりそうだ。