2025-06-12 コメント投稿する ▼
赤嶺政賢氏が沖縄戦の歴史認識を追及 自衛官教育の「旧軍美化」に懸念と教材中止を要求
旧日本軍を称賛する教材に疑問、赤嶺氏が中止を要求
「沖縄は捨て石にされたのではないのか」――衆議院安全保障委員会(6月12日)で、日本共産党の赤嶺政賢議員が自衛隊の教育現場における歴史認識の問題を鋭く追及した。焦点となったのは、陸上自衛隊幹部候補生学校が使用している2024年度の学習資料。この教材では、沖縄戦で悲惨な住民被害をもたらした旧日本軍第32軍を、「米軍に対して孤軍奮闘し、本土決戦準備のために偉大な貢献をなした」と評価している。
だが、資料には住民への「集団自決」の強制や、10万人を超える民間人の犠牲についての記述は一切ない。赤嶺氏は「戦略持久」の名のもとで沖縄を戦場に変え、結果的に“本土防衛の時間稼ぎ”に使われた沖縄戦の本質を問うと同時に、「その作戦を美化する教材は、自衛隊員に歪んだ歴史認識を植え付ける」と警鐘を鳴らした。
「沖縄が“捨て石”だったという事実を、曖昧にしてはいけない。正面から向き合うべきだ」
防衛省は見直し認めるも、“捨て石”への言及は回避
この追及に対し、防衛副大臣の中谷元氏は「資料の見直し作業を進めている」と一定の対応姿勢を示したが、赤嶺氏の「沖縄戦は捨て石作戦だったのか」との問いには、「自衛隊と旧日本軍は全く異なる組織である」と述べ、明言を避けた。
赤嶺氏は、歴史の継承と教育の責任を明確にしたうえで、「自衛隊員こそが、沖縄戦がいかに多くの民間人の命を奪い、人間の尊厳を踏みにじった戦争だったのかを知るべきだ。そこにこそ、自衛官としての責任と倫理の基礎がある」と訴えた。
このやり取りが象徴しているのは、現代の自衛隊教育が、旧軍との“断絶”を強調する一方で、旧軍の功績を美化する要素を含んだ教材や広報が残されているという矛盾だ。
「“自衛隊と旧軍は違う”で逃げるのは通用しない。教材を通じて何を教えているのかが問題」
“好きな幕僚ランキング”上位が旧軍人 現場にも広がる歴史観のゆがみ
赤嶺氏はさらに、防衛省が編集協力する広報誌『MAMOR(マモル)』2022年3月号の特集に言及した。この号では、現役の幹部自衛官500人を対象とした「好きな幕僚ランキング」が掲載され、その上位6人のすべてが旧日本軍の幹部であったことを明らかにした。
特に5位にランクインしていたのが、第32軍の作戦参謀として沖縄での持久戦継続を主導した八原博通。赤嶺氏は「こうした人物を“尊敬する幕僚”として無批判に取り上げることが、旧軍を美化する風潮の根を支えているのではないか」と批判した。
自衛官教育において、旧軍の加害責任や民間人の犠牲に触れることはほとんどなく、作戦行動や統率力ばかりが取り上げられる。このような片側面だけを強調することで、戦争がいかに人命を奪い、人間性を失わせたかという視点が抜け落ちる危険性が指摘されている。
「八原が“尊敬される人”ってことに驚いた。何のための教育なんだろうか」
「沖縄の声を、今こそ政策に」赤嶺氏が突きつけた問い
今回の追及で赤嶺氏が問うたのは、単なる教材の不適切さではない。そこにあるのは、「沖縄が再び“犠牲の地”にされようとしているのではないか」という危機感だ。
辺野古の新基地建設、南西諸島への自衛隊配備強化など、国が“防衛の最前線”として沖縄を再び利用しようとしている現実がある。その中で、沖縄戦の実相を正しく伝えず、「犠牲はあったが意義はあった」とするような教育が進めば、戦争の再来を現実に近づけるものになると、赤嶺氏は強く警告した。
「また沖縄が“最初に被害を受ける場所”になるなんて、絶対に許してはいけない」
戦争の記憶を、曖昧にしないこと。加害と被害の事実から、目を背けないこと。赤嶺政賢氏の追及は、「歴史を学ぶとは何か」「国家とは誰の命を守るのか」を、私たち一人ひとりに問いかけるものであった。