2025-04-18 コメント投稿する ▼
牛島満司令官の辞世の句が再掲載 陸自に“戦争美化”批判 赤嶺氏が削除要求
沖縄戦の記憶をどう伝えるか――再燃する歴史認識の議論
沖縄戦で自決した旧日本軍第32軍の司令官・牛島満の辞世の句が、再び注目を集めている。陸上自衛隊第15旅団(那覇市)がこの句を公式ホームページに再掲載したことを受け、日本共産党の赤嶺政賢衆議院議員が4月18日の衆院安全保障委員会で「戦争美化につながる」として削除を強く要求した。
再掲載された句はこうだ。
「秋を待たで 枯れゆく島の青草は 御国の春に よみがえらなん」──牛島満
この句は、太平洋戦争末期の沖縄戦で追い詰められた牛島司令官が、自決の直前に詠んだとされている。「枯れゆく青草」は沖縄を象徴し、「御国の春に」甦るという表現が、「死してなお皇国に尽くす」ことを美徳とする旧日本軍の精神を映し出しているとして、かねてから議論の的となっていた。
一度削除も“復活” 再掲載の理由とは
問題の辞世の句はもともと2018年から陸自第15旅団のサイトに掲載されていた。2024年6月、地元紙が取り上げたことで「戦争賛美だ」との批判が相次ぎ、10月末に一度削除された。しかし、2025年1月1日、旅団サイトがリニューアルされるタイミングで再び掲載された。
防衛省の萬浪学官房長は、「掲載の趣旨は、沖縄本土復帰直後の歴史的経緯を紹介するため」と説明。再掲載については、陸上幕僚長や大臣官房長への事前報告もあったと認めた。
だが、赤嶺議員は納得しなかった。「牛島司令官は“最後まで戦え”と命じ、少年少女まで動員した。辞世の句は“死して皇国によみがえれ”という強いメッセージだ」と指摘。「こんな句を公的に発信するのは戦争美化そのものだ」として、再度の削除を強く求めた。
防衛相は「平和への願い」と解釈も…
これに対し中谷元防衛相は、「この句には平和を願う気持ちが込められているように感じる」と応じた。だが赤嶺氏は、「歴史的評価はすでに定まっている。牛島司令官の命令によって、沖縄では多くの民間人や学徒が犠牲になった」と反論。両者の見解は大きく食い違ったままだ。
実際、沖縄戦では鉄血勤皇隊や看護学徒隊として動員された多くの若者が命を落とした。戦争末期、司令部壕で牛島司令官が自決した後も「最後の一兵まで戦え」という方針が貫かれたという証言も残る。
戦争の記憶をどう伝えるべきか
今回の再掲載問題は、戦争の記憶とどう向き合うかという重い課題を突きつけている。特に沖縄においては、戦争による民間人の犠牲があまりにも大きく、記憶の継承は政治的な意味を帯びている。
牛島満の辞世の句は、戦争の悲劇とともにその時代の価値観を象徴するものだ。しかしそれを現代の自衛隊がどのように引用するかは、単なる表現の自由以上に、社会全体の戦争観や平和観に直結する問題である。
赤嶺氏は「今こそ“命どぅ宝”の精神に立ち返るべきだ」と訴えた。沖縄戦から80年を迎えようとする今、過去の記憶をどう伝えるか、改めて国民的な議論が必要とされている。
- 陸自第15旅団が旧日本軍司令官の辞世の句を再掲載し波紋
- 赤嶺政賢議員は「戦争美化だ」として削除を要求
- 防衛相は「平和を願う詩」として掲載を容認
- 沖縄戦の記憶と現代の歴史認識が問われる